技術の眼/帝人フロンティア/大化産業/コゼット/日清紡テキスタイル/エアウィーヴ/三越伊勢丹
2023年04月12日 (水曜日)
「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。
〈帝人フロンティア/子供を守る入浴着開発〉
帝人フロンティアの新事業開発室は、子供用入浴着を開発した。温泉や公衆浴場での入浴時に着用することで、周囲の視線から子供を守れる。サイズはフリーで、小学校入学前の子供が対象。実証試験を行い、その結果を元に2024年から温浴施設向けに販売を始める。
ベース生地はポリエステルで、水切れの良い撥水(はっすい)加工を施した。体に張り付きにくく、透けにくいため安心して入浴することができる。着用したままで体が洗えるよう仕様も工夫した。女児と男児の両方が使えるようセパレートタイプを採用している。
同社が保健所などに問い合わせたところ、「乳がん患者用の入浴着などがあり、著しく湯水を汚さなければ温浴施設での使用は差し支えない」との回答が得られ、それらを踏まえた上で実証試験を行う。1施設当たり1カ月程度実施し、主に「入浴着の利用者数」「周りの人の反応」「施設における運用の問題点」などを検証する。
〈大化産業/綿織物の硬質化技術開発〉
播州織産元の大化産業(兵庫県西脇市)がPLA(ポリ乳酸)素材を使って、先染め綿織物にプラスチック板のような物性を持たせる技術を開発した。硬いボード状にした播州織をレーザーカッターで加工しキーホルダーを試作、6月ごろに土産物やアクセサリーなどとして商品化する。
同社の高橋直也専務が、生分解性のあるPLAと同じく土に返る綿100%の先染め織物を組み合わせて新しいものを作れないかと考えたことが、新たな物性を持たせる技術が生まれるきっかけとなった。生地には処分が予定される同社の過去のハンガー生地を使うため、廃棄物の有効利用という観点からも環境に優しい。
技術面では兵庫県立繊維工業技術支援センター(西脇市)の藤田浩行所長が協力する。播州織で作ったボードは、PLAが熱で形状を柔軟に変化させる性質を使ったもの。いったん板状にしてから再び熱を加えることでさらに形を変えることもできるため今後、金型成型による新たな製品開発も視野に入れる。
〈コゼット/空気層生かした保温素材〉
3Dプリンター技術(積層加工)で生産する「ダウンファブリック」で知られる上海泉欣織造新材料(中国・上海)のグループ企業で日本向けの企画・販売を担うコゼット(東京都渋谷区)は、温度によって形状が変化する保温素材「ステルスシート」を提案する。アパレルや寝具向け中材として訴求する。
ステルスシートは、3Dプリンター技術で、高純度のエアロゲルをポリエステルの生地に薄く加工した多層構造のシート。エアロゲルは大半が空気なため、温度によって体積面積が変わる。温度が低くなると、エアロゲル層の空気が収縮することで材料が曲がり、筒状の空間が広がる。その筒状の空間に空気がたまり保温効果が期待できる仕組みだ。温度が高くなると、膨らんだ筒状の形状がフラットに戻る。膨らみはじめる温度は調整できると言う。
同シートを使うことで、羽毛などの中わた量を減らしても保温性を維持したアウターや掛けふとんが可能になるとする。
〈日清紡テキスタイル/“超ソフト”な形態安定加工〉
日清紡テキスタイルは、高い形態安定性(W&W性)を維持しながらも、綿特有の優しい肌触りにこだわった後加工織物「ウェルフィール」を開発した。超ソフトな風合いや肌触りを生かし、カジュアル用途にも提案する。
家庭洗濯や着用によるシワを抑制する形態安定加工では、これまで綿・ポリエステル混でW&W性3.5級を誇る「スパーノ」を展開してきた。ウェルフィールは、スパーノと同等のW&W性を持ちながらも、独自技術でさらにソフトな風合いや優しい肌触りへと進化させた。
レディース向けで形態安定加工の需要が急拡大しており、「ふわっと着るようなカジュアルブラウスなどのアイテムと相性が良い」として販促に力を入れる。
高い形態安定性を維持しながらも、ソフト感を図るLO剛軟度法(ガーレ法)の試験(数値が小さいほど柔らかい)では、通常の綿混紡の形態安定生地が4.22、丸編み地が3.11に対し、ウェルフィールは2.72。ポリエステル・綿混だけでなく綿100%や綿・レーヨン混素材での提案もできる。
〈エアウィーヴ/生分解性の中材開発〉
エアウィーヴは寝具の廃棄処理問題解消に向け、生分解性の中材「生分解性エアファイバー」を開発した。土中の微生物の働きで埋め立て処分しても水と二酸化炭素に分解され、土に返る。
同社は2007年の発売当初からリサイクルを意識して、再生可能なポリエチレン100%の中材「エアファイバー」を使用。21年の東京五輪・パラリンピックで選手村に納めた全寝具を再利用・再資源化した。昨年は日本航空との取り組みを皮切りに、使用済みマットレスパッドを回収・再製品化する“寝具の水平リサイクル”、これを消費者レベルで展開する“一般向けリサイクルプログラム”にも着手した。
高岡本州会長兼社長は「水平リサイクルにはメーカー、個人・法人の利用者、ごみを回収する自治体の連携が不可欠で、手間やコストの面で離島など早期実現が困難な地域もある。生分解性素材は地球に対するリサイクルで、処理コスト的にも優しい。トータルで寝具の廃棄物ゼロを目指す」と言う。
〈三越伊勢丹/業界初、AIモデルでBtoB拡大〉
三越伊勢丹が運営するデジタルベース「イセタンスタジオ」は、BtoB向けの新たな撮影サービスを始める。AImodel社(東京都渋谷区、エーアイモデル)と協業。同社が提供するAIモデルを活用し、モデル撮影とAIモデルによる画像生成を施す。百貨店業界で初めて導入した。
従来のモデル撮影はモデル、カメラマン、アシスタント、スタイリスト、ヘアメークなど多くの人手とコスト、時間がかかる。AIモデルはAI技術で生成したモデルのため人手がかからず、撮影時のコスト削減、リードタイム短縮を実現する。
本物のモデルのようなクオリティーのAIモデルに衣類やアクセサリーなどを着用させ、広告やカタログなどのキービジュアル、ルックブック、ネット通販のささげ(撮影・採寸・原稿)などで展開。重ね付けや着せ替えもサイト上で試せる。ブランディングやプロモーションの最適化、顧客に合わせた無数のスタイリング提案も可能。