特集 商社原料・テキスタイルビジネス(2)/豊島/東洋紡せんい/帝人フロンティア

2022年09月14日 (水曜日)

〈豊島/合繊などで機能性提案/環境配慮などサステも注力〉

 豊島は天然繊維から合繊までの多種多様な原料をそろえる。近年では合繊をはじめとした機能性の打ち出しを強化しており、糸や生地などで展開。引き続き綿を中心としたサステイナブルな商材の提案も進める。

 綿やウールだけでなく、ポリエステルやナイロンといった幅広い原料を取り扱っており、ネットワーク力を生かし世界各国から調達する。顧客のニーズに応えつつ、最終製品を見据えたオリジナルの糸や生地を国内へ供給する。

 綿を中心に天然繊維の展開を進めてきた同社だが、最近では多彩な機能をうたった合繊の提案に力を入れている。企業ステートメント「マイウィル」に新たなカテゴリーとして、「ファンクショナル」も加えた。

 親水性ナイロン冷却糸「オプティマクール」や、繊維原料に極小セラミックの粉末を配合した蓄熱機能素材「セルフレイム」、体の動きに合わせたストレッチ性をもたらす「ハイパーヘリックス」といったさまざまな素材をそろえ、多様な用途への提案を図っている。

 サステイナブルな商材としては、以前から販売を進めてきたトルコ産のトレーサブルオーガニックコットン「トゥルーコットン」が代表商品の一つ。時代の流れから近年は特に認知度が高まっており、採用実績は着実に増えている。

 廃棄予定の食材を染料に活用する「フードテキスタイル」も同社のサステイナビリティーに欠かせない。同社は“ライフスタイル商社”を掲げ衣料に限らず生活全般に向けた提案を進めており、フードテキスタイルは雑貨やインテリア向けに開拓が進む。

〈東洋紡せんい/アパレルに直接提案/マレーシアの開発機能も強化〉

 東洋紡せんいは、原糸販売でアパレル・流通への直接提案による新規取引拡大を進めている。特殊原料や特殊紡績技術を活用した差別化糸に評価が高い。今後は紡績設備再編に合わせてマレーシア子会社での開発機能も強化する。

 同社の2022年度上半期(4~9月)の原糸販売は堅調に推移している。主力のアウター、インナー向けの需要が回復していることに加え、大手GMSやインナーアパレルへの直接提案による取り組み型の糸販売が拡大した。

 特に再生ポリエステルやオーガニックコットンなど、特殊原料に特殊紡績技術を組み合わせた機能糸の販売が拡大した。同社は長年にわたってインドの大手紡績と連携し、オーガニックコットンを調達してきた。そうした信頼性も強みとなっている。

 同社では引き続きアウターやインナー向けの既存取引先を重視しながらも、大手インナーアパレルへの直接提案を進める。特に定番アイテムの原料に採用されることを目指す。そのため現在、綿100%の新商品開発を進めている。11月に行う自社展示会で披露する予定で、通年素材として提案する。

 また、東洋紡の富山事業所の井波工場(富山県南砺市)と入善工場(同県入善町)の紡績設備が24年3月までにマレーシア子会社の東洋紡テキスタイル〈マレーシア〉に移管されることを受け、現在の調達先である中国とインドに加え、マレーシアでの開発機能を強化する。これによりASEAN域内への糸供給などグローバルオペレーションも拡充させる。

〈帝人フロンティア/海外市場向け積極拡大/機能と環境両方で存在感〉

 帝人フロンティアの衣料素材本部は、海外市場向けの販売を積極的に伸ばす。アウトドア分野を中心に顧客や採用商品が増え、今期(2023年3月期)は衣料素材本部の海外市場向け販売として過去最高の数字での着地となる見通しだ。本部全体のけん引役にもなっており、来期以降も継続して力を入れる。

 同本部の今期は、原燃料価格の上昇が利益を圧迫する要因になっているものの、販売面は順調。売上高については新型コロナウイルス禍前を上回る水準での着地を目指している。それを引っ張るのが欧米市場を軸とする海外向けの販売だ。今期は前期と比べて3割弱伸長すると予想している。

 従来の海外市場向けは、緻密でフラットな表面とかさ高などの特徴を持つ「デルタ」を大手顧客に提案するケースが目立ったが、これまでの種まきが顕在化して顧客数や採用される素材の幅も広がってきた。その中で伸長を見せるのが、快適保温生地の「サーモフライ」や綿調ポリエステル生地「アスティ」だ。

 保温力と汗処理を両立したサーモフライは、繊維の抜け落ちが起こりにくいといった特徴も持つ。再生ポリエステル繊維を使ったアスティは原糸・加工技術を駆使して綿の風合いと外観を再現している。これらは高い機能のほか、環境負荷が小さいことも評価されている。

 海外市場向けの商材は、昨年の実績で全体の7割程度が何らかの形で環境配慮型になっている。これを25年度(26年3月期)には100%に引き上げたいとする。衣料素材本部全体でも環境対応に注力する。