タイ東レグループ/新規用途拡大が加速/インド市場の開拓強化

2022年09月20日 (火曜日)

 タイ東レグループが、新規用途拡大を加速させている。新型コロナウイルス禍によって主力商材の一つであるシャツ地や裏地の需要が大きく落ち込むなど市場環境が激変する中、強みを生かす分野や用途への転換が進む。

 同グループの各社とも2022年度上半期(4~9月)は業績が回復基調。合繊長繊維製造のタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)は、衣料用ナイロン長繊維が主力のインナー向けでインバウンド需要減退が続き苦戦しているが、再生ナイロンを活用した輸出拡大に取り組んだ。

 衣料用ポリエステル長繊維は仮撚り加工糸(DTY)が有力アパレルとの取り組み拡大で好調。再生ポリエステル「&+」(アンドプラス)使いの採用が拡大した。

 産業用ナイロン長繊維は漁網向けが低迷するが、そのほかの受注は回復傾向に。エアバッグ原糸はタイの自動車生産台数減少の影響を受けたが、エアバッグ以外の用途開拓に取り組み、シューズ用縫製糸など新規開拓で成果が出た。

 紡織加工のトーレ・テキスタイルズ〈タイランド〉(TTT)も前期の営業赤字から回復しつつある。原燃料高騰を受けて値上げなど価格転嫁を進めたことで7月から単月で黒字化、通期でも黒字浮上する見通し。

 短繊維織物事業は主力のポリエステル・綿混シャツ地の需要が落ち込んでいることから生産規模を適正化し、アパレルとの取り組み型商材への特化を進めた。ポリエステル短繊維織物も中東民族衣装向けで不採算品から撤退して、高級ゾーンへのシフトを強める。さらにインドの民族衣装など新規用途開拓を進めた。

 ポリエステル長繊維織物事業は、苦戦が続く裏地向けで高級ブランド向けへの特化を進めた。表地向けは大手SPAからの受注が堅調に推移したほか、スポーツ用途もメガブランドへの販売が拡大した。こちらも再生ポリエステル使いが好調だ。

 ニット事業も順調。自社の丸編み地だけでなく、協力工場の活用で経編み地なども拡大し、タイ国内でプリント加工や縫製することで短納期対応力を追求するなど重点的に取り組む。

 エアバッグ基布事業は原料高騰で採算が悪化していたが、徐々に価格改定の効果が出始めている。こちらもインド市場の開拓を進め、将来的には増産も視野に入れる。基布製造技術を生かし、ゴム資材用ポリエステルコード織物など新規商材にも取り組み成果が出ている。

 在タイ国東レ代表の松村正英執行役員トーレ・インダストリーズ〈タイランド〉社長は「新型コロナ禍で事業環境が変化する中、用途や販売先の拡大が重要になる」と話す。このため今後もインド市場の開拓などに重点的に取り組む。サステイナビリティーやカーボンニュートラル、人権・労働環境を重視した事業運営にも力を入れる。