シリーズ事業戦略/大和紡績/生産効率化と新商品投入/原燃料高騰で価格転嫁進める/取締役 産業資材事業本部長兼製品・テキスタイル事業本本部長 青柳 良典 氏
2022年09月02日 (金曜日)
大和紡績は原燃料高騰で利益が圧迫される厳しい事業環境の中、価格転嫁に加えて生産効率化と新商品投入で利益率の改善に取り組む。技術開発機能を集約したことで合繊、産業資材、製品・テキスタイルの3事業本部に横串を通した連携も加速した。産業資材事業本部長と製品・テキスタイル事業本部長を兼務する青柳良典取締役は「環境やサステイナビリティーが一つの軸になる。下半期から成果も出していきたい」と話す。
――2022年度上半期(22年4~9月)もあとわずかです。
全体として上半期は原燃料高騰と急激な円安の影響を大きく受けました。そうした中、産業資材事業はフィルター生産を出雲工場に集約してフィルターの中核工場と位置付ける事業再編を実施し、4月から本格稼働しています。一貫生産体制による効率化の成果が上がり、販売も好調です。世界的な半導体不足から半導体製造設備関連の需要が活況となり、一部では生産が追い付かない状態。そのほか、合繊帆布も経済正常化に向けた動きが加速したことで需要が回復しています。ただ、原燃料が高騰する中、商品によっては3次値上げまで実施するなど転嫁を進めていますが、産業資材はどうしてもタイムラグが生じるので利益率が低下しました。
製品・テキスタイル事業は中国子会社の蘇州大和針織服装と大和紡工業〈蘇州〉、インドネシア子会社のダイワボウ・ガーメント・インドネシア(DAI)で生産する縫製品が主力のため急激な円安の影響を受けました。対米輸出は経済正常化で需要も旺盛ですが、主力のインナー製品は価格が上がりにくく、本格的な価格転嫁は下半期からとなります。海外市場と比べて日本向けは値上げのハードルが非常に高く、厳しい事業環境が続いています。
――コストアップ対策が今後のポイントと。
7月の消費者物価指数は前年同月比2・6%の上昇ですが、企業間取引を対象とした国内企業物価指数は同8・6%の上昇です。つまり、この差を企業が負担しているわけですから、ある程度の価格転嫁はお願いせざるをません。ただ、100%転嫁するのは難しいでしょう。このため生産効率化によるコストダウンや新商品の投入が重要になります。昨年9月から合繊、産業資材、製品・テキスタイルの3事業の研究開発機能を播磨研究所に集約し、技術・開発本部で一体運営するようにしました。産業資材事業、製品・テキスタイル事業ともにその成果が下半期には出せるでしょう。環境配慮やサステイナビリティーが開発の一つの軸となります。そうでなければ社会に受け入れられない時代になっています。
――海外生産の現状は。
インドネシアは衣料品縫製のDAIと、産業資材の子会社として産業資材織物製造販売のダイワボウ・インダストリアルファブリックス・インドネシア(DII)、産業資材縫製のダイワボウ・シーテック・インドネシア(DSI)がありますが、いずれも順調です。DIIは東南アジア域内の需要が旺盛でフル稼働となり、日本向けが中心のDSIも受注が回復しています。一方、中国は蘇州大和針織服装、大和紡工業〈蘇州〉ともに生産規模は縮小傾向ですが、高付加価値品中心にシフトしています。第三者監査に対応していることや、物流検品子会社である愛思凱爾物流〈蘇州〉があることで検品までの一貫体制が強みになります。
――下半期に向けた課題と戦略は。
産業資材事業は引き続きフィルターを強化します。そのための設備投資も続けてきました。合繊事業本部の播磨工場の原綿、美川工場の不織布も含めた一貫生産の強みを生かし、機能性商品も出します。産業資材事業はフィルターのほか、カンバス・ベルトなど製紙用資材、合繊帆布や建築資材用シートなどグループ会社であるカンボウプラスの事業も含めた樹脂加工品がありますが、フィルターをカンバス・ベルトや樹脂加工品と並ぶ産業資材事業の中核にしていきます。
製品・テキスタイル事業は、遅れている国内での価格転嫁を進め、利益率を改善することが重要です。その上で、環境やサステイナビリティーに焦点を当てた商品を出していきます。今後、東京で展示会の開催も予定しており、そこで披露できるでしょう。ただ、不安要素はインフレと利上げによる米国経済の減速。これは注意深く見守る必要があります。
大和紡績として3事業本部と技術・開発本部の連携が進みました。合繊事業の原料を産業資材事業と製品・テキスタイル事業で最終製品までつなげていく形ができています。これを一段と強みとして打ち出していきたいと思います。