特集 事業戦略(4)/大和紡績/取締役産業資材事業本部長兼製品・テキスタイル事業本部長 青柳 良典 氏/次の高収益事業の柱を作る/原料から開発できる強み生かす

2023年02月24日 (金曜日)

 大和紡績は、次世代につながる事業拡大の芽を育てつつある。その切り札となるのが合繊、産業資材、製品・テキスタイルの3事業本部の研究開発機能を備える播磨研究所(兵庫県播磨町)であり、「原料に知見が深く、開発面で大きな力になっている」と青柳良典取締役は話す。原料から開発できる強みを生かし、高機能フィルターの開発などによって高収益事業の柱を作る。

――ダイワボウホールディングスの繊維事業全体の第3四半期(2022年4~12月)業績は前年同期比で増収も減益でした。産業資材事業を振り返ると。

 建築需要が旺盛なことを受け、建築現場で使われる軽量防音シートの販売が非常に堅調でした。この軽量防音シートでは、仮設工業会が2017年に制定した認証基準で、取引先と連携し第一号認証を取得しており、現場で使用されるケースが増えています。特に首都圏での販売が伸びています。大阪でも梅田周辺で再開発が進んでおり、今後も需要が増えてくるものとみています。

 帆布は昨年、トラックの検査不正問題によって出荷台数が減少した影響が大きく出ました。今年に入ってから出荷が再開され、戻りつつあります。ドライバーの人手不足や物流業界の24年問題も控えつつある中、作業者の高齢化も進み、従来以上に作業負担の軽減による労働環境の改善が求められます。当社では従来品に比べ33%も軽量な合繊帆布「エアフェザー」などを開発しており、そういった課題に対応できる商品群をそろえることで販売を加速します。

 カートリッジフィルターは、電子部品向けに上半期は納期が追い付かないほどでしたが、スマートフォンやパソコン需要に一服感が出てきたことから売り上げが伸び悩みました。21年に和歌山工場(和歌山県美浜町)のフィルター製造設備と、美川工場(石川県白山市)のフィルター原料製造設備を出雲工場(島根県出雲市)に移管し、原料から製品までの一貫生産体制を構築しています。電子部品だけでなく、食品や化学、塗料などさまざまな分野へ販路を広げていければと思っています。

 産業資材事業全体では増収増益を維持していますが、計画には届いていません。利益面はエネルギー、原材料コスト上昇の圧迫を受けています。

――製品・テキスタイル事業はいかがですか。

 円安の影響を大きく受けるとともに、国内では昨年11月の気温が予想より高く販売が鈍化しました。トランクスなどインナー製品の販売数量はそれなりに増えているものの、利益が伴っていません。もう少し商品を差別化し、単価を上げていく必要があります。

 インドネシアの衣料縫製ダイワボウ・ガーメント・インドネシア(DAI)から米国へ輸出するカジュアル衣料は上半期が堅調でしたが、下半期から景気後退でブレーキがかかりました。

 23春夏物が動き始め、通期ではそれなりの数字を確保できそうです。利益も第4四半期(1~3月)で取り戻していければと思っています。環境配慮型の素材を採用するケースが増えており、再生PETをコットンUSA認証綿で包んだ2層構造糸「ツインレット」使いなどは受注が増えています。

――値上げの進ちょくは。

 原料高は少し落ち着いてきましたが、企業努力を超えており、引き続き値上げをお願いしなくてはいけません。物価高で消費マインドが下がる中、値上げ幅は難しい判断となってきます。ただ、当社が取り扱う衣料品はインナーやTシャツなど必需品のような商品が多く、数量的には消化できると思っています。いかに差別化した商品を提供していくかが課題となります。

――来期は中期経営計画の最終年度となります。

 収益力の弱い事業をいかに強く立て直していくかが課題です。さまざまなコストアップで減った利益を取り戻すため、最終年度で対策を打ち、次の新しい中計へつなげていく必要があります。

 産業資材事業では、高性能なフィルターの開発を強めています。電子部品で、より高い精度が求められるフィルター商品は、米国のメーカーがシェアを握っています。しかし、新型コロナウイルス禍のワクチン生産へのフィルター供給が優先され、日本国内への入荷が遅れていると聞きます。その分野でのフィルターを開発できればシェア拡大とともに、高収益化にもつながります。

 そういった開発において、原料に知見が深い播磨研究所が大きな力になっていきます。SDGs(持続可能な開発目標)や社会問題の解決につながるような商品開発をもっと増やします。

 製品・テキスタイル事業ではDAIと、中国の蘇州大和針織服装、大和紡工業〈蘇州〉を含め、供給体制をしっかり構築していきます。カジュアル製品でも機能を高めるなど高付加価値品へシフトしながら収益力を高めていきます。

 テキスタイル販売では新たな機能材の開発も進めており、中わたで抗菌防臭・消臭加工によって付加価値を高めていこうとしています。機能性マスターバッチ樹脂「マジカルアシスト」を使った繊維化では、難燃で開発を進行しています。