特集 20thジャパン・ヤーン・フェア&総合展「THE尾州」(3)/近藤/三幸毛糸紡績/シモムラ/シキボウ/新内外綿

2023年02月10日 (金曜日)

〈意匠性提案で原点回帰/近藤〉

 近藤(愛知県一宮市)は原点回帰をテーマに意匠撚糸を中心とした得意分野を訴求する。新たにカラー展開する商品も提案する。

 モール糸「ミンキー」はナイロン100%ながらも、ミンクのような上品な光沢と柔らかさを表現した。モヘアタム糸「ボッカゴールド」はキッドモヘア混でソフトな風合いが特徴だ。

 新たにカラー展開するのは「ソエル」「プードル」「ラウンド」「スクリュー」の4品番。これまでは、いずれも生成りでの展開だったがカラーを増やし備蓄提案する。

 ソエルは綿100%のリング糸で、ナチュラルでさらっとした風合い。プードルは綿のソフトな風合いを生かし、特殊な撚糸でループ密度の濃い形状が特徴。ラウンドは綿を強撚して形状を変えたカール糸。スクリューは梨地調で清涼感がある。

〈原料を厳選、紡績技術で差別化/三幸毛糸紡績〉

 三幸毛糸紡績(名古屋市中村区)は厳選した原料を使い、新川工場(愛知県清須市)で培った紡績技術を生かして差別化したファンシー糸を軸に展開する。

 新川工場は紡績から製糸までの工程を一貫して生産できるのが強み。操業の歴史も古く、これまでにさまざまな種類や形状の糸を開発してきた。今回新たに紹介するのは凹凸(おうとつ)感を強調した10番ランダムスラブ糸の「ドルフィン」シリーズ。ナイロンの芯糸に、ウール糸を不規則な間隔で巻いてスラブを形成。独特の表情を持つ。

 クリンプ(繊維の屈曲)を持つウールの特徴を生かし、甘撚りで膨らみを持たせたトップ糸の「HLK」も引き合いが多く人気を博す。カラーも英国に昔から生息する羊の毛色を忠実に再現した。

 出展は3年ぶり。新たな商品開発の種となる提案ができればと意気込む。

〈短繊維使い拡充/シモムラ〉

 シモムラ(石川県小松市)は各生産拠点の連携による開発を強化している。同社の商品は長繊維が主力だが、今回展では短繊維使いも拡充する。

 同社は近年、生産拠点を拡充してきた。グループ会社には、旧鈴倉インダストリーの原工場を引き継いだソフィーナ(新潟県長岡市)、17年に完全子会社としたフクイセイシ(福井県大野市)、20年に関係会社とした糸染めの園田産業(小松市)、自社工場では旧北陸化繊の工場を買い取った押水工場(石川県宝達志水町)、旧アツギ東北・むつ事業所内に開設したむつ工場などがある。今後、各拠点が連携し、商品展開を強化していく。

 今回展では、再生ポリエステル使いなどサステイナブル糸の提案に加え、昨年に開設したむつ工場によるカバーリング糸の提案を強化する。特に短繊維使いを拡充する。

〈こだわりに応える糸充実/シキボウ〉

 シキボウは富山工場(富山市)や海外工場を通じて「原料、素材にこだわったモノ作りができる」体制を構築している。富山工場ではリング糸のほか、毛羽が少なくピリングが起きにくいMVS糸や、2層構造の長短複合糸の供給ができる。

 SDGs(持続可能な開発目標)に沿った素材の需要が増える中、繊維製品の廃棄後に焼却処理される際の二酸化炭素を削減するポリエステル「オフコナノ」、生分解性のあるポリエステル「ビオグランデ」、フェアトレード綿糸「コットン∞」(コットンエイト)使いの糸の販売に注力する。

 連続シルケット糸「フィスコ」は、和歌山産地のニッターを通じて海外向け生地への採用が拡大。連続シルケット糸は「世界で生産している工場がほとんどない」ことから、付加価値の高さを生かして販路を広げる。

〈ボタニカルや竹・葦糸/新内外綿〉

 新内外綿は植物由来の染料を使ったオーガニックコットン糸「ボタニカルダイ」、竹や葦(ヨシ)と綿の混紡糸、さらにファッション用のオープンエンド糸を提案する。

 ボタニカルダイは2013年から提案を始め、今も人気が高いロングセラーの商材だ。原料はオーガニックコットン100%やテンセル「リヨセル」といった環境負荷を考えたものを使う。

 竹糸は、発売から10年以上になる商材。竹由来の繊維と綿の混紡糸で竹55%・綿45%の12番単糸、竹30%・綿70%の20番単糸、竹15%・綿85%の28番単糸がある。生地にすると麻のような爽やかな肌触りになるためアロハシャツ、作務衣向けの織物や製品に向く。

 葦糸は淀川水系に自生する葦を使った綿との混紡糸。デザイン事務所のアトリエメイ(大阪府枚方市)が葦繊維を供給する。葦30%・綿70%で26番単糸、10番単糸で展開する。