大和紡績の強化材用PP短繊維/法面吹き付けで採用拡大/施工時のロス10分の1以下に

2022年08月23日 (火曜日)

 大和紡績の合繊事業本部が製造販売するコンクリートのひび割れを自己治癒させるコンクリート・モルタル強化材用特殊ポリプロピレン(PP)短繊維「マーキュリーC」への注目が高まっている。ここに来て法面(のりめん=切土や盛土によってできる人工的な斜面)保護のためのモルタル・コンクリート吹き付けで採用が拡大した。施工時のロスを大幅に削減できることで評価が高まる。

 モルタルやコンクリートなどは長年の気象条件や乾燥などによる体積変化からひび割れが生じやすい。ひび割れは外観を損ねるだけでなく、漏水や内部鉄筋の腐食による断面減少、構造物の耐久性低下などさまざまな問題を引き起こす。

 この課題を解決するために開発したのがマーキュリーC。十字断面PP繊維に特殊な表面改質を施すことで炭酸カルシウムを析出させる。モルタル・コンクリート強化繊維として使用すれば、ひび割れ部分に炭酸カルシウムが析出し、ひび割れを自己治癒させる。

 2014年に販売を開始して以降、ひび割れ補修作業軽減や火災時の爆裂現象防止効果などが評価されてきた。加えて最近は、法面保護のためのモルタル・コンクリート吹き付け用途で採用が拡大した。

 法面吹き付けでは通常、施工面に張り付かず脱落するモルタル・コンクリート、いわゆる“リバウンドロス”が大量に発生する。このため原材料費がかさむほか、リバウンドロスの回収工程も必要になる。回収したリバウンドロスを産業廃棄物として処理する必要もある。

 これに対してマーキュリーCを使用したモルタル・コンクリートは適度な粘性が生じるために施工面への張り付きが良くなり、リバウンドロスを大幅に削減できる。既に採用している施工業者の中には、リバウンドロスが従来の10分の1以下に減った例もある。このため原材料費、リバウンドロス片付け工賃、産業廃棄物処理費用それぞれの削減につながる。

 こうした評価を受け、大和紡績は法面吹き付け用途での拡販に取り組む。現在の販売量は月2トン程度だが、これを24年3月期には10トン、25年3月期には20トンにまで増やすことを目指す。

〈NEDOの事業にも参画〉

 大和紡績は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に参画している。

 同社が参画しているのがグリーンイノベーション基金事業の二酸化炭素を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクトの一つである「革新的カーボンネガティブコンクリートの材料・施工技術及び品質評価技術の開発」。二酸化炭素を吸着・固定化するコンクリート材料を開発し、建設活動を通じたカーボンニュートラル社会実現に貢献することを目指す。

 鹿島、デンカ、竹中工務店を幹事会社とし、大和紡績を含む41企業がプロジェクトに参画した。大和紡績は「マーキュリーC」を応用し、コンクリート内部に多くの二酸化炭素を誘導できる繊維強化材の開発を担当する。