特集 20thジャパン・ヤーン・フェア&総合展「THE尾州」(5)/トスコ/豊島/長谷川商店/長谷虎紡績/松村

2023年02月10日 (金曜日)

〈抗菌和紙糸がデビュー/トスコ〉

 トスコは、抗菌性を持つ和紙糸「Cu―TOPアオ」(シーユートップアオ)を初出展する。島精機製作所と日本製紙との共同開発糸で、銅イオンを結合したパルプを和紙に応用して機能を付与した。糸で3点、生地で6点、製品で2点展示する。

 後加工ではないため抗菌効果が持続するのが特徴。アンモニアや酢酸、イソ吉草酸、硫化水素などへの消臭性、抗ウイルス性にも期待できるという。毛番の6番、20番、40番を用意し、横編み、丸編み、織物分野に提案する。衣料品用途のほか、キッチン回りやバスマットといったインテリア関連も想定する。

 そのほか、秋冬向けヘンプ、オーガニックラミー、オーガニックリネン、他の和紙糸も打ち出す。糸、生地、製品を合わせ全体で約50点並べる。

〈サステや多彩な機能を提案/豊島〉

 豊島は再生ウール糸「サークルウール」を中心に天然繊維から合繊までの幅広い素材を展示する。サステイナビリティーや豊富な機能性を打ち出した多彩な糸を訴求する。

 サークルウールは協力工場による厳格な審査基準によって色の再現性や毛率、紡績性などが安定していることが特徴。アウトドア向けなどの素材として人気が高い。

 天然繊維の素材はほかにも、特許を取得した独自の製法で生み出す和紙糸「ワガミ」のほか、トルコ産トレーサブルオガーニック綿「トゥルーコットン」なども提案する。

 合繊素材は多彩な機能が特徴。モダクリル繊維を使用した「アグニノ」は高い難燃性とその持続性に優れる。親水性ナイロン冷却糸「オプティマクール」は通常のナイロン糸に比べて2倍の公定水分率を保持する。

〈“シルクの優位性”理解図る/長谷川商店〉

 長谷川商店(愛知県一宮市)は、主力素材のシルクについて特徴や機能をまとめた“シルクの優位性”という小冊子を来場客向けに作成した。来場者に理解を図ろうというのが狙いだ。

 今回展に向けて、若手社員2人を中心に準備を進めた。若手社員と“ともにシルクについて学ぶ”をコンセプトに、小冊子を渡しながらメリットについて解説する。

 小冊子はシルクが持つ特徴を①持続可能な天然資源②吸湿発熱性③吸放湿性④消臭性⑤気品ある光沢――にまとめた。これをもとに理解を深めた上で、糸や編み地、製品などを紹介していく。

 糸を扱う若手社員は中国の工場で研修を積み、原糸・原料の相場や背景についての知見を深めた。昨年入社した営業社員はアパレル企業が販売先。素材の持つ力をさらに発信したいと考えている。

〈環境配慮型で市場に存在感/長谷虎紡績〉

 長谷虎紡績は、全社的に2030年までに80%以上環境配慮型に置き換えることを目標にし、差別化糸の開発を加速する。

 今回は同社とグループ3社で出展する。機能素材では耐薬品性や耐熱性に優れる「カイノール」では防護服などを展示。宇宙産業で使われている「カイノールカーボン」では、実際に岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(岐阜県各務原市)のパネル展示をそのまま披露する。

 環境配慮素材では植物由来タンパク繊維「ブリュード・プロテイン」や、改質ポリ乳酸(PLA)繊維「PlaX」の展開を強める。昨年、紡績設備を増強し、生産できるようになった長短複合など2層構造糸も紹介する。

 残糸を使ったライフスタイルブランド「ヘラルボニー」のカーペットも展示。「紡績にしか出せない」素材を訴求する。

〈シルクの持続可能性訴求/松村〉

 シルク専門商社の松村(京都市)はウオッシャブル加工を施した絹紡糸「クオン」、ダイワボウレーヨンの海水中生分解性レーヨン短繊維「エコロナ」とシルクわたの混紡糸を提案する。さらにシルクのサステイナビリティーも改めて訴求する。

 クオンはシルクの特徴を維持した上で繰り返し洗濯でも劣化を抑える。エコロナとの混紡糸は混紡するレーヨン短繊維をエコロナに切り替えることで、より持続可能性を強化した。

 シルクは元々、生分解性を持つサステイナブル繊維で、生糸だけでなく、絹紡糸はカイコが最初に吐き出す糸、きびそを原料とし、紬糸(ちゅうし)は絹紡糸を製造する際の落ちわたを原料とするなど捨てるところがない。特に紬糸はこれまで強く訴求していなかった再生糸として打ち出す。