ひと/東レの取締役に就いた首藤 和彦 氏/繊維のノウハウを生かし
2022年09月06日 (火曜日)
記憶通り笑顔の人だった。6月に東レの取締役に就いた首藤和彦氏。筆者による取材は十数年ぶりにもかかわらず、以前と変わらない、にこやかな顔で出迎えてくれた。入社以来繊維畑を歩いてきた首藤氏だが、改めて交換した名刺には樹脂・ケミカル事業本部長とある。「繊維で培ったノウハウを生かして事業成長を図りたい」と話した。
1980年に入社。日本国内向けの生地販売を担当し、以降はテキスタイルビジネスを中心にキャリアを重ねる。その中で「良い経験ができた」と振り返ったのが西武流通グループでの仕事。かつて東レは、西武流通グループと社員の交換制度を実施しており、首藤氏は1期生の一人。「1年間だったが刺激を受けた」と語る。
東レに戻った後、31歳でタイのラッキーテックス〈タイランド〉(現トーレ・テキスタイルズ・タイランド)に赴任する。「国内担当者が海外に赴任するケースは少なかったので全く想像していなかった。自分の経験と知識の幅が広がるきっかけになった」と言う。
ラッキーテックス〈タイランド〉では、ポリエステルタフタ事業の立ち上げに携わるなど、新しいチャレンジが待っていた。一からサンプルを作り、欧米市場などに販売したが、タイの人をはじめ、ビジネスを通じてさまざまな人と巡り合え、大きな財産になった。
その後も新しくできた貿易部門への異動、海外事業拡大、大手SPAとの取り組みなど、前向きな仕事を数多く経験する。「いろいろな仕事ができたのは、会社や上司が自分を見ていてくれていたから」とし、「若いうちは悩むことも多いかもしれない。会社や上司はきちんと見ていると伝えたい」とした。
樹脂・ケミカルのビジネスについては、やりがいと面白さを感じていると強調する。繊維事業ではアパレルや小売企業とコンタクトを取ることも珍しくないが、樹脂・ケミカル事業も先のユーザーにアプローチし、ニーズをつかんで新商品を作るのが重要と説く。またサステイナビリティー対応にも目を向ける。
旧日本軍の山本五十六や阿南惟幾の言葉を座右の銘としている。人材の育成やサステイナブル社会創造への貢献、海外市場における事業拡大、そして社会と顧客からの信頼回復。取り組む課題は多いが、趣味のゴルフや映画、温泉旅行も楽しんでほしい。(桃)
しゅとう・かずひこ 1980年入社。1998年ペンファブリック社取締役、2005年東麗即発〈青島〉染織股份董事、08年スポーツ・衣料資材事業部長兼繊維リサイクル室主幹、10年テキスタイル事業部門長、13年機能製品・縫製品事業部門長などを歴任。21年専務執行役員在中国東レ代表などを経て、22年6月取締役専務執行役員樹脂・ケミカル事業本部長。