不織布新書23春(5)/帝人フロンティア/レンチンググループ/ダイワボウレーヨン/宇部エクシモ

2023年03月20日 (月曜日)

〈帝人フロンティア/ショートカットが堅調/湿式で新用途開拓〉

 帝人フロンティアの短繊維素材本部は今期(2023年3月期)、前期比ほぼ横ばいの販売量となる見通しだ。来期は湿式不織布向けのショートカットファイバーのさらなる拡大や自動車用途の回復などで数%の拡大を狙う。

 同社のポリエステル短繊維販売の約70%が不織布向け。不織布向けは今期、自動車用途が半導体不足の影響を受け、衛生材料用途も市場環境悪化の影響を受けた。一方で生活資材用途は底堅く、湿式不織布用のショートカットファイバー「テピルス」が堅調だった。テピルスはコスト上昇の影響を受けたものの、需要は年率数%の成長が続いており、昨年の生産能力増強も寄与した。

 来期は前期比数%の拡大を狙う。衛生材料用途の市場環境は引き続き厳しいとみるが、自動車用途の回復を見込む。ショートカットファイバーも引き続き伸ばす方針で、需要の拡大に合わせて生産体制も整えていく。生活資材用途も底堅いとみる。

 湿式不織布では今後、主力用途の水処理膜支持体の市場拡大に合わせた拡販に加え、電材など新しい用途開拓にも取り組む。

 乾式不織布では、0・11デシテックスのポリエステル極細繊維を活用した吸音材や断熱材などの開発にも注力し、原綿販売と不織布販売の両面で拡大を狙う。

 寝装用途の高付加価値品の開発にも力を入れる。現在は防ダニや洗濯対応など清潔関連が堅調に推移しており、今後は新しい機能わたの開発も強化する。

〈レンチンググループ/不織布用リヨセル繊維の認知向上へ/カーボンゼロも訴求〉

 レンチンググループは、「ヴェオセルcares for the future」(ヴェオセルが大切にしたい未来)のテーマの下、不織布用リヨセル繊維の認知度向上を図っている。インスタグラムや環境関連展示会への出展などを通じて、生分解性などの特徴を消費者に分かりやすく伝えている。

 同グループのリヨセル繊維は、製造時のCO2排出量を「他社製のリヨセル繊維と比べて大きく削減」している。再生エネルギー利用や生産効率などへの取り組みが寄与する形だ。こうした特性が徐々に知られるようになっているほか、吸水性やドレープ性などへの評価は高く、不織布用途でも注目が集まる。

 昨年12月に東京都内で開催された総合環境関連展示会「エコプロ2022」に出展し、来場者に不織布に求めるモノについて尋ねた。「植物由来」「マイクロプラスチックにならない」「カーボンニュートラル」の三つの答えを用意していたが、植物由来とマイクロプラスチックが多かった。

 同グループは、2030年にCO2排出量を17年比50%削減し、50年までにカーボンゼロを目指している。オーストリアの工場ではカーボンゼロのリヨセル繊維の製造を可能にしており、そうした取り組みも今後アピールしていきたい考えだ。

 カーボンゼロのリヨセル繊維を使った製品をアジアの有名小売りチェーンストアがプライベートブランドで展開を開始する。製品には「ヴェオセル」のロゴも付く。

〈ダイワボウレーヨン/不織布も“機能×サステ”/フェムケア分野の開発加速〉

 ダイワボウレーヨンは、不織布向けレーヨン短繊維でも機能性とサステイナビリティーを“掛け合わせる”開発と提案を進める。

 2022年度(23年3月期)は主原料、副原料、薬剤、燃料いずれも異常な高騰に見舞われ、レーヨン短繊維メーカーにとって厳しい環境となった。同社も値上げによる価格転嫁を進めて、4月から第3次値上げに踏み切る。

 そうした中、不織布用途の需要自体は堅調が続く。乾式不織布向けだけでなく、湿式不織布向けのショートカットファイバーも海外からの引き合いが増えた。海水中での生分解性を確認している「エコロナ」も採用が始まり、撥水(はっすい)レーヨン「エコリペラス」も衛材用途で引き合いが増えた。

 今後も引き続き不織布用途でも機能性とサステイナビリティーを融合させた開発と提案に取り組む。機能性では撥水のほか、天然由来オイル練り込みによる保湿機能レーヨンなどを打ち出す。

 環境配慮では、温室効果ガス(GHG)排出削減、生分解、リサイクルに焦点を当てる。エコロナの普及を進めるほか、カーボンオフセットを組み込んだカーボンニュートラルレーヨンを不織布用途でも提案する。使用済み綿製品を原料に再利用するリサイクルレーヨン「リコビス」も不織布用途での採用を目指す。

 女性特有の悩みを解決するフェムテック分野に向けた開発も重点テーマとした。レーヨンが持つ肌当たりの優しさや吸保湿性を生かし、そこに抗菌防臭、消臭、保温といった機能を融合させることで用途・アイテムの開発を進める。

〈宇部エクシモ/フィルター用途で拡販/機能やバリエーション訴求〉

 宇部エクシモは、2種類の樹脂を使用したコンジュゲートわた「UCファイバー」や芯鞘構造で細繊度を実現した「エアリモ」などを不織布用に販売している。主力の衛生材料用途に加えて、産業資材用途の深耕に取り組んでいるが、中でもフィルター用途の拡販に力を入れる。

 UCファイバーは、フィルター用途を中心に産業資材分野が堅調な動きを見せる。使用目的に応じて親水や撥水(はっすい)、かさ高、抗菌、難燃、伸縮などの機能を付与し、繊維の改質による耐久親水性タイプも開発した。環境負荷低減に対応する商品の開発も進めている。繊度は2デシテックス前後~7デシテックスが中心だが、1デシテックス強のタイプもトライアル中だ。

 エアリモは0・2、0・3、0・4デシテックスという細繊度の繊維が生産できる。この中間となる0・8デシテックス、1・7デシテックス、2・2デシテックス、3・3デシテックスのチョップドファイバーもそろえ、幅広い需要に対応できる。

 UCファイバーは引き続き産業資材用途での拡販に注力し、エアリモも極細という特徴を生かして液体フィルター用途などへの参入を進める。異業種を含めて、新規顧客からの引き合いも増えている。ただ、「エアリモは量を追うのではなく、価値の訴求に重点を置く」としている。

 事業を取り巻く環境は厳しく、来期(2024年3月期)は今期並みの販売を維持したいとしている。原材料高やエネルギーコスト上昇分の転嫁を進めるなど、販売価格の適正化にも取り組む。