用途開発奏功し安定稼働/東洋紡の液アン加工設備

2002年03月08日 (金曜日)

 富山県射水郡にある東洋紡の染色加工場(庄川工場)が保有する液体アンモニア加工設備が、“形態安定加工ブーム”が沈静化した今も、「中位安定」(山岸正弘テキスタイル製品開発部長)で稼働している。薄地や、中肉地など様々な生地を活用して用途開発を進めた効果が出ている。

 アンモニアは零下33度で液体になる。それは、水よりも粘度や表面張力が低く、綿繊維の内部に容易に浸透する。液体アンモニアに綿生地を浸すと、扁平断面の綿繊維が瞬時に膨らんで円形になり、ねじれも無くなる。このような反応が、数秒で、しかも均一に生じると言う。

 このような反応の結果、綿生地には、(1)縮み難い(2)しわになりにくい(3)反発性が増す(4)柔らかくなる(5)強くなる―など複数の特性が発現する。このうちのいくつかの特性は、苛性ソーダによる通称、シルケット加工でも付与できるが、同加工には生地を硬くしてしまう欠点もある。また、ふくらみ感も、液体アンモニア処理ならではのものだと言う。

東洋紡が保有する設備は、生地に対する連続処理で、このような反応を生じさせるためのものだ。日本では、同社の他に、日清紡、シキボウ、クラボウが同様の設備を保有している。近隣諸国では、上海に1台、タイに1台ある程度だとされる。このため紡織業界はこれを、国内での生地生産を維持するための数少ない武器の一つと位置付けている。

 東洋紡の庄川工場は94年に同設備を導入、95年に本格稼働させた。同加工のノウハウは、米国サンフォライズ社が有している。日本では、京都機械が同社のライセンシーとなっている。東洋紡が導入したのは、この京都機械が製造したものだ。これに加え、処理後のアンモニアを回収するための装置が必要だが、その製造は岩谷産業にゆだねた。

 月間処理能力は、ブロードを16時間操業で処理した場合で80万メートル(150センチ幅)。導入当初は、“形態安定加工ブーム”もあって、24時間操業で仕事をこなしていた。それが去った今でも、8~16時間の操業を維持しているという。

 生産品種は多様だ。ドレスシャツ地などの薄手生地から、60双、40双糸使いの中肉生地までをこの設備で処理している。夏向きの婦人用純綿黒礼服という、新市場を開拓した「新木棉・ハイアンス」も、この設備を使って商品化したものだ。