帝人フロンティア/今年度は収益力維持・向上を/サステやグローバル展開に注力
2023年04月11日 (火曜日)
帝人フロンティアは、サステイナブル戦略の推進やグローバルアパレルへの拡販などを2023年度(24年3月期)の基本施策に掲げる。平田恭成社長は「22年度で終了した中期経営計画でステップアップができた。その持続が重要」とし、基本施策の加速で基礎収益力の維持・向上を図る。
帝人グループは、20年度を初年度とする3カ年の中期経営計画を推進し、帝人フロンティアは基礎収益力の向上などに取り組んできた。最終の23年3月期は、新型コロナウイルス感染症拡大の前に立てた数値目標には届かない見通しながら、平田社長は「上昇カーブを描いており、基礎収益力は上がったと総括できる」と話した。
23年度は新中計が始動する年だったが、帝人グループは収益性の改善を図る1年に位置付けており、同社も前中計で高めることができた基礎収益力の維持に重きを置いた。その中で進めるのが、サステイナブル戦略の推進と新事業の収益化、グローバルアパレルへの拡販だ。
サステイナブル戦略推進では、繊維to繊維などに目を向けている。ポリエステル再生技術は確立しているため、コスト対応や設備導入、衣料品の回収の仕組み作りなどで具体的な絵を描いていく。新事業の収益化ではセンシング分野が課題とし、スポーツセンシングやヘルスケアセンシングを強化する。
グローバルアパレルへの展開では、高い機能性などを武器に、アウトドア・スポーツ向けの生地や製品で拡販を目指す。欧米市場への浸透を日本市場での販売拡大につなげる。環境負荷低減にも積極的に対応し、素材軸に加え、認証を求める声にも応じる。
〈PU繊維除去可能に/ポリエステルのリサイクルで〉
帝人フロンティアはこのほど、ポリエステルのケミカルリサイクルの前処理工程で衣料品に混用されているポリウレタン弾性繊維(PU弾性糸)を除去する技術を開発した。これにより、従来は困難だったPU弾性繊維混のポリエステル製衣料品から高品質なケミカルリサイクルポリエステルを生産することが可能になる。
近年、衣料品分野ではポリエステル繊維とPU弾性繊維を複合することでストレッチ性を持たせた製品が広く普及している。一方、既存のケミカルリサイクル技術はポリエステル100%品を前提としたもののため、PU弾性繊維が混入すると再生品の品質悪化を招く。このためPU弾性繊維混品の増加はポリエステル繊製品のリサイクル推進の障害となっていた。
この問題に対して、帝人フロンティアはケミカルリサイクルの前処理工程で特殊な処理剤を使用することでPU弾性繊維を除去し、ポリエステルだけを分離する技術を開発した。処理剤がPU弾性繊維の化学結合を切断し、溶解することでポリエステルには影響を及ぼさずにPU弾性繊維だけを除去する仕組みだ。
処理剤は同時に染料を含む異物も除去することから、脱色工程を兼ねることもできる。使用後の処理剤は回収して再利用することも可能。これによりPU弾性繊維混の衣料品も高品質なリサイクル原料として使用することが可能になった。
同社は、昨年10月から技術の実証試験を実施している。今回の異物除去技術の確立によって、使用済み繊維製品の「繊維to繊維」リサイクルの取り組みが加速することが期待される。