見えてきた検査機関が進むべき道/カケン/QTEC/ニッセンケン/ボーケン

2023年01月04日 (水曜日)

 検査機関は、新型コロナウイルス禍の影響から脱しつつある。ただ、日本国内での検査・試験件数の減少や原材料・エネルギー価格上昇によるコスト増など、厳しい事業環境が続く。そうした状況下、各検査機関は、新試験の開始や新分野への進出などに目を向ける。それぞれの強みや特性を生かし、持続的な成長につなげる。

〈新分野開拓など進める/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)は、2023年3月期に現中期経営計画を終える。新型コロナウイルス禍の影響はあったが、東京事業所川口本所にバイオラボを開設するなど、寺坂信昭理事長は「中計で掲げた施策はほぼ実行した」と強調する。次期中計でも持続的成長を目指すとし、新分野の開拓などを図る。

 現中計では、バイオラボの立ち上げに加え、当初の予定からは遅れてしまったが、インド・ベンガルール試験室も開設した。計数目標の見直しは実施したものの、中計の3年間で取り組もうとしていた施策を着実に進めることができたことから、一定の成果を上げたと捉えている。

 1月以降も顧客との関係強化や非繊維などの新分野の開拓、経費の削減、人材育成・確保、働き方改革などに継続して取り組み、計画の完遂を狙う。原燃料・原材料の高騰やエネルギー価格高など、取り巻く環境は厳しさが続くが、これらを確実に実行する。

 来期からの新中計では、これまで順調だった機能性試験だけでなく、新たな試験・検査を模索する。中国を中心に実績を上げてきたCSR監査の拡大のほか、新分野として、CO2排出量算出や水循環にも視線を注ぐ。

〈職員の人間力向上に注力/QTEC〉

 2022年度が初年度の3カ年中期経営計画を実行している日本繊維製品品質技術センター(QTEC)。中計でも掲げる「経済的価値」「社会的価値」「環境的価値」の三つを創出する考えの下で、100年続くQTECを目指しているが、山中毅理事長は「強みである職員の人間性に磨きをかける」と力を込める。

 22年度下半期から23年度にかけても中計に沿った施策を確実に進める。その中でも重点項目に挙げているのが、試験技術の開発、営業体制の強化、デジタル技術で企業を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、人材育成、新規ビジネスへの挑戦だ。

 QTECの最大の強みとも言える人材の育成では、新人やパートを含めて全員が参加できる研修を週1回開催。繊維の知識の習得やビジネス全般を学ぶ機会を提供するほか、外部研修や工場見学も実施している。顧客に選ばれる検査機関になるため、職員の人間力向上に継続して取り組む。

 新しい試験では、キャンプ用テントのSGマーク認証試験やファイバーフラグメント(マイクロプラスチック)脱落量の定量化試験、炭火による火の粉の溶融試験などを始めている。

〈多様なソリューション提供/ニッセンケン〉

 「ライフ アンド ヘルス(L&H)事業本部」を中核に成長を図っているニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)。駒田展大理事長は「人々が健康で快適な生活を送るソリューションを提供できる検査機関を目指す」と話し、繊維関連にとどまらない多様な評価技術や試験を提案する。

 2022年度上半期(4~9月)は、国内の衣料品や雑貨品の既存試験で厳しい状況が続いたが、L&H事業本部は「エコテックス」事業などが堅調な動きを見せた。中国は、上海でロックダウン(都市封鎖)の影響があったものの、全体では落ち込まなかった。インドも回復を示した。

 原燃料価格高騰など、試験にかかるコストも上昇基調が継続しており、各事業所で効率化や経費削減に取り組む。価格転嫁は容易でなく、「今後請け負う試験についての選択と集中を、覚悟を持って検討・対応」していく。新評価技術やフェムテック関連試験、リサイクルPET繊維判別試験などを強化する。

 SDGs(持続可能な開発目標)への寄与では、試験や薬剤などで地球環境により負担のかからない方法・薬剤への使用を推進する。これによってSDGsの目標達成への貢献を図る。

〈“品質パートナー”目指す/ボーケン〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、従来の試験業務に加え、品質支援業務の拡充を進めるなど“品質パートナー”としての役割を担うことを目指す。

 2022年度(23年3月期)から「未来に選ばれるボーケン」をテーマに中期経営計画がスタートした。吉田泰教理事長は「依頼企業のサステイナビリティーやウェルビーイングに関するニーズへの取り組み型解決、カスタマーサクセス実現を目指す」と話す。

 その中核となるのが品質支援事業本部。品質基準書の作成・管理や商品リスクチェック、品質表示の確認、工場の品質管理監査をサポートする品質支援業務、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みや人権を尊重した行動指針の作成と優先課題の特定、企業目標の設定をサポートするサステイナブル支援業務、取り扱い表示、機能性、試験方法などに関するセミナーなどを実施する教育支援業務を担う。

 そのほか、機能性事業本部は試験方法や評価基準に関する共同研究開発にも力を入れ、認証分析事業は、提携するSGSグループの環境・労働慣行に関するサービスと同機構の取引先にも提供するためのソリューション開発やプロモーションを推進している。