豊島/ソサエティ5・0実現へ/サステ素材開発やDX進化

2022年10月05日 (水曜日)

 豊島は「ソサエティ5・0」を実現するための取り組みを進め、ライフスタイル提案企業を目指す。サステイナブル素材や機能素材の開発によるSDGs(持続可能な開発目標)の推進に加え、デジタル技術で企業を変革するDXの活用や促進に引き続き力を入れる。今期(2023年6月期)は売上高1800億円、経常利益60億円を目標に掲げる。

 ソサエティ5・0は日本が提唱する、IoTなどのデジタル革新によって経済発展と同時に社会課題の解決を目指す未来社会のコンセプト。この実現に向けて同社は繊維にとどまらないライフスタイル商社への歩みを進めており、衣料品以外の売り上げや異業種との取引を増やしてきた。

 今後の取り組みとしては、繊維素材部門ではトレーサビリティーにこだわった素材や独自素材の取り扱い強化で国内外の販路拡大を目指す。繊維製品部門はDXの取り組みを進化させ、社会の変化に対応したライフスタイル商材を提供し、異業種への拡販やD2Cビジネスにも活用する。全部署に3DCGによる提案ができる人材も置いた。

 輸出も強化する方針で、素材、製品の両軸で展開する。同社の生地や原料を含めたモノ作りの背景を生かすことで、中国や欧米、中東向けを狙う。豊島半七社長は「当社は輸入が基本のため為替で業績が左右されやすい。リスクヘッジも込めて輸出に真剣に取り組みたい」と話す。

 コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を通じた出資事業も継続。これまで24社に出資しており、スタートアップ企業との協業が進んだ。出資先との取引による売上高は10億円に到達。CVCによる出資は今年で6年目を迎え、「成果として現れるなど方向性が見てきた」と述べ、今後も注力する。

 今第1四半期については、製品部門は一定の受注があるものの、価格転嫁しづらい状況は継続。素材部門は綿花相場が不透明な状況が続いているほか、国内の織布工場の生産スペースが埋まっており受け渡しができていない。「今後も素材は低調が続きそう。製品は円安など輸入コスト高が懸案事項だ」と話す。

〈3期ぶり増収も大幅減益/22年6月期単体〉

 豊島の22年6月期単体決算は売上高1920億円(前期比5・9%増)、営業利益41億2100万円(46・6%減)、経常利益57億1300万円(36・7%減)、純利益53億8900万円(38・2%増)だった。3期ぶりの増収だったものの、物流費や原料費の高騰、円安の進行でコストアップを転嫁できず減益だった。純増益だったのは過年度の税金の戻しによるもの。

 繊維素材部門の綿花は相場の高騰が影響し苦戦を強いられた。原糸は相場高騰に加えて、ウールの国内需要の回復、北陸向けの合繊長繊維糸の拡販、三国間輸出の増加で堅調に推移。生機・加工反は加工反輸出が好調に推移し、リネンサプライ向けの販売も増加したものの、切り売り向けが反動減となった。同部門全体では増収、大幅減益だった。

 繊維製品部門はスポーツカジュアルや生活雑貨向けの販売は堅調だったが、主力とするカジュア向けが苦戦したほか、これまであった医療関係の需要も落ち込み減収となった。原料や為替などのコスト高に加えて、生産国でのロックダウン(都市封鎖)による納期遅延もあり大幅減益だった。