帝人フロンティアのスポーツ素材/新規開拓が重要に/“環境+圧倒的な差別化”を
2023年02月08日 (水曜日)
帝人フロンティアは、2023年度(24年3月期)に向けてスポーツ素材の海外販売で新規開拓を強化する。ここに来てやや軟化している市況への対応を進める。そのために環境配慮素材の活用と“圧倒的な差別化”に取り組む。
海外へのスポーツ素材販売を担う衣料素材本部テキスタイル第一部の22年度業績が好調に推移している。白石和男部長は「海外市場は新型コロナウイルス禍からの回復が21年からいち早く始まり、その勢いが2年間続いている」と話す。特に欧州市場向けが好調で、同社が得意とするニット生地の販売がアウトドア用途で拡大した。ランニングやヨガ、サイクリングなどの分野も伸びている。
ニット生地は高バランスのポリエステル長繊維編み地「デルタ」をベースとした素材が販売をリード。中空タコ足型断面糸を使った「オクタ」はフリース代替として採用が拡大する。軽量性、保温性、蒸れ感抑制といった機能が評価された。特殊4層構造による高感度・かさ高軽量性・高反発性・速乾性に優れる「デルタフリーモ」は合繊スエット素材として綿スエットからシェアを奪いつつある。
織物では高強力糸を一定間隔に配列することで高耐久軽量性とフラットな生地表面を両立したポリエステル織物「シャドウリップ」がアウトドアシャツ地やアウター表地として徐々に採用され始めた。
好調が続くスポーツ素材の海外販売だが、白石部長は「ここに来て市況に軟化の兆しが強まってきた」と指摘する。インフレ高進で消費者の購買力が圧迫され始めたことに加え、コロナ禍による物流停滞への対策としてアパレルが生産を前倒ししてきた反動が出始めている。
このため「23年度は既存の取引先だけでは拡大が難しくなる」として新興アパレルや新ブランドへの提案を強化することで新規開拓に取り組む。その際に「価格競争に巻き込まれない商品が重要。環境配慮と“圧倒的な差別化”を実現する素材の開発・提案が重要になる」とする。
環境配慮では既に再生ポリエステルの導入を進めた。原糸の主力生産拠点であるタイのテイジン・ポリステル〈タイランド〉では、タイ国内で回収したペットボトルを原料としたリサイクル糸の生産も始まった。原料面の強みに織・編み・加工技術の工夫を融合させることで革新的な差別化素材の開発を進める。