2022年夏季総合特集(7)/新時代に向けたわが社の素材・取り組み/豊島/御幸毛織/マスダ/ササキセルム

2022年07月26日 (火曜日)

〈豊島/DX化の取り組み加速/持続可能なライフスタイルを〉

 豊島は持続可能なライフスタイルの実現に向けて、デジタル技術で企業を変革するDX化を加速している。このほど、経済産業省が定める「DX認定事業者」の認定を取得するなど評価も得ている。

 サステイナブルな素材作りとテクノロジーを通して持続可能なライフスタイルを目指す企業ステートメント「マイウィル」に基づき、DXの取り組みを推進してきた。「生産管理のDX」と「価値創造のDX」という二つの軸で展開する。

 生産管理のDXは自社開発のプラットフォームに原料から製品までのサプライチェーンの情報を集約することで可視化し、業務の効率化や無駄の削減を図る。価値創造のDXは3DCG技術などを活用することで、商品企画や開発のオンライン化を実現。販売データと連携することで新しい売り方などを構築する。先進的な取り組みとして注目度は高い。

 こうしたDXの取り組みを活用することで、顧客の課題解決型の提案も進めている。どのような商品がどのような人にどれだけ売れたかなどのデータを基に、顧客と連携しながら商品の企画や開発、売り方などを考える。これまでのビジネスの在り方から脱却を図ろうとしている。

〈御幸毛織/個人・企業のスーツ販売支援/新たな販売網の拡大へ〉

 御幸毛織(名古屋市西区)は、個人や企業のオーダースーツ販売支援サービスの「ミユキ・ネットワークプロジェクト(MNP)」で、新たな販売網の拡大に向けた取り組みを進める。

 MNPは副業や起業を検討する個人や、異業種から参入する企業を対象に、販売支援のプラットフォームとして機能することが目的。直営店「ミユキクラフツスーツ」やオーダーサロン、百貨店などが主な販路だが、MNPの確立で新たな販売代理業態を増やすことが期待できる。

 採寸から販売の技術を習得する開業前研修が付く。ゲージ(試着サンプル)やバンチブック、副資材見本も完備。国内工場で一貫生産するため、通常の販路と変わらない品質でオーダースーツの供給ができる。立ち上げて1年半が経過したが、これまでに法人・個人を含めて20件と契約済み。累計で千着程の販売見通しを立てている。

 新成人や新社会人に限定した打ち出しや、靴の修理を行う企業が、会員に限定して販売するといったさまざまな商流が生まれた。加盟を検討する個人や起業の応募は累計で120件を超える。今後も契約件数を増やしながら、販路の開拓やニーズの掘り起こしを狙う。

〈マスダ/定番と営業スタッフの力を融合/“オンデマンド”を具現化〉

 生地・製品備蓄販売のマスダ(名古屋市中区)は、生地と製品の定番商材と営業スタッフのアイデア力を生かして、あらゆる需要への即応体制を強化する。適時に適品を適切な形態で供給し、顧客の生産過多を抑止する“オンデマンド”生産の具現化を図る。

 生地と製品の両方で定番商材を備蓄し、双方で顧客の求める適量供給をかなえる強みが確実に進化している。173品種の生地はメーターカットを含めて最小単位から対応するが、裁断物での納品も可能。一昨年はマスクや医療用ガウン向けに生地・製品・裁断物での納品にも対応。昨年はアウトドアやゴルフ向けの販売が伸びた。成長する市場に向けて、市場の変化に即した対応が光った。

 製品はアパレルから雑貨まで114品種をそろえる。定番のビブスを転用し、ワクチン接種の従事者向けにゼッケンを供給。生地を中心に販売するアパレル企業に、かばんや帽子といった雑貨を製品化して供給する事例も増えている。

 片岡大輔社長は「業界全体で売り残しや過剰在庫をなくすにはオンデマンドビジネスの進化が必要。当社の機能をフル活用してほしい」と話す。定番商材にアイデア力が加わることで、対応力は無限に広がる。

〈ササキセルム/秋冬向け生地販売、回復の兆し/多種多様なニーズを把握〉

 生地商のササキセルム(愛知県一宮市)は、今秋冬向けの生地販売が前期比で増え、回復の兆しを見せる。本社と東京営業所(東京都渋谷区)を拠点に、多種多様な販売先のニーズを正確に把握しながら、きめ細かな提案を続ける。

 今秋冬物は、パンツやセットアップに加えて、コートやジャケット向けの販売が進んだ。得意とするポリエステル・レーヨン混や、ハイテンションといわれる伸縮性の高い生地も引き合いが増加。コートやジャケット向けはウール混の起毛素材が人気を博す。派手な配色のシャギーや、植物をモチーフにした柄のジャカードも販売を伸ばした。

 来春夏向けの企画では、ピンクやサックスなど、明るく主張するカラーを打ち出したシアー生地を展開。人気の高いナイロンや綿・麻混のストレッチ生地も、ミックス調まで広くラインアップ。表面にシボ(生地の凹凸)を利かせ変化を持たせる。

 顧客との接点を増やして、正確にニーズを把握する取り組みも進める。シーズンの展示会終了後、東京営業所で成約に向けた“フォローアップ展”を開く。さまざまな販売先との連携を密にしながら、適品を適切に供給できる体制を整える。