桐生産地の繊維企業/海外市場開拓に再び視線/生地をはじめ自社製品も

2022年07月11日 (月曜日)

 群馬県桐生産地の繊維関連企業が海外市場の開拓に再び目を向けている。以前から輸出拡大に取り組んできた企業は少なくないが、新型コロナウイルス禍で展示会出展や営業活動ができていなかった。ここに来て「復活させたい」という声が増え、生地の輸出だけでなく、自社製品の販売を目指す企業も出てきた。

 桐生産地の生産状況は、4月は低調だったが、5月に入ってからは堅調。中には「6月は新型コロナ禍前を上回る水準に回復した」と話す企業もある。試織依頼も多く、「顧客のモノ作りへの意欲が高まっていると感じる」とし、7月以降も底堅く推移すると予想されている。

 当面は国内顧客との商売に重きを置くが、海外市場にも視線を注ぐ。持続的な成長のためには海外の需要を取り込む必要があると捉えているためだ。

 織物製造企業は「今年海外展示会に出展した企業から『仕事が取れた』と聞いている」とし、「顧客への個別ラウンドの復活を検討中」と話した。

 織物製造卸の小林当織物は、新型コロナ禍前はイタリアの服地見本市「ミラノ・ウニカ(MU)」に継続出展し、欧州市場の開拓を図ってきた。感染症によって出展はできなくなったが模索は続けると強調。「これまでの成果を踏まえ、どのような方法が良いかを考える」とした。

 織物製造卸の桐生整染商事も海外販売の再拡大を志向しているが、生地だけでなく、シルクを使ったボトムなどがそろうファクトリーブランド「シルッキ」の売り込みにも力を入れる。エージェントを介して「欧州のセレクトショップなどにアプローチしている段階」と言う。

 刺しゅうの笠盛も自社製品「000」(トリプル・オゥ)で海外進出を狙う。000は刺しゅうアクセサリーで、同社売り上げの約4割を占める大きな柱になっており、海外販売で成長に勢いを付ける。米国市場の開拓に目を向け、「来年には雑貨関連の展示会に出展したい」と話した。

 桐生は婦人服地を主力とする産地で、新型コロナ禍によって厳しい状況が続いていた。ここに来て回復基調にあるものの、「販路・顧客の拡大が課題」というのが共通認識。海外市場開拓もその一つで、継続的に取り組んできたが、自社製品販売を志向し始めているところが大きな変化と言える。