帝人と富士通/環境負荷情報を可視化/リサイクル炭素繊維で実証へ

2023年01月20日 (金曜日)

 帝人と富士通は、リサイクル炭素繊維に関する追跡データを収集・管理し、可視化する「資源循環価値化実証プロジェクト」を開始する。ドイツの自転車フレームメーカーと自転車メーカーがプロジェクトに参加した。1月から3月まで実証プロジェクトを実施し、実現性が確認できれば2023年度(24年3月期)に事業化を目指す。

 現在、世界的な環境規制の強化によって企業は厳密な二酸化炭素排出量管理が求められ、資源の循環利用に関する証明を制度化する動きも強まる。これを受けて帝人と富士通は22年からバリューチェーン全体で環境負荷に関するデータ収集・分析やリサイクル素材の出自証明など環境負荷情報を提供する「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム実現プロジェクト」を共同で進めている。今回、ドイツの自転車フレーム製造会社のVフレームズと自転車メーカーのアドバンストバイクスがプロジェクトに参加し、実証プロジェクトを実施する。

 現在、自転車フレームは大部分が中国を中心としたアジアで生産され、使用済みフレームの多くはアジアで埋め立て処分されるなど循環利用が進んでいない。これに対してVフレームズは炭素繊維複合材の製造工程で発生する端材を再利用したフレームを製造し、温室効果ガス(GHG)排出削減に貢献している。今回の実証プロジェクトでは、Vフレームズによるリサイクル炭素繊維の出自証明や環境負荷に関するデータ収集・管理と、データ可視化の実現性を評価・検証する。

 帝人が各工程の環境評価の支援とエコシステム構築に向けたステークホルダー連携を、富士通はブロックチェーン技術によるシステム「フジツー・トラック・アンド・トラスト」によるプラットフォ―ム実装と追跡データの可視化ツール開発を担当する。Vフレームズとアドバンスドバイクズは自社の各工程の環境負荷情報をプラットフォームにアップロードし、データの収集プロセスやプラットフォーム上で可視化されたデータのレビューを担う。

 自転車フレームのリサイクルから販売までの全工程の資源に関する情報(所在、状態、環境負荷など)がプラットフォームに反映され、物理空間の資源の状態をデジタル空間で仮想的に表現できる。ブロックチェーンを用いることで過去にさかのぼって追跡できる。

〈ESG投資評価などにも活用へ〉

 実証プロジェクトでプラットフォームの実現性が確認できれば、自転車ユーザーへの開示やステークホルダーによるカーボンマネジメントでの活用などを通じて情報の価値化が可能になる。将来的には、地産地消の証明、GHG排出量証明などが実現することになり、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の評価やGHG排出量クレジット市場での活用の可能性が広がる。帝人と富士通は自転車フレームだけでなく他の産業・素材にもプラットフォームの実装・導入を進め、素材起点の循環経済実現を目指す。