帝人フロンティア/スマートセンシングで50億円めざす/衣料繊維などで新規開拓
2023年04月21日 (金曜日)
帝人フロンティアは、RFID(無線通信による個別管理システム)を活用したスマートセンシング事業の拡大を加速する。今月に帝人本体から事業移管を受け、病院の医療機器管理などの既存事業に加え、衣料繊維や産業資材事業で新規用途・顧客の開拓を図る。2030年度に売上高50億円の事業に育てる。
帝人は、独自の電波制御技術やノウハウによるRFIDソリューション「Recoシリーズ」をラインアップ。薄型シートアンテナを活用して在庫(所在)・入出庫を常時管理する「レコピック」、ポスト型やトンネルゲート型の装置を使った通過検知システム「レコファインダー」を展開している。
公共図書館ではウェブ予約本のセルフ貸し出し棚、工場分野では半導体ウエハーの仕掛かり在庫を自動管理などで利用されている。内閣府が主導する国家プロジェクト「スマート物流サービス」に聖路加国際病院などと共同で参画し、共同院外倉庫の設置などで仕組みを構築した。
数年前から帝人フロンティアのウエアラブル分野と協業してきたことから、さまざまなシナジーが発揮できると判断し、4月に事業を帝人から帝人フロンティアに移管した。今後、マテリアルパスポートへの対応や防災備蓄品の管理、トレーサビリティーの担保などの新規用途・新規顧客の開拓を目指す。
衣料品では、製品にICタグを付けることで洗濯タグでは未表示の内容をデータ化できるなど、リサイクル促進に貢献する。医療用ガウンでは素材分類や使用後の分別などが可能。モビリティー分野では、原材料の調達から廃棄までをデータ管理し、安全・安心に貢献する。
事業移管を受け、新事業推進本部を発足し、その下にスマートセンシング部を置いた。事業の本格拡大は、第5世代移動通信システム(5G)が普及する25年度以降になると予想し、それを見越して23年度から顧客への訴求を強化していく。
RFIDは、ID情報を埋め込んだICタグと電磁波を用いた近距離の無線通信によって非接触で情報をやり取りする技術全般を指し、HF帯とUHF帯が用いられる。帝人フロンティアが使うUHF帯ICタグの市場は、この10年で出荷量が約40倍(22年は10億枚の予想)になり、価格は約10分の1になった。