特集 北陸産地(2)/産地との取り組み強化/蝶理/東レ/旭化成アドバンス/帝人フロンティア/一村産業
2023年03月31日 (金曜日)
〈繊維で30%の増収狙う/ブルーチェーン深耕/蝶理〉
蝶理の繊維本部は、来期(2024年3月期)からの新中期計画で20~30%の売り上げ拡大を狙う。糸、テキスタイル、製品とも伸ばす。
重点を置く分野の一つが環境で、再生ポリエステル「エコブルー」や高伸縮糸「テックスブリッド」など環境配慮型商材の販売規模を300億円以上に拡大する。
サプライチェーン全体でサステイナビリティーを実現する「ブルーチェーン」の進化にも取り組む。ウツミリサイクルシステムズとの協業によるリサイクルペレット、200品種を超える再生ポリエステル糸の品ぞろえ、小松マテーレの速染糸「WS」との協業など各段階で取り組みが広がっているが、新中計ではトレーサビリティーや循環型経済の視点も重視。繊維to繊維のケミカルリサイクルなど新たな取り組みも始める。
産地への糸販売では、ブランド戦略を強化し、独自の差別化糸をさらに強化する。テキスタイルは差別化品をグローバルに拡販する考えで、北陸品の海外販売にも力を入れる。
健康・快適を切り口にスポーツやアウトドアなどの用途を伸ばすほか、中東向けにも注力する。インドネシアの染色合弁、ウラセプリマ品の拡大にも取り組む。
〈北陸品を世界で拡販/発注額は19年を超える/東レ〉
東レの北陸産地への発注は順調に回復している。
今期(2023年3月期)は、数量ベースで19年比数%の減少だが、金額ベースでは同約10%の増加になる見通し。商品構成の変化が背景にあり、19年に比べると裏地など定番的な商品が減少する一方、アウターやスポーツが拡大するなど高付加価値品の比率が高まっていると言う。
産地のスペースがタイトになる中、今後に向けてはさらなる高付加価値化に向けた取り組みを重視する。三木憲一郎常務執行役員繊維事業本部長は「さらに付加価値、収益を上げる取り組みを強化するとともに、北陸産地の実力をしっかりと世界に広げていく」と話す。
同社の原糸・原綿と北陸産地の高次加工を組み合わせた開発をさらに強化し、グローバルに拡大していく。特に重点を置くのが革新複合紡糸技術「ナノデザイン」やサステイナブル素材など。北陸産地品の拡大に加え、産地企業との協業によるグローバルなサプライチェーン構築なども検討していく。
〈来期売上20%増計画/北陸産地で設備投資/旭化成アドバンス〉
旭化成アドバンスの繊維事業は今期(2023年3月期)、前年比約10%の増収で営業利益は横ばいとなる見通しだ。
衣料用途は堅調で、特に薄地高密度織物を中心とするスポーツ用途は過去最高益になる見通し。前期に続いてアウター用途も堅調で、裏地の回復も寄与した。
下半期はキュプラ繊維「ベンベルグ」の玉不足の影響があったが、ジアセテート繊維や綿糸、スポーツ用のナイロンなど他素材の拡大でカバーした。ポリエステルを使った学販向けも生地から縫製の一貫対応を伸ばす形で順調に推移した。
来期は約20%の増収を狙う。衣料用途、資材用途とも伸ばす計画。衣料用途はベンベルグの生産量回復もあってアウターや裏地の拡大を狙うほか、インナーや学販、縫製品事業も伸ばす。欧米向けがけん引するスポーツ用途は市場環境の不透明感が増していることから横ばいを計画する。
日本発のテキスタイルの強みを生かしたビジネスを重視する中、来期は北陸産地との取り組みをさらに強化する。投資も行う考えで、協力工場への染色加工機導入を計画している。今後、撚糸機や製織準備機、織機などでも投資を検討していく。
〈来期は国内向け拡大/強み融合した体制構築/帝人フロンティア〉
帝人フロンティアの衣料素材本部は今期(2023年3月期)、スポーツを柱とする輸出がけん引する形で堅調に推移した。来期はスポーツ、ユニフォームとも国内向けを伸ばすほか、ユニフォームの輸出なども拡大を狙う。
中期的には、国内は利益率を見て商品の入れ替えを進めていくとともに、海外向けのさらなる拡大を狙う。国内向けの課は機構改革を行い、4月からスポーツとユニフォーム、ニットと織物など各分野の強みを融合した開発、販売がしやすい体制とする。
海外向けは環境配慮型商品を軸に拡大する方針で、特に機能性+エコ商品の開発を強化する。販売先がメガブランド以外にも広がる中、帝人フロンティアニッティングを軸に北陸での開発を強化するとともに、インドネシアでのニット生産も強化して拡大につなげる。
北陸産地との協業も重視し、グループ会社以外とも連携を強める。特に海外向けで産地との協業を増やす考えで、織物、ニットとも拡大を狙う。
北陸産地への原料販売は順調に回復し、今期は環境配慮型商品や資材関連などが伸びている。
〈グローバル生産整備/北陸の取扱高伸ばす/一村産業〉
一村産業の今期(2023年3月期)は売上収益が前年比19%増、事業利益が同11%増となる見通しだ。利益は1994年以来の高水準を見込む。繊維事業は25%の増収で7%の増益となる見通し。
来期は全社で前年比6%、繊維で8%の増収を計画する。生産地の整備をさらに進める考えで、インドの紡績糸、中国の織布、染色加工、ベトナムの織布、染色加工などグローバル生産体制を拡充し、リスク分散を図る。海外市場の拡大に向け納期対応を強化する狙いもある。
ストレッチの「ラクストリーマ」、高通気の「アミド」などが順調に伸びる中、来期はブランド戦略のさらなる強化にも取り組む。新規分野として農業分野の拡大にも注力し、将来的には10億円規模の事業領域に育てる考え。
北陸との取り組みも強化する。全体に占める北陸生産の比率は現状で70%弱。数量での比率はアジア生産の強化に伴って下がるとみられるが、取扱高は「しっかり増やしていきたい」(藤原篤社長)とする。来期は特に省力化や品質向上の取り組みや、SDGs(持続可能な開発目標)対応の取り組みなどを強化する。
人手不足に対応するための設備面での支援も視野に入れ、検査の自働化などを検討する。