特集 全国テキスタイル産地Ⅰ(4)/開発は産地と一体で/ヤギグループのヴィオレッタ/豊島/瀧定名古屋

2022年07月28日 (木曜日)

〈イノベーション起こす/創業100周年に向けて/ヤギグループのヴィオレッタ〉

 ヤギグループのラッセルメーカー、ヴィオレッタ(大阪市城東区)が事業領域を広げている。5年後に迎える創業100周年に向かってさらなる変革を推進するため、「イノベーション.エボリューション.バイ ラッセル100TH 1927¥文字(C-12264)2027」を定めた。

 同社はインナー・ファンデーション向けのラッセル生地製造が生業。幾つもの特許技術を持ち、現在はアウターやスポーツなどさまざまな領域を開拓中だ。生地の企画、開発、設計は全て本社のデザインセンターで行い、顧客のアイデアとコンセプトを形にする。商品試験室も有し、高度な物性試験もこなす。

 府内と石川県に自社工場を、タイに合弁工場を持つメーカーだが、賃編みはなく、自販が取引形態。営業スタッフも8人いる。5月に就任した長戸隆之社長はこの機能に着目し、「工と商のハイブリッド経営を推し進める」ことを今後の重点方針とする。

 新型コロナウイルス禍で業績は落ち込んだが、今期(2023年2月期)に入ってからは来シーズンに向けた編み立て依頼が数多く寄せられており、「回復への期待はかなり高まっている」と言う。利益を重視しつつ、メーカーとして売り上げ規模にもこだわっていく。

 ヤギグループの一員としてサステイナビリティーを軸としたグループ連携を積極化するとともに、生地ブランドの確立や最終製品までの一貫提案、海外市場開拓なども狙う。

〈天然から合繊まで幅広く/機能素材打ち出しも強化/豊島〉

 豊島は天然繊維から合繊まで幅広い原料の糸を全国の産地などに供給する。SDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みも進めており、顧客のニーズに合った素材を展開。近年では機能素材の打ち出しも強化している。

 原糸部門のうち一宮本店(愛知県一宮市)にある一部一課はウールを中心に合繊複合糸なども扱い、糸から製品までを展開する。三課体制の二部は綿糸や合繊糸のほか、不織布などもそろえる。いずれも用途は衣料から資材向けまでと幅広い。

 サステイナブルな素材を数多くそろえるのも同社の特徴。代表的な素材がトレーサブルなトルコ産オーガニック綿糸「トゥルーコットン」だ。綿100%だけでなく混紡糸も展開しており、衣料だけでなく雑貨向けにも販路を広げている。

 ほかにも、不要になった繊維製品を素材ごとに回収、再生する取り組み「ワメグリ」を推進。この取り組みを生かして、再生ウールを使った紡毛糸「サークルウール」も展開する。

 同社は企業ステートメント「マイウィル」に基づき、「サステイナブル」と「テクノロジー」という二つのカテゴリーを設けていた。このほど、新たに「ファンクショナル」をカテゴリーに加え機能素材の提案を強化。親水性ナイロン冷却糸「オプティマクール」や蓄熱機能素材「セルフレイム」などを訴求する。

〈尾州の反毛を新たな価値へ/回収衣料からウール生地/瀧定名古屋「リニュール」〉

 瀧定名古屋は回収衣料を再生したウール混の生地「リニュール」の発信を強めている。専用のウェブサイトを立ち上げるなどして、企業、消費者問わず幅広い顧客に向けて訴求。尾州産地で昔から行われていた反毛を新たな価値として提案する。

 国内で回収したセーターなどの衣料品を色ごとに仕分けする。ボタンやタグなどの付属品を外して反毛した後、再び紡績を経て生地となる。基本的に全ての工程は尾州で行う。ブランドとして立ち上げたのは8年前だが、昨年からリブランディングを進めてきた。

 生地を中心に一部で製品も展開する。サステイナビリティーへの意識の高まりから売り上げも堅調で、セレクトショップやデザイナーズブランド向けなどへ採用が増加。衣料以外にも小物雑貨や家具向けにも販路は広がっている。

 尾州では原料となるウールは輸入に頼っている。そのため、昔からウールを再生する習慣が根付いており、回収や色ごとの分別、反毛の体制も整っていた。元々あった土壌を生かすことで、小ロット対応や価格面など「現実的に取り入れられる再生素材」を可能とした。

 こうした尾州の再生や反毛という習慣を新価値として広めると同時に、ウールの多彩な機能性もアピールする。ひいては尾州全体の魅力をPRすることにもつなげる狙いだ。