特集 抗ウイルス・清潔・衛生(2)/大和紡績/ダイワボウレーヨン/カケンテストセンター/QTEC

2022年11月25日 (金曜日)

〈大和紡績/ストーリーに沿った開発/環境、健康、安全がキーワード〉

 大和紡績は、「環境」「健康」「安全」をキーワードに研究・機能素材開発に取り組んでいる。特に「健康」では抗菌・抗ウイルスに力を入れる。

 SEK制菌加工「クリアフレッシュV」、SEK抗菌防臭加工「ミラクルセット」+防ダニ加工「ハルゼッケ」が新型コロナウイルス禍をきっかけに認知度が一段と高まり、寝装を中心に販売が拡大した。睡眠環境の改善は、日常の健康に直結するだけに、購入動機やシーンでも安定した清潔・衛生商品が好まれている。

 また、小中学生からSDGs(持続可能な開発目標)に親しんでいるZ世代やミレニアム世代にはサステイナブルストーリーに沿った安全・衛生商品の受けがいい。新商品のグレープフルーツ成分由来の抗菌防臭加工「シトラスガード」は、原料に廃棄物の有効利用(非可食のグレープフルーツの種子から抽出した成分)というストーリーも含めて、レディースインナーやマタニティーウエアなどのフェムケア分野で関心が高い。

 この傾向は他の機能素材でも表れており、シルクフィブロインによる保湿加工「アミノモイスト」の原料も廃棄物(生糸として使えないシルク成分)を使用にこだわっている。“日頃から身に着けるものだからこそ、消費者はこだわりの納得した素材を志向している。”ことが背景にある。

 今後も自社の強みと市場ニーズを融合した、研究開発・事業体制で新商品の開発を加速させる。

〈ダイワボウレーヨン/多彩な機能レーヨン/即効・強消臭もラインアップ〉

 ダイワボウレーヨンは、得意の練り込み技術を生かした多彩な機能レーヨンをラインアップする。清潔・衛生に焦点を当てた機能レーヨンも商品構成を整理し、分かりやすい提案を進める。

 このほど新たに「消臭レーヨンATL」をラインアップに加えた。汗臭(アンモニア、酢酸)に対応した消臭機能レーヨンであり、即効性と強消臭が特徴。洗濯耐久性も高く、洗濯100回後でも機能を確認している。

 抗菌防臭と消臭に加えてpHコントロール性も併せ持つ「パラモス」はマルチ機能への評価が高く、根強い人気がある。抗ウイルス性も付与した「パラモスプラス」も不織布用途限定で提案しており、衛材やワイピング材用途で採用に向けた動きがある。

 スタイレム瀧定大阪と連携して繊維分野での商品化に取り組んでいるのが、ソニーが開発したもみ殻由来の多孔質カーボン素材「トリポーラス」。レーヨンに練り込むことで抗菌・消臭機能を発揮する。廃棄物であるもみ殻を原料として利用することで、廃棄物の削減と有効利用につながるサステイナブル素材としても注目が高い。

 ダイワボウレーヨンが繊維化を担い、スタイレム瀧定大阪がテキスタイルにすることで商品化を進めている。

〈カケンテストセンター/顧客の要望に応じ存在感/防蚊性試験なども強化〉

 カケンテストセンターの大阪事業所生物ラボは、抗菌性試験や抗ウイルス性試験などを行っている。一時と比べると試験依頼数は落ち着いているものの、新型コロナウイルスや別の感染症が拡大した時にも納期などに対応できるよう体制を整える。それによって存在感を顧客に示す。

 生物ラボの2022年上半期(4~9月)の状況は、4月以降に抗ウイルス性試験や抗菌性試験、マスク関連試験が落ち着きを見せ、新型コロナ禍前の“雰囲気”に戻っていると言う。ただ、感染再拡大や別の感染症が発生して需要が増えた時にも顧客に迷惑がかからないように「確実に、早く対応できる体制」を整備する。

 今上半期は、アウトドア・キャンプブームもあって防蚊性試験の問い合わせが昨年の1・5~2倍に増えた。防蚊性試験は今年6月に国際規格「ISO24461」として発行された。日本では消費者向けに「防蚊」はうたえないが、海外向けを含めて需要はあるとして下半期以降も期待をかける。

 排水管の表面のぬめりなどに代表されるバイオフィルムの試験、ダニが物理的に通過できないようにした繊維製品の防ダニ性能試験などにも注目が集まる。藻類の付着・繁殖によって建造物の屋根や外壁が変色することがあるが、これに対応する防藻性試験も可能であるなど、さまざまな要望に応じる。

〈QTEC/選ばれ続ける検査機関へ/顧客独自の研究・開発も支援〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の西日本神戸試験センターは、顧客のさまざまな要望に応えられる体制を作る。納期や価格などへの要望があるが、中でも「顧客独自の研究・開発のサポートを強化する」とし、基礎研究に継続的に取り組むことで同センター自身の対応力を高める。

 同センターは、技術能力(抗菌・抗ウイルス分野)がISO/ICE17025に適合するほか、抗ウイルス性試験の開発やISO化に尽力。今上半期(2022年4~9月)の抗ウイルス性試験は、繊維に加え、プラスチック関連の依頼が多く、一定の数を維持した。抗菌性試験も底堅い需要を維持している。

 花粉やダニに由来するタンパク質などに関する試験にも乗り出した。「ISO4333:繊維製品上の花粉やダニ由来タンパク質等の減少度測定方法」の発行に伴って始動し、寝装・寝具や衣料品などに対応する。このISO規格は繊維評価技術協議会とQTECが共同で制定した。

 下半期以降も顧客の要望に細かく対応するが、増えているのが顧客の研究・開発をサポートする業務だ。中には「日本産業規格(JIS)だけでは評価できないモノがあり、その支援を行っている。一体となって試験の開発も行っている」と言う。そのためにも基礎研究が重要とし、選ばれ続ける検査機関になるため研さんを重ねる。