東レ 繊維事業本部/鍵は「ナノデザイン」/新機能・新触感の開発加速

2022年10月20日 (木曜日)

 東レの繊維事業本部は2022年度下半期(22年10月~23年3月)の重点戦略の一つとして独自の革新複合紡糸技術「ナノデザイン」による開発を加速させる。繊維事業本部長である三木憲一郎常務執行役員は「市場環境が変化する中、新機能・新触感の開発が一段と重要になる。その鍵となるのはナノデザイン技術」と強調した。

 ナノデザインは、合成繊維の繊度や形状をナノスケールレベルで制御する独自の複合紡糸技術。従来の紡糸技術では難しかった複雑な形状や精細な分割、複数のポリマーの組み合わせなどが可能。これにより従来は存在しない機能、既存の合繊や天然繊維を超える触感、低環境負荷原料の使用拡大などの実現が期待される。

 三木常務執行役員は、市場においてZ世代(1990年代中盤~2010年代序盤生まれ)の存在感が高まる中で「社会課題の解決が消費者の満足度につながる時代になりつつある。その中で『素材が世の中を変える』という流れも強まる」と指摘。新たなニーズに応える素材開発の鍵を握る技術としてナノデザインを挙げる。同社は今期が3カ年中期経営課題の最終年度だが、「次の中期経営課題でもナノデザインが大きな役割を担うことになる」との考えを示した。

 そのほか、原燃料高騰に対して引き続き価格転嫁による採算改善に取り組む。上半期に値上げによる転嫁を進めたことで原料価格上昇分の70~80%は転嫁できたが、「ここに来てエネルギー価格上昇や円安による調達コスト増加による打撃が大きくなっている」。このため、さらなる価格転嫁に取り組む。

 新型コロナウイルス禍で混乱したサプライチェーンの最適化も今下半期の課題に挙げる。特に需要が高まる再生ポリエステルなどは環境配慮型素材のサプライチェーン構築に取り組む。「グループで原料チップから縫製品まで扱う一貫型ビジネスの強みを発揮する」ことを目指す。不織布も長繊維不織布と短繊維不織布を共に扱う総合メーカーとしての立ち位置を一段と強める。

 上半期(4~9月)の商況に関しては、産業資材分野で自動車関連が自動車生産台数減少で厳しかったものの、衣料分野を中心に新型コロナ禍による落ち込みからの回復が進んだ。特にスポーツ・アウトドアなどの用途が堅調。グローバルアパレルへの素材販売も拡大している。このため「ようやく新型コロナ禍から抜け出し、明るい先行きが見えてきた」との認識を示す。