特集 アジアの繊維産業(14)/カケンテストセンター/中国軸にアジア全体で成長

2022年09月28日 (水曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は、2022年度(23年3月期)に中期経営計画の最終年度を迎えた。海外事業の強化を施策の一つに掲げているが、21年8月にインドベンガルール試験室で業務を開始するなど、計画を着実に進めてきた。今後も中国を中心としつつ、各国の拠点を強化して海外全体で成長を図る。

〈中期経営計画は着実に進展〉

 中国やインドネシア、ベトナム、タイ、バングラデシュ、インドなどに拠点を持つカケン。推進中の中計では海外拠点(タイ、インド、バングラデシュ)の事業強化などを掲げ、インドベンガルール試験室の業務開始やバングラデシュ試験室の増員に取り組むなど、成果を上げた。

 各国拠点の動向を追うと、中国は新型コロナウイルス感染症対策のための都市封鎖(ロックダウン)があり、上海科懇検験服務などで休業を余儀なくされた。ただ、無錫試験室や青島試験室などがカバーし、影響はある程度抑えられたと言う。南通では猛暑による計画停電といった悪影響があった。

 2021年は厳しかったベトナムは、ウイズコロナに政策が転換したこともあって好調に推移し、カンボジアからの依頼も戻りつつある。タイは今年に入ってからは復調基調。業務開始1年のインドはネームバリューをいかに向上するかになるとした。インドネシアは厳しさが続いた。

 今後も中国は重要拠点として欠くことができないとしつつも、サプライチェーン分散の流れもあることから「どの国・地域に生産が移っていくのかをしっかりとウオッチする」。中でもベトナムがチャンスとみるが、バングラデシュなども継続強化。同国ではスピード化やアフターケアの充実に重点を置く。

〈上海科懇南通分公司/顧客の要望に応じる〉

 上海科懇南通分公司は、2014年に営業事務所としてスタートを切り、16年に試験室となり、2年後に10周年を迎える。当初は混用率をはじめとする一般的な試験を行っていたが、20年に紫外線遮蔽(しゃへい)、22年に接触冷感の試験を始めるなど、顧客の要望に応えるべく“できること”を増やしている。

 22年度上半期(22年4~9月)は、ロックダウン(都市封鎖)の影響で4月に臨時休業を余儀なくされたものの、5月以降は前年並みで推移。「ロックダウンを除けば大きな落ち込みはなかった」とし、「今後も何が起こるか分からないので、少しでも短い納期での対応」を心掛けると話す。

 顧客の要望には積極的に応じる。その一環として人員の整備を行い、「必要ならば増員も検討」する。同時にスタッフの教育にも取り組む。どのような試験が求められるかを見極めていきたいとした。中でも最も重要視されるというスピードアップには継続して力を入れる。

 中国国内でも注目されているCSR監査は、1人体制で対応している。

〈バングラデシュ試験室/新型コロナ禍前の3倍に〉

 バングラデシュ試験室は、バングラデシュの首都、ダッカに立地している。2015年に進出して以降、「日本人の駐在員を置くまでは試験依頼は少なかった」が、駐在員が3人体制となった22年は「新型コロナウイルス禍前の3倍になっている」と言う。試験室の認知度が高まったことなどが奏功している。

 駐在員は19年に1人、20年に1人、22年に1人と順次増やした。染色堅ろう度や物性、ホルマリン、混用率などの試験に対応するほか、各種分析や製品検査などにも応じている。国際標準化機構(ISO)に基づく試験にも対応する。新型コロナ禍の影響を受けたが、21年9月から回復基調に入っている。

 今後はスピードアップやアフターケアの充実、知名度のさらなる向上で成長を図っていく。日本向け工場のCSR監査はまだ少ないが、将来的に増える可能性があるとして注視を続ける。

 日本語が話せるスタッフの拡充など、人材育成も大きな課題とし、試験方法や染色堅ろう度の知識、報告書の見方に関する勉強会も開いている。

〈インドベンガルール試験室/営業活動強化で仕事増やす〉

 カケンは、2021年8月にインドベンガルール試験室の試験業務を開始した。日本人スタッフが2人常駐し、試験に関する問い合わせなどに日本語で対応できる。立ち上げから約1年のためまだ知名度は高くなく、近隣からの依頼が中心と言う。今後はより広い地域からの仕事が取り込めるよう、営業活動を強化する。

 グローバル検査機関であるモダン・テスティング・サービス〈グローバル〉(MTS)のインド法人と提携して試験業務を行っている。染色堅ろう度や物性試験、混用率試験、製品試験(耐洗濯性試験など)といった試験に応じている。「問い合わせは入るが試験依頼はまだまだ少ない」とし、知名度向上に力を入れる。

 現在対応可能な試験だけでなく、実施できる試験を増やすことで納期の短縮を図るほか、提携先との連携を深めて試験設備の増強なども進めたいとしている。

 試験方法の説明や日本で求められる試験の種類、報告書の見方などに関するセミナーの開催も充実する方針で、講師の育成にも注力する。