特集 染色加工(4)/市場の変化に対応する染工場/艶金/尾張整染/鈴木晒整理/吉田染工/山陽染工

2022年08月31日 (水曜日)

〈サステ自販商品で客先拡大/艶金〉

 艶金(岐阜県大垣市)は自販事業の展開に力を入れている。環境配慮をはじめとしたサステイナビリティーを意識した商品を数多くそろえており、繊維業界以外にも客先は拡大。今後売上高に占める割合を30%まで高める。

 同社の自販事業としては衣料向けの生地売りやロボットカバーのほか、食品残さを染料に活用した製品「クラキン」、在庫生地をアップサイクルした衣料品「リトリコ」などサステイナブルな商材も展開する。

 今上半期(2~7月)の自販事業は生地売りとロボットカバーが苦戦したものの、クラキンとリトリコは比較的堅調に推移。「今や環境配慮などは業種の関係なく浸透しているため、繊維以外にも顧客は広がっている」(墨勇志社長)。

 受託加工だけでは成長が見込めないため、今後も自販を積極的に展開し付加価値を高めたモノ作りを進める。特に環境配慮やSDGs(持続可能な開発目標)に向けた商品の提案や発信は継続。自販事業の売上高は年々増えており、現在は全社の25%を占めるまでになった。

〈開拓、DX、育成に重点/尾張整染〉

 尾張整染(愛知県一宮市)は、「新顧客の開拓に重点を置く」(中島俊広常務)。主力の自動車内装材向けの受注回復が当面、見込みにくいとの前提に立つ。自動車生産台数の落ち込みから内装材向けの受注量は現在、前年比25%減。「2022年はこの状態もしくは少し良くなる程度。今できることに力を入れる」として新顧客開拓、デジタル技術で企業を変革するDX化、人材育成などに取り組む。

 新規顧客開拓の一環として、11月開催の異業種交流展「メッセナゴヤ」に出展予定で新加工技術を発表する自社の「プレゼンテーション展」も来春開催するため、その準備を進める。DX化については22年度(23年3月期)を「DX元年」と位置付け、ペーパーレス化など、できることを一つ一つ取り組む。人材育成も重視し、従業員の主体性を養うための手立てを講じる。「受注減もあり、時間はある。それを有効活用する」。

 原燃料価格の上昇については価格転嫁を進める。特にこれまで自動車内装材では認められていなかったエネルギー費の上昇についても値上げを打ち出しており、8月中に決着させる。

〈若手生かし品質管理強化/鈴木晒整理〉

 鈴木晒整理(浜松市)は今期(2023年7月期)方針として、若手従業員を活用し品質管理の強化に加え、技術継承を進める。海外にも目を向け、輸出向けで販路開拓を図る。

 前期は加工数量の増加などが寄与し増収だったが、大幅なコスト増によって営業損失を計上。コスト高への対応として9月から加工料を10%値上げするほか、10反以下の小ロットの注文へのアップチャージも改定する。

 モノ作り体制の見直しの一環で、30~40代の若手2人を工場長補佐、工務副部長にそれぞれ登用した。加工のロス率を低減させコスト削減を図るほか、将来を見据えベテランからの技術継承にもつなげる。

 少子高齢化で国内の衣料品市場は縮小傾向にあるため、商社と取り組みを深め海外向けにも力を入れる。当面は海外向けの売上高比率で10%を目指し、ゆくゆくは20%まで高める。

 受託の染色整理加工事業だけでは会社の存続が危ういため、新規事業の立ち上げも計画する。今期はその準備を進め、来期に向けて本格始動する予定だ。

〈製品事業にも注力/吉田染工〉

 吉田染工(和歌山県紀の川市)グループは今期、糸染め、生地染めともほぼ新型コロナウイルス禍前の加工量に回復させる計画だ。

 生地染めの貴志川工業は今期(23年5月期)、前年比30%増で推移している。インナー用途が伸びているほか、欧州向けニットシャツ用途が好調に推移している。多様な素材に対応する中、ナイロンなど合繊の比率がさらに高まる傾向にある。

 糸染めの吉田染工も回復に向かっており、今期(23年3月期)は、前年比10%増で推移する。和歌山産地向けの丸編み用が主力だが、奈良の靴下や兵庫県西脇の織物など新たな取り組みが進みだしたことが寄与している。今後は和歌山、尾州、北陸などとの取り組みをさらに強化するとともに、三備など新たな産地との取り組みも広げる。

 今後は製品事業の拡大にも注力する。自社の染色技術や和歌山産地の生地を生かしながら商品開発を進めており、9月には島精機製作所の「ホールガーメント」を増設するなど生産体制も整える。ペットや飼い主に向けた服や雑貨を展開するファクトリーブランドを今秋ごろに立ち上げる方向で準備を進めている。

〈地元企業と連携し海外販路開拓/山陽染工〉

 山陽染工(広島県福山市)は、地元企業と連携しながら海外への販路開拓を強化する。

 イタリア・ミラノのテキスタイル展示会「ミラノ・ウニカ」(MU)へ2019年に初出展して以来、海外の販路開拓を進めてきた。現在は新型コロナウイルス禍で海外渡航が滞っているが、来年のMUへは出展を計画。戸板一平取締役は「デニム製造の篠原テキスタイル(福山市)など、地元企業とチームを組みながら、海外向けの商売に力を入れていきたい」と話す。

 加工では水や薬剤の使用を抑えるなど、環境配慮型加工の開発を強化。特殊なインディゴ染料や墨汁を使った、水をほとんど使わないプリント加工に加え、生地をワッシャーで加工する「原反ワッシャー」とプリントとの組み合わせなど、加工の幅を広げながら訴求する。ブルキナファソ綿使いなど、環境に配慮した加工を生地からも提案する。

 自社ブランド、「バッセンワークス」による製品事業にも注力。今年入社した縫製工場出身の従業員を中心に、製品開発を進める。