ジーンズ別冊22AW(10)/Japan Brand/産地との好循環を生むジャパンデニム/新型コロナ禍でも商談数が増加

2022年09月28日 (水曜日)

 国内発の産地ブランド「ジャパンデニム」は、今年2月にイタリアの服地見本市「ミラノ・ウニカ」に出展し、約200件の商談を行った。ミラノ・ウニカの会期は前回から1日短縮し、2日間開催となったものの、ジャパンデニムは前回を上回る取引実績となった。見本市の開催前に問い合わせが複数あるなど、欧州バイヤーに対する知名度も高まっている。

 パンデミック直前となる2020年2月開催のミラノ・ウニカでは、177社との商談を実施していた。商談数が増え、ジャパンデニムに対する評価について「数字が物語っている。需要は高い」と話すのは、ジャパンデニムのプロジェクトを担当するアクセ(広島県尾道市)の高垣道夫専務。オンラインで商談を継続してきたほか、日系商社の欧州ショールームに生地サンプルを展示。パンデミック下でも「実行できることがある」とした。

〈欧州で高評価、事業者も増加〉

 ジャパンデニムは、セレクトショップ「パリゴ」を運営するアクセがプロジェクトを監修している。備中備後エリアに点在する国内有数のデニム産地企業を「世界に知らしめる」ため、産地ブランド「ジャパンデニム」は誕生した。国内外へ積極的に出展、販売し、よりリアルな声を吸い上げているのも特徴だ。

 アクセが旗振り役を務めることで、小売り目線のビジネスを推進。マーケット性やトレンド、世界各国におけるジーンズ需要を探っている。2019年3月からはファッションデザイナーやジーンズブランドと協業した製品の販売をスタートした。現在、ジャパンデニムに参画する事業者は約30社に拡大。カイハラ、篠原テキスタイル、クロキ、山陽染工、豊和、坂本デニム、吉和織物、大江被服、西江デニムなどが名を連ねている。

 高垣専務によると「欧州ではイタリア、ドイツ、スペイン市場で手応えがある。品質や風合いに加え、サステイナブルな点でも評価を得ている」とした。環境保全に配慮した生産工程も特徴で、各事業者はデニム生地の生産や製品を展開する上で、エコ染色や省ボイラーシステムの導入、排水処理、水使用量の削減といった取り組みを実践している。製品には、ラベルに配した2次元コードで事業者情報を開示している。

〈製品でロングセラーも〉

 製品については、大江健デザイナーが手掛ける「コーヘン」と協業したカラーレスのデニムジャケットがロングセラーになっているほか、22秋冬シーズンでは「マーカウェア」が打ち出すボリューム感のあるマウンテンパーカ、「アンドイエロー」による繊細なチェーンを生地に織り込んだジーンズを販売する。デザイン感の強いジーンズや分量感のあるデニムジャケット、プリーツやラッフル仕様のトップスも評判が良い。商業施設「ギンザシックス」(東京都中央区)に出店した「ジャパンデニム」の旗艦店も堅調で、限定商品や定番アイテムが動いている。9月には秋冬商品がそろい、デザイナーとの協業商品も展開されている。

 今後について、生地ではミラノ・ウニカに出展し、製品では海外への卸事業を強化。国内の旗艦店ではインバウンド客を開拓する。徐々に生地と製品の取引量が増え、国内サプライヤーへの波及効果も出てきた。協業したデザイナーが別の仕事で産地企業に依頼するケースも増え、好循環も生まれつつある。