特集 環境(7)/有力繊維企業/環境負荷低減に向け技術とノウハウ結集/伊藤忠商事/豊島

2022年12月05日 (月曜日)

〈繊維の循環図る素材「レニュー」/衣料の回収から担う事業も/伊藤忠商事〉

 伊藤忠商事は、衣料の大量廃棄問題に焦点を当て、2019年春に「RENU(レニュー)プロジェクト」を発足し、使用済みの衣類や生産工程で発生する生地片などを原材料とするリサイクルポリエステル素材「レニュー」の展開を通じた課題解決に取り組んでいる。サーキュラーエコノミーの実現を目指し、化石資源の使用量の削減に貢献する。

 レニューについては、サプライチェーンのどの段階からでも参加できるように、糸・生地・製品を問わずに提供する体制をとっている。原料となる廃棄された繊維を分解・再重合といった化学的な工程によって再生し、従来品と比較しても劣らない品質を維持する。

 他の素材との組み合わせによる相乗効果の発揮も、大きな訴求材料になっている。

 ザ・ライクラ・カンパニーと展開する機能性ポリエステル「クールマックス」「サーモライト」の品ぞろえに加えることで、同社のグローバルなサプライチェーンへの展開も可能にした。吸水速乾性を備えたクールマックスと保温性に優れたサーモライトは、ペットボトルを活用していた「エコメイド」というシリーズを持つが、レニューとしても提案することで、サステイナビリティー対応の幅を広げる。

 レニュー・プロジェクトは、商品・ブランドへの展開だけでなく、繊維品が循環する仕組み作りにまで範囲を広げた。今春、資源循環型ビジネスを手掛けるecommit(エコミット、鹿児島県薩摩川内市)と業務提携契約を締結し、国内での繊維製品の回収サービス「Wear to Fashion」(ウェア・トゥ・ファッション)の提供を開始した。

 同サービスは、小売店で回収した使用済みの衣類、事業者から出される繊維廃棄物、自治体が回収する衣類などの再利用・再資源化を図る。再利用可能な製品はecommitのノウハウを生かしてリユースし、再生可能なポリエステル製品はレニューの原材料として活用する。廃棄される繊維製品を削減しながら、繊維・ファッション産業のライフサイクルの長期化を促す。

 伊藤忠商事は、10月に東京都内で開催された「第2回サステナブルファッションEXPO秋」に出展し、レニューを前面に打ち出すブースを設けた。23年秋冬向けの生地を多く出品する中、サーモライトのレニューの板わたやレニューのフリースが好評を得た。ウェア・トゥ・ファッションの紹介に対する反響も大きく、来場者からの問い合わせが相次いだという。

〈高校生とSDGsを学ぶ/修学旅行で漂着ごみ回収を体験/豊島〉

 豊島は10月、日本旅行と環境保護事業を行う縄文企画(沖縄県石垣市)との共同で、修学旅行で沖縄県・石垣島を訪れた高校生がSDGs(持続可能な開発目標)を学ぶプログラム「ツーリズム・フォー・トゥモロー~八重山ビーチクリーンプロジェクト~」の第1弾を実施した。豊島の漂着ペットボトルを繊維に再生するプロジェクト「UpDRIFT」(アップドリフト)を教育の題材にしながら、海岸での漂着ごみの回収を体験してもらった。

 アップドリフトは、河川や森林に散乱するペットボトルなどのごみを原料とする繊維のブランドで、趣旨に賛同した企業の時計やアパレル製品の素材に採用されている。

 ごみから繊維に再生させるまでの仕組みも発信し、共に循環システムの構築を目指す連携の輪を広げている。これまでにも、アパレル業界にとどまらず異業種や自治体からも賛同者を得てきた。

 石垣島でのSDGs学習プログラムも、こうした動きの中から生まれた。豊島、日本旅行、縄文企画の3社がそれぞれの強みを生かし、社会の未来を担う学生らが、環境問題を「じぶんゴト」として学べる機会を提供した。

 10月のプログラムに参加したのは、大阪府の帝塚山学院泉ヶ丘高校の2年生311人で、2日間にわたり石垣市・星野海岸でビーチクリーンを行った。生徒たちはビーチに漂着したごみの多さに驚きながらも、懸命にごみを拾い集めていた。その結果、同市が年間で処分する漂着ごみの量の1%に当たる約550㌔を回収できた。

 1日目はチームに分かれてビーチに漂着したごみを回収し、その後の仕分け作業にも取り組んだ。2日目は雨天のため、屋内でビーチの砂に含まれるマイクロプラスチックを抽出する作業と、事前にビーチで集めた漂着ごみの仕分けに当たった。

 時にはゲーム感覚も取り入れながら楽しさを持って活動した生徒たちは「1個でも多く拾いたい」「ビーチを奇麗にしたい」と美化に励んだ。中には「砂の中にあるマイクロプラスチックが集まってくる装置を開発できたらいいね」と話し合う声も聞かれ、環境保護について考察を深める契機にもなった。

 プログラムでは事前学習の一環として、生徒によるオリジナルデザインのポーチ作りも行われた。アップドリフトの糸を素材の一部に使用したものが配られる予定だ

 11月には第2弾も実施しており、継続した取り組みへと成長する兆しが芽生えている。