特集 小学生服(4)/ニーズを商品開発に生かす/有力学生服・素材メーカー/小学生服市場開拓へ/トンボ/菅公学生服/明石スクールユニフォームカンパニー
2023年02月15日 (水曜日)
有力学生服、素材メーカーは、着用時の快適性や機能性、家庭で洗濯が簡単なイージーケア性など、中高生に比べて服を汚しやすい小学生や、保護者のニーズを捉えた商品の開発・提案を進めている。その提案は商品だけにとどまらず、教育支援といったサービス面にも広がる。学校側に制服を取り入れることのメリットも伝えながら、小学生服市場を深耕する。
〈皆川デザイナーとのコラボ制服提案/トンボ〉
トンボは小学生服部門で、今春の入学商戦に向けて販売は順調に推移しており、例年並みの受注量を確保している。今上半期(2022年7~12月)、同部門での売り上げは前期比横ばいとなった。
店頭向けの「トンボジョイ」は、ストレッチ性に加え、防汚、撥水(はっすい)、撥油、静電防止加工など機能性が充実していることから販売が堅調。小中一貫校向けの「トンボプライマリー」もサイズ調整機能や洗濯耐久性、イージーケア性を持つ特徴を改めて訴求することで販売につなげている。
性的少数者(LGBTQ)へ配慮する流れから、これまで詰め襟とセーラー服の比率が高かった中学校では、性差を感じさせないブレザーの採用が広がっている。その流れもあり、長ズボンの需要も増加しているという。
同社は昨年4月、デザイナーの皆川明氏が手掛けるファッションブランド、「ミナ ペルホネン」を展開するミナ(東京都港区)と業務提携およびライセンス契約を結んだ。今後、小学校向け制服の展開を推進する。昨年11月には東京都内で商品発表会を開いた。
「節度と自由を感じさせるたたずまい」をコンセプトに、オールジェンダーを意識したデザインや、ボディーラインを強調しすぎないシルエットを取り入れた制服を披露した。24年度入学の新入生分から販売する予定で、初年度は採用校数5校を目標に掲げる。
〈主力ブランド軸に提案/菅公学生服〉
菅公学生服は、小学生向けの主力ブランド、「カンコータフウォッシュ」で販売を広げている。商品の機能性が評価され、今春の入学商戦では前年並みの受注を確保した。
カンコータフウォッシュは洗濯を繰り返しても劣化しにくい洗濯耐久性に加え、素材や縫製など、高品質な商品に仕上げている点で高い評価を得る。田原正彦取締役は「家庭で丸洗いできるイージーケア性と、洗濯しても形が崩れない耐久性が好評」と説明。「購入者からも、『数カ月着用しても購入した時とそん色ない状態が保てている』といった声をいただいている」と話す。既存商品から同ブランドへのシフトも含め、今後も引き続き販売を進める。
制服の販売のほか、教育支援につながる取り組みにも力を入れている。制服の製造工程で発生する残反を使ってエコグッズを作るワークショップを開催。新型コロナウイルス禍ではネットを活用した取り組みも行う。オンライン工場見学として、倉敷工場の様子を撮影した動画を配信し、全国の小学校向けに教材として提供している。
同社はグループ会社のカンコーマナボネクトで教育ソリューション事業も手掛ける。曽山紀浩取締役は「小学生向けでは、岡山県井原市の小学校の6年生に非認知能力(数値化が難しい個人の特性による能力)のプログラムを提供するなどの取り組みを実施している」と話す。
〈ニット製品の販売伸長/明石スクールユニフォームカンパニー〉
明石スクールユニフォームカンパニーは小学生服部門で、ニット製品の販売が伸びている。営業本部の江藤貴博スクール第一販売部長は「ニット製シャツの『ラクポロ』は、シワになりにくいといったイージーケア性や、着心地の良さなどが好評を得ている」と指摘。「2千円を超える高価格帯の商品ながらも販売が増えている」と話す。
給食着はこれまで児童間で使い回すケースが多かった。しかし、新型コロナウイルス禍で衛生意識が高まったことで、個人買いが増加する傾向にある。これによって家庭での洗濯や手入れが簡単なニット製の給食着の需要が高まっている。江藤スクール第一販売部長は「給食着は、分母は小さいものの、前年に比べて50%以上伸びている」と説明する。
同社が直営店の「プラザA」を持っていることも寄与している。江藤スクール第一販売部長は「商品の機能性など特徴を来店客に直接アピールできることが大きい」と話す。
主力の「富士ヨット小学生服」や、ワンランク上の「THD」(テ・アッシュ・デ・ラ・メゾン)を刷新して2021年入学商戦から打ち出している、人形玩具の「リカちゃん」をモチーフとする「リカ富士ヨット」の販売も堅調に推移。生産も順調に行えている。小学生服部門の22年12月期の売上高は前年同期比横ばいを維持した。