JFW―JC&PTJ特集(4)/ウイズコロナ時代の新たな取り組み/サンコロナ小田/カゲヤマ/名古屋紡績/宇仁繊維/豊島/高島織物工業協同組合/アルテックス/松原

2022年10月20日 (木曜日)

〈新たにリバティとの協業生地/サンコロナ小田〉

 サンコロナ小田(大阪市中央区)は2013年以来15回、PTJに出展している。従来のブライダルドレス市場への特化から、国内ファッション市場の開拓を図るのが狙いだったが、思惑通り新規顧客獲得が進んでいると言う。展示会での商談や顧客の反応を生地や製品サンプルの開発に生かすこともできている。今回も自社生地使いのブラウス、パンツ、ワンピースなどの製品サンプルを展示する。製品での受注も可能だ。

 生地のイチ押しは、東レの再生ポリエステル「&+」(アンドプラス)を原料にした分繊糸を交編したオーガンジ―風のトリコット。はさみでカットしても断ち端がほつれず、カールすることもない。

 ポリエステルとナイロンを染め分けしたシャンブレーカラーの色展開が魅力のビンテージオーガンジーも注目。ワッシャー加工によるナチュラルなシワの表面化とソフトタッチも特徴だ。

 リバティジャパン(東京都渋谷区)との協業による昇華転写プリント生地も、特設コーナーを設けて訴求する。

〈ラメ糸のタータン初披露/カゲヤマ〉

 カゲヤマ(兵庫県西脇市)は先染め綿織物で国内最大の生産地、播州に本拠を置く。播州からは今回唯一の参加企業だ。初出展した1998年以降、出展回数は20回以上を数える最古参の1社。日本と中国の2拠点で生地を作れることやトレンドを取り入れつつも少し変わったオリジナル柄を作る企画力が強みだ。

 23秋冬に向け、ラメ糸をアクセントに使ったツイルチェック生地を初めて提案する。落ち着いたタータンチェックの中に、経緯にラメ糸の細いラインが光る。金のラメ糸を使った1柄、銀のラメ糸を使った2柄、計3セットで展開する。カジュアルシャツやセットアップ用途を想定する。

 オーガニックコットンヤクウールは綾織りの生地で10色を展開。今でこそ認知度の上がったヤク混素材だが、同社は広くヤクウールが知られる以前からこの素材に注目して提案を続けている。保温性に優れる一方で蒸れにくく、軽い風合いと柔らかな肌触りが特徴。カジュアルシャツやパジャマへの使用を想定する。

〈多種多彩な表情持つニット/名古屋紡績〉

 名古屋紡績(名古屋市中区)はPTJで、多種多彩な表情を持つニット生地を中心に、自社ブランド「YARTE/GHT」(ヤーテイト)の浸透度を深める。独自の紡績ノウハウを最大限に生かし、生機の備蓄を行いながら顧客の需要に即応する強みを生かす。

 不規則なあぜ状の顔付きを持つ表地と、フラットな面の裏地で形成する綿100%ダブルフェース生地を軸に訴求を強める。独自の紡績技術を生かして作った太番手のむら糸を、特殊にカスタムした編み機で編み立てる。裏地は強撚糸を使いフラットに仕上げ、表地が持つ粗野な表情と対照的な印象を付与する。

 綿87%、ナイロン13%の裏毛起毛も打ち出す。表糸に綿・ナイロンのブークレーヤーンを使い、ランダムな凹凸(おうとつ)を形成。ドライタッチな風合いに仕上げた。裏地はループ部分に起毛を掛け、柔らかさとかさ高性をプラスした。

 出展は4回目。紳士アパレル向けの供給が多くを占めるが、エージレスな商品企画への参入も狙いながら、新規顧客の獲得を進める。

〈秋冬素材が充実/宇仁繊維〉

 宇仁繊維(大阪市中央区)は前身のジャパン・クリエーション(JC)含め、PTJに20年ほど出展を続けている。初出展の頃から十数年は同展で新規顧客を数多く獲得。「JC、PTJとともに宇仁繊維が成長したと言っても過言ではない」と言う。近年は新規獲得に苦戦していたが、新型コロナウイルス禍などによる社会情勢の変化の中、「かつてのように新規顧客が増えてきていることを実感している」と今回展にも期待を寄せる。

 同社は約3万5千種の生地を備蓄、あるいは即時に生産できる体制を整えており、今回展でも“超QR”機能をアピールする。

 フロッキープリントのシリーズを訴求する。表面変化のトレンドが強まる中、さまざまな素材にフロッキープリントを施した。小口の別注依頼にも対応する。

 ニードルパンチを施してウールのような膨らみと高級感のあるポリエステル・レーヨン・アクリルの三者混丸編み地も秋冬向けのイチ押し生地。見た目は織物のようだが、軽さと着心地に優れ、イージーケア性もある。

〈廃棄予定の食物を染料に/豊島〉

 豊島はPTJで、廃棄予定の野菜や農作物に含まれる成分をもとに染料として活用する「フードテキスタイル」を紹介する。アパレルや服飾雑貨に加え、ユニフォームやインテリア向け資材など非衣料分野にも参入。数多くの導入事例を持つ。

 これまではニットが多かったが、布帛も充実してきた。取り扱い可能な原料も綿を中心とした天然繊維からナイロン、ポリエステルまで拡充。50種類以上の食品から500種類以上の色数で染色が可能だ。染色工程で独自技術を施すため、染色堅ろう度も基準を満たしている。

 インビスタジャパンの高強力ナイロン「コーデュラ」をフードテキスタイルの染料で反染めしたニット・布帛生地も展示。合繊メーカーとの協業も進み、多用途への転用が見込める。

 より進化したB2Bプロジェクトとして「ユアフードテキスタイル」も打ち出す。コーヒーショップが持ち込んだ抽出後の粉を染料のもとに、雑貨やユニフォーム地などにするといった例を参考に、協業の幅を広げる取り組みもアピールを図る。

〈知名度アップと実売狙う/高島織物工業協同組合〉

 高島綿織物産地の高島織物工業協同組合はJFW―JCを、以前開催していた産地総合展「ビワタカシマ」の東京展と位置付けている。複数の織布企業と染色加工場の共同ブースを設置し、東京地区、全国の顧客との関係深耕、産地内情報の共有と産地外の情報収集、実商売に向けた営業活動を進める。

 同産地には「高島ちぢみ」という地域ブランドと、「高島帆布」という登録商標のブランドがある。これらの知名度向上もJFW―JCに継続出展する目的の一つだ。

 高島晒協業組合という染色加工場があることで、撚糸、生地、染色加工までの一貫体制も構築しており、同加工場や産地周辺には縫製機能もある。

 坂尾織物の綿76%・ウール24%の鬼楊柳は、ウール混により夏場だけでなくオールシーズン使える楊柳として人気を博しそう。

 本庄織布が出品する綿100%の2重織り「高島ちぢみ」は厚みとシャリ感を共存させた独特の風合い。さまざまな用途での採用を狙う。

〈スポーツ開拓へ機能素材/アルテックス〉

 ミセスゾーン向けの別注プリントが主力の生地商社、アルテックス(京都市)は保湿性などに優れる「アルガンベール」、機能性中わた「J―サーモ」をメインに打ち出す。今回で5回目となるPTJ出展だが、同展を通じて新規顧客を開拓してきた。今回展ではスポーツコーナーを設けてゴルフやヨガなどスポーツアパレル向けの開拓を見込む。

 アルガンベールはアルガンオイルを使用した後加工品で、保湿性、吸放湿性、抗菌防臭性などを持つ。採用した製品も売れており、リピート受注につながっている。これにプリントやオパール加工を施した生地なども訴求する。J―サーモは製品として販売するが、消費者から直接、その機能性を評価されることから、さらに拡大を図る。

 スポーツコーナーでは2素材に加えてプリント地の裏起毛品やナイロンの転写プリントも打ち出す。ナイロンの転写プリントはタフタ、ストレッチタフタ、ハイテンション使いをそろえた。さらに、共同印刷が開発した蓄熱機能ペレット練り込んだ繊維によるプリント地も打ち出す。

〈ボトム素材の企画力に定評/松原〉

 松原(大阪市中央区)は2012年以来PTJ秋冬展に11回出展。ボトムに特化した商品企画力に定評がある。ファッションアパレルに加え大手スポーツメーカーの引き合いも増えており、要望の多い高機能性とファッション性を両立させた商品開発に取り組んでいる。

 例えば「フェーク・ダブルクロス・2ウェー」は2重織りのような肉感と膨らみ感が特徴の綾織地。ポリエステル100%ながらスパンデックス混並みの高い伸縮性も持ち、ハリ感で美しいシルエットも実現する。

 「アシモト・イージー・タフタ」は人気素材「アシモト・イージー・フィット・ツイル」のタイプライター版。表情感と超軽量性で、シャツから要尺の多いワイドシルエットまで幅広いアイテムへの展開が可能だ。

 現在は同展絡みの売り上げ比率が約3割と出展を重ねるごとに成果を上げ、「既存得意先の当社へのイメージを変化させて年々商売が深まる」状態という。アパレルの商品開発の再開で新素材への期待も肌で感じる。「期待に沿った、感動を覚えてもらえる新素材の提案を進めたい」と意気込む。