開発最前線23 紡績 注目度急上昇の素材(下)/天然由来の撥水、アウトドアへ/大和紡績
2023年04月20日 (木曜日)
新型コロナウイルス禍をきっかけにアウトドアブームが続いている。全国のキャンピングカー製造ビルダーやディーラーが加盟する日本RV協会によると、2022年の国内キャンピングカー販売の新車・中古車の売り上げ合計額が過去最高を記録した。そんなアウトドアブームにあって、自然と触れるだけに環境配慮やサステイナビリティーへの関心も高まっている。
アウトドアウエアで不可欠な撥水(はっすい)加工では、10年前から「フッ素フリー」を用いる動きが増えている。撥水加工剤で非フッ素系(シリコン系)への置き換えが進み、天然由来成分の撥水剤を使う動きも活発になってきた。大和紡績では24春夏に向け、フッ素フリー撥水加工素材「レインペットNW」の販売に力を入れている。
NWとは「ナチュラルウォータープルーフ」の意味。これまでC6のフッ素系撥水剤では風合いが固く、着心地に影響していたが、レインペットは「素材の風合いにあまり影響せず、なじみやすい」のが特徴だ。素材そのものの風合いを生かせる上に、洗濯耐久性があり、撥水性は4級以上。現在、綿100%や綿・ポリエステル混など、さまざまな素材で性能を検証している。
レインペットと同様に天然由来の撥水剤を使い、開発を進めるのが、汗染み防止の「リペルーフNW」。肌側は汗を吸水するが、表面には撥水加工を施すことで、肌側から吸収した水分を表面に染み出さないように工夫した。綿100%や綿・レーヨン混素材に加工ができる。
特に汗染みが目立ちやすいグレー杢(もく)の色味のTシャツへも対応が可能。汗染み防止評価では、表面の変退色グレースケールで4級以上と、表面に染みの変化がほとんど見られないレベルだと言う。これらの加工は堅調なアウトドアのニーズを捉え、パーカやスエットなど丸編み地製品などへ販路を広げる。
アウトドア向けでは他にも、たき火の火の粉などに対応するセルロース混難燃生地「ノンブレイズ」の提案にも力を入れている。同素材にはダイワボウレーヨンの練り込みタイプ難燃レーヨン「DFG」とモダクリル、綿の混紡糸を使用。26以上で難燃性があるとされるLOI値は、未洗濯の生地で28・4の値を示す。炭火による火の粉防融試験でも溶融孔なしという結果が得られた。
繊維そのものに難燃性があるため洗濯後でも機能性を維持する。レーヨンを使うことで優しい肌触りや染色性を加味した。意匠性を付与することができ、アウトドア用途のウエアへ提案しやすい。
他にも綿と機能レーヨンの特殊紡績糸を使い、ハリ・コシや吸水速乾性が特徴の「セルハーモ」では、遮熱や防虫などの機能付与が可能。海洋生分解性ポリエステル短繊維「パルテラ」は、環境配慮の面から訴求できる。いずれも24春夏向けから販売を本格化しており、さまざまなシーンを彩る多面的な素材の提案でアウトドア市場を深耕する。
(おわり)