北陸ヤーンフェア(5)/出展者の見どころ/増井/豊島/モリリン/ヤギ

2022年09月27日 (火曜日)

〈豊富なサステ糸訴求/生地の備蓄販売も開始/増井〉

 増井(大阪市中央区)はサステイナブル糸をメインに出品する。その一つが長年取り扱ってきたレーヨン長繊維。天然パルプ原料で、生分解性を持つ点を改めて訴求する。ナイロン長繊維との混繊糸で接触冷感性を高め、UVカット性もある「アイスインパクト」も新たに開発。インドネシアのビルラ製レーヨン短繊維使いの「ボルテックス」紡績糸の「リバエコ」も新提案する。

 ポリエステルではペットボトル再生の「エコリンク」とその先染糸シリーズ「ミコルトーン」を前年に引き続き訴求する一方、エコリンクを使用した丸編み地も初披露する。100%使い、ベア天竺の6品番を生機、プリント下地で備蓄販売する。吸水速乾加工も施し、スポーツ、インナーなど向けに提案する。ペットボトル再生ではフルダル十字断面糸でUVカット、遮熱性、吸水速乾性、透け防止などを持つ「ルクール UVα」も新投入。これも生地販売を行う。

 ウズベキスタン綿糸「サマルカンダリア」は10月からロゴを一新する。ウズベキスタン政府と基本合意書を結び、同国綿糸の販売拡大の一翼も担う。糸売りに加え、丸編み地も備蓄販売し、年内には自社サイトでTシャツ、パーカ、タオルなどのECもスタートする。8月には首都のタシケントに駐在員事務所を開設。日本人技術者を送り込み、付加価値の高い綿糸の技術開発も行う。

〈機能性重点に提案/難燃性や冷却性などPR/豊島〉

 豊島は機能性に重点を置いた商品を出展する。合繊を中心に難燃性や冷却性、ストレッチ性など多彩な機能をアピール。天然繊維の素材も充実しており、和紙やオーガニック綿の糸も訴求を図る。

 モダクリル繊維を使用した難燃生地「アグニノ」は素材自体が難燃性を持っているため、繰り返しの洗濯でも難燃機能が持続。万が一、火に触れても炭化して自己消火する。火が燃え広がりにくくやけどなどから人体を保護することにも役立つ。

 高い難燃機能を維持したまま異素材との複合も可能。綿やセルロース系繊維との組み合わせは通気性や吸汗性を高め、快適な着心地を実現。アウトドアやキャンプに加え、カーテンなどインテリア向けにも提案する。

 通常のナイロン糸に比べて2倍の公定水分率を保持する親水性ナイロン冷却糸「オプティマクール」やポリブチレンテレフタレートを使ったストレッチ糸「スーパーフレックス」、廃棄綿布を原料とするリヨセル繊維「テンセルリフィブラ」も並べる。

 天然繊維では、世界初の製法で生み出す和紙糸「ワガミ」を提案。国内の製紙工場で極薄かつ均一にすき上げた原糸を細くテープ状にスリットしながら、世界に一台しかない和紙糸製造装置でダイレクトに撚りをかける。大量生産が可能で価格も抑えた。トルコ産トレーサブルオガーニック綿「トゥルーコットン」も提案する。

〈環境配慮型素材を軸に/再生原料・脱炭素が鍵/モリリン〉

 モリリンは“再生原料”や“脱炭素”をキーワードにした、環境配慮型の素材を軸に提案を強化する。原料の出自や再生方法、生産工程を図解などで分かりやすく伝える。

 エコ原料由来では再生PET原料から作られる「エコメイド」シリーズを打ち出す。生産時に排出するCO2の8割近くを減らす。吸水速乾性の「クールマックスエコメイド」と保温性の「サーモライトエコメイド」の混合で、背反した機能を両立できる。

 リファインバースグループ(東京都中央区)が廃棄対象の漁網を回収し、再生したナイロン「リアミド」も注目度が高い。スパン糸からフィラメント糸までそろえ、衣類や生活雑貨以外に資材向けにもアピールを図る。

 脱炭素型素材としては「テンセル」リヨセルと「テンセル」モダールを軸に据える。NGO「カーボンニュートラル」の基準にのっとり、生産から流通までCO2の実質排出ゼロを実現。長繊維の「テンセルリュクス」も披露する。

 テンセルモダールに特殊なインディゴ顔料を練りこむ原着技術を使った「アクアライズ」もそろう。染色や洗い加工に使用するエネルギーや化学薬品、排水の大幅な削減につながる利点を持つ。

 吉田伸マテリアルグループ統括部長は「モリリンが独自に供給できるメリットの周知を深めたい」と話す。

〈バリエーションを披露/〝環境配慮型”中心に/ヤギ〉

 ヤギは祖業である綿糸、福井支店を軸に展開する合繊糸のいずれでも糸種のバリエーションを訴求する。引き合いが強まる環境配慮型を中心に、さまざまな番手、糸加工を取りそろえる。

 同社の出展は3年ぶり。合繊糸については「北陸産地の多数の協力工場の力添えにより、多種多様な糸加工の背景を構築してきた」と産地との取り組みを強調する。祖業である綿糸では、いち早くオーガニックコットン使いの備蓄販売に着手し、実績を積んでいる。「展開商材を紹介することによって、新たな素材開発につなげたい」と意気込む。

 「ナチュリール」は、工場内で発生するくずを再生した「グリーンラベル」、使用済みペットボトルを原料とする「ブルーラベル」で展開する。多様な糸加工により、さらなる付加価値化も進展しており、国際認証「GRS」も取得済み。

 ポリエステル100%の高次加工糸「ベルモット」は杢(もく)調で天然繊維ライクな見た目。特殊混繊加工による膨らみ、柔らかな風合い、軽量感も特徴で、ペットボトル再生原料での依頼にも対応する。

 オーガニックコットン糸の総称ブランド「ユナ・イト オーガニック」では国際認証「GOTS」を取得。太番手から細番手まで備蓄し、ストレート、むら形状、極甘撚りなどラインアップも拡大中。反毛による再生コットンの糸も提案する。こちらもGRSを取得している。