特集 東海産地(4)/東海をけん引する寝装品・インテリア製造卸/小栗/音部/公大/豊島 浜松支店/信友 原糸部

2022年08月09日 (火曜日)

〈寝具の新ブランド提案/小栗〉

 小栗(浜松市)は寝具カバーリング類の新ブランド「イニコ」の提案に力を入れている。シンプルながらもこだわった素材やデザインが特徴で差別化を図った。

 寝室を快適でお気に入りの空間にしてもらおうと、コンセプトは「シンプルでお洒落」「飽きないデザイン」「心地よい肌触り」に設定。カラーはブラウンやホワイト、チャコールグレーなどの定番にまとめた。

 特にデザインや素材にこだわった。綿のサテンストライプの生地にはしごレースや刺しゅうをあしらったほか、カットフリルやダイヤ型のタックを取り入れた生地を採用した。

 ひと手間加えることで価格競争からの脱却を狙い、昨年投入した。顧客からは高い評価を得ており販売も順調に推移する。今後は「ギフトショー」にも出展し、PRを進める。

〈年間定番品を軸に安定供給/音部〉

 音部(愛知県蒲郡市)は、設立から70年以上の歴史を持つ寝具・インテリア製造卸企業だ。シーツやカバー類を中心に、年間定番品を軸にした供給の安定化を図る。

 ガーゼや、180本ブロードのカバー類に加え、SEKマーク付きの抗菌防臭加工を付与した商品は堅調な動きを見せる。夏物や冬物といった季節品の売上比率が下がる中で、いかに年間定番品の安定供給ができるかを重視する。

 主な販路は地方卸とGMSが主体。販路先別に、年間定番品と季節商材の計画を擦り合わせ、販売ロスを少なくするように話し込みを重ねる。

 課題は利益の確保で、特に海上運賃の上昇を懸念している。今後は一部の商品構成を見直す一方で、掛け・敷ふとんといった重寝具の拡充に向けて検討する。

〈独自の販路で直接訴求/公大〉

 公大(愛知県蒲郡市)は、三河木綿を使用した「クムコ」をはじめ、素材や機能にこだわった寝装・インテリア製品を打ち出す。ECやクラウドファンディング(CF)といった独自の販路で、機能や特徴を直接訴求し、着実に顧客やリピーターを増やす。

 主な販売先の売り上げ構成比は問屋・商社向けが30%、小売店向けは40%。自社ECとCFのB2C向けが30%となり、売上高を伸ばす要因となっている。

 自社ブランドの「クムコ」の名が少しずつ消費者に浸透し、小売店での取り扱いが増える。3D構造で通気性の高い敷パッド「サラフ」もこのほど、CFで680万円近くの支援金額を集めた。

 鈴木公輔社長は「人任せにせず、自分達で商品特徴を直接伝えることが大事だ」と思いを語る。

〈豊島 浜松支店/産地の未来につながるモノ作り支援〉

 豊島の浜松支店は、綿織物の生産が盛んな遠州産地に伝わる生地作りの技法に焦点を当てて訴求を強める。地元の製織企業や染色整理加工の企業と連携を深め、産地の未来につながる付加価値の高いモノ作りを支える。

 昨年ブランド化した、「ENSHU ARAI」(エンシュウアライ)と「SUN AIRY」(サンエアリー)は人気が高い。140番手双糸の高密度なシャツ生地や120番手双糸のブロード、タイプライターの引き合いが多い。特に中国のアパレル企業向けの輸出が順調で、供給を増やす。

 エンシュウアライは副題に「至高の風合い」を付す。洗い加工を施し、肌触りの良さとビンテージ調の顔付きを付与する。サンエアリーは「極上天日干し」がサブタイトル。手作業で染色した生地を“遠州の空っ風”で乾燥することで独特の色合いや粗野な表情を生む。

 浜松支店が手掛ける、生地の備蓄販売「HTシリーズ」は、難燃性などの機能を付与した生地や、合繊素材の生地もそろう。ECで生地や副資材を扱う「テキスタイルネット」も、品種とサービスを拡充。顧客を増やしている。

〈信友 原糸部/“出口を見据えた商談”精度向上へ〉

 信友の原糸部は、全国の産地に根差す企業を対象に、最終製品を見据えた“出口を見据えた商談”の精度を上げる。今後も多角的な視点と情報を生かし、産地の特色に合わせた提案に磨きをかける。

 顧客はもちろん、名古屋本社と大阪支店の原糸課が日頃から情報共有を重ねる。その情報をヒントに、原糸・原料から新たな用途を創造しながら“出口を据える提案”を進める。紡績から製織、染色整理までの流通経路を見据えた、ワンストップ機能も高度化している。

 化合繊を原料とした糸の取り扱いも拡充。綿糸は、原料高の影響で扱い数量が減少する中、綿と化合繊を複合した糸の提案を進めることで、条件に合わせた供給をかなえる。最終製品の販売価格から逆算した糸の価格を意識し、限られた条件の中から適切な価格と条件を提示する。

 扱い品種の増加で、原料を含む備蓄の調整が難しいが、適切に備蓄するための努力を重ねて供給量の維持に力を注ぐ。若手社員のアイデアに耳を傾け、市場動向の把握を正確にすることで、最適な提案への道筋を切り開く。