特集 安心・安全(4)/熱中症対策/技術の進化が加速/空調服/チクマ/カケン

2022年08月10日 (水曜日)

〈スペーサー一体型が好調/空調服〉

 空調服(東京都板橋区)が展開する電動ファン(EF)付きウエア「空調服」のスペーサー一体型長袖ブルゾンが好調だ。2022年1月のフルハーネス着用義務化も後押しとなっている。

 空気の通り道を確保する立体メッシュのスーパースペーサーを内蔵していることによって、上からフルハーネス器具を着用しても涼しさを保てる点が特徴。柔軟性があるため動作を妨げず、洗濯時も簡単に取り外しできる。

 空調服の下に着用することで服と体の間にスペースを作るスペーサーベストは、手軽さが受けて今期はほぼ完売状態。解体作業や産業廃棄物処理現場などでの粉塵対策に有効な空調服フィルターは、アコーディオン構造の強力フィルターで、10㍃㍍以上の粒子を80%以上カットできる。

 物流業での安全対策として注目度が高い製品は、反射パイピングを前後に採用して暗所での視認性を向上させた空調服半袖ブルゾン。物を持ち運ぶことが多い運送業や倉庫などで作業がしやすいすっきりとしたシルエットとなっている。

 今秋冬向け電動保温(EH)ウエア「サーマルギア」は、昨年同様に2型で計1万点ほどの生産を計画。空調服用パワーファン対応バッテリーを使用でき、3段階の温度調節が可能。発火の恐れがない薄さ0・5ミリのシリコンベースの「ナノフレキシブル加熱フィルム」を内蔵し、着用ストレスなく体を温めることができる。

〈2層内圧式EFウエア/チクマ〉

 チクマ(大阪市中央区)が熱中症対策商品として拡販に力を入れているのが、電動ファン(EF)付きウエア「チクマノスマファ」だ。乱立状態にあるEFウエア市場だが、2層内圧式という独自性が評価され、企業別注を軸に売り上げを伸ばしている。

 帝人、バッテリーメーカーのマキタ(愛知県安城市)の3社で開発した。その特徴は、袖口や裾を絞らなくても空気が逃げないため大きく膨らまず、すっきりとした見た目になること。裏地と表地の中を涼風が循環する構造で、特許も取得済み。

 これまではこの特性を最大限に生かせる「スマートファンベスト」と呼ぶベスト型を軸にしていたが、さらに布地部分を減らして作業性を向上させたチェストタイプをこのほど投入した。7月に出展した「猛暑対策展」で披露し、好評を得た。9月13~16日に東京ビッグサイトで開かれる「国際物流総合展」にも出展する。

 企業別注が拡大している。採用例もホテル、警備、製造業、交通など幅広い。「生地面積が少なく、作業性が高い」という特徴が評価されている。加えて、国内縫製によるミニマムロット50着という小口対応も強みになっている。

 今後は企業別注だけでなく、快適で手軽に着用できる点を訴求し、B2Cの拡大にも臨む。

〈カケン/防護装備試験で強み発揮〉

 カケンテストセンター(カケン)は、防火服や防火手袋をはじめとする防護装備の試験で強みを発揮している。これらは消防隊員が主に使用し、火や熱への耐性、強度、耐水性などの試験を行う。今年4月に「消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン」が改定されたが、こうした動きにも対応している。

 消防隊員が着用する防火服などは、熱から体を守るという重要な役割を果たす。素材・生地が炎に耐えられても熱が体に伝わることでやけどを負う可能性があり、熱の伝わりにくさは重要な評価項目の一つと言える。カケンでは熱伝達性試験(ISO9151)などに対応し、試験は東京事業所川口本所(埼玉県川口市)を中心に行っている。

 防護装備には手袋なども含まれているが、手袋に関しては「耐切創性に対する問い合わせが増えている」と言う。工場作業用のほか、新型コロナウイルス禍によるDIYブームで手袋を着用する機会が増えていることなどが需要拡大につながっているようだ。

 防火服の試験を応用し、アウトドア分野などの需要も積極的に取り込んでいく。既にミトンや鍋つかみなどで興味を示すキッチン用品メーカーやアウトドア用品メーカーも出てきた。作業服用途の深掘りも図っており、溶接作業服や耐熱・耐炎作業服などへの対応も訴求する。

〈猛暑対策展/来夏は水冷式ウエア増加か/コンパクト化進む〉

 「猛暑対策展」(日本能率協会主催)が7月20~22日、東京ビッグサイトで行われた。熱中症対策ウエアでは、電動ファン(EF)付きウエアに加え、今年は水冷式ウエアの出展が目立った。

 EFウエアでは、「空調服」を展開する空調服(東京都板橋区)や、専門商社チクマ(大阪市中央区)、住宅用基礎関連器材製造のエヌ・エス・ピー(岐阜県中津川市)が一般ユーザー向けも意識した製品展示を実施。ファッションブランドとのコラボレーションはじめ、ECの活用、デザイン性向上など各社独自の取り組みで注力する。

 今年はコンパクト化した水冷式ウエアを前面に出すメーカーが急増している点が特徴だ。山善が新開発した水冷式ウエアは1万6千着が既に完売という人気ぶりで、来期に向けて増産も視野に検討中。熱中症対策品製造販売のクールスマイル(大阪市東淀川区)も今夏投入した腰の形状に合わせやすい内蔵弧状ボトルが特徴の水冷ウエアが好評。厚さ約1ミリのウエア内水冷管に冷水を通す面水冷構造技術が効率的な冷却効果をもたらす。

 電動工具製造の山真製鋸(静岡県浜松市)は、ホームセンターを主な販路に冷水と凍らせた650ミリリットルまでのペットボトルを使用する水冷ウエアを展開している。