不織布新書22秋(3)/東レ/旭化成/東洋紡/ユニチカ
2022年09月30日 (金曜日)
〈高機能化に重点置く/東レ〉
東レは不織布事業の「高機能化」(安東克彦不織布事業部長)に重点を置く。その一つがPPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維と耐炎繊維の複合による「ガルフェン」で、航空機用シートに採用されているが、PPS繊維やフッ素繊維のショートカットファイバーによる湿式不織布もそれに当たる。
この湿式不織布は耐熱性や耐薬品性、さらに緻密で薄いなどの特徴を生かし、絶縁材料や膜基材などでの販売を見込んでおり「2025年には一定規模に育てたい」考えだ。
ポリプロピレン、ポリエステルによるスパンボンド不織布(SB)でも高機能化、差別化を図る。韓国、中国、インドネシア、インドで生産するポリプロピレンSBは紙おむつ用が主力で、韓国、インドネシア、インドでの生産販売は「堅調」ながら、最も規模が大きい中国拠点は出生率の低下とSB供給量の増加で苦戦する。
それもあって、滋賀事業場(滋賀県大津市)に導入する開発設備を活用しながらソフトな風合いなど差別化品の開発を進め、トップゾーン向けの開拓に重点を置く。また、開発設備は紙おむつ用以外の開発にも取り組む。
ポリエステルSB「アクスター」はフィルター向けが主力だが、これもアクスターのプリーツ性を生かした差別化品。21年6月の増設設備もフル稼働するなど順調に拡大する。低目付品での開発も着実に進んでいると言う。
〈フィルターで倍増目指す/旭化成〉
旭化成はポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンのスパンボンド不織布(SB)、キュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」などを生産販売する一方、「ユーテック」シリーズという、各種不織布を使用したフィルター製品ビジネスに力を入れる。4月からスパンボンド事業部に移管されたフィルタ営業部が担当するが、素材ではなくカートリッジフィルターや装置を販売する点に特徴がある。
今後は既存分野での海外販売(現在は全体の5%弱)を拡大するとともに、環境配慮型ビジネス、マイクロフィルターを強化し、2030年度には21年度(22年3月期)に比べ売上高倍増を計画するが、「倍増は通過点。さらに拡大を目指したい」と松本晃治フィルタ営業部長は意気込む。
ユーテックはメルトブロー不織布など極細不織布やSB、その他不織布を使用したカートリッジフィルターで、装置でも販売する。特に石油化学・石油精製などにおける油水分離ではトップシェア(同社推定で約40%)を持つ。ユーテックを使用することで品質向上、コスト低減につながる。その他、固体・液体分離の精密ろ過分野、気体・液体分離のミスト除去も手掛ける。
リサイクルや生分解などの製造設備に対応した環境配慮型ビジネスは基礎技術をほぼ確立済みで、海外先行も国内でも実績が出来つつある。既存分野では石化プラント向けで海外開拓が進む。
〈新SB開発で用途開拓/東洋紡〉
東洋紡はポリエステルスパンボンド不織布(SB)で「当社ならではの商品の開発に力を入れる」(西阪剛志参与スパンボンド事業部長)方針だ。不織布マテリアル事業開発部や総合研究所(滋賀県大津市)と連携しながら新SBを投入し、今までにはない用途を開拓する。
国内の敦賀、岩国事業所で生産するポリエステルSBは開発品も含めた差別化品を中心として、汎用品は海外の協力企業でのOEM生産にシフトする戦略で、事業規模の拡大を図る。
ポリステルSBはその他の機能材とともに2023年4月1日に事業を開始する三菱商事との合弁会社、東洋紡エムシーに移管されるが、三菱商事の海外ネットワークも生かして、海外販路の開拓にも期待する。
同社のポリエステルSBは自動車資材、土木建築資材を主力とする。土木建築資材は順調ながら、自動車資材は自動車の減産の影響を受ける。22年度下半期(9月~23年3月)は自動車生産に「明るさが見え始めており、下半期の販売量としては新型コロナウイルス禍以前に戻したい」と期待する。
〈高付加価値品の開発強化/ユニチカ〉
ユニチカはポリエステルスパンボンド不織布(SB)や綿100%スパンレース不織布(SL)で「既存の原反販売だけでは今後の成長はない」(吉村哲也上席執行役員機能資材事業本部副本部長兼不織布事業部長)とし、差別化品や加工品など高付加価値化に力を入れる。
同社はポリエステルSBを国内とタイ子会社のユニチカ・スパンボンド・タイランド(タスコ)で生産販売するが、芯鞘構造の熱成形用「マリックスAX」、異型断面と太繊度糸で剛性や通気性を持つ「ディラ」など差別化SBは販売が堅調。これらに続く独自SBの開発に力を入れる。
同時に、避けて通れないのがサステイナブルとして、再生ポリエステル製「エコミックス」、ポリ乳酸製「テラマック」など環境対応型SBも強化する。先ごろ、ポリエステルSBで「エコテックススタンダード100クラス1」認証も取得した。
同じくクラス1認証を取得する綿100%SL「コットエース」は医療衛生用品、化粧雑貨、制汗シートなどが主力だが、コンクリート養生用の湿潤養生シート「アクアパック」を開発するなど産業資材用途も強化する。