環境特集(11)/わが社の環境戦略/サンゲツ/QTEC/JUKI/カケン

2022年06月27日 (月曜日)

〈カーペットタイルで環境配慮/ワンプライスで多彩に/サンゲツ〉

 サンゲツはカーペットタイルで環境対応を進めている。昨年11月に発刊した見本帳は全点が環境配慮商品でありながら、購入しやすいワンプライスと多彩なデザインで差別化を図った。カーペットタイル業界の標準とするべく訴求を図る。

 見本帳「2021―2023NT700カーペットタイル」はパイルに廃棄漁網を活用した再生ナイロン100%の「エコニール」や、染色工程を経ず水や薬品の使用量を減らした原着糸などを使用する。バッキング材にはリサイクルパウダーを使いエコを意識した。

 新たに自社基準「エコグレード」を設け掲載する商品を5段階で評価。原料から生産、物流、廃棄までのCO2排出量やエコ素材の種類などを明記。さらに、巻頭には脱炭素・循環型・長寿命化社会の実現に向けた同見本帳の方針を掲げた。

 従来のカーペットタイルは価格とデザインが重要視されてきた。今回の見本帳はその二つに環境という新たな要素を加えた。環境素材を使うと高価格になりがちだが、従来と変わらない価格に抑えることで、業界のスタンダードとして位置付けられることを狙う。

 販売も堅調に推移しており、オフィス向けなどで採用は着実に進んでいる。

〈水鳥にもアニマルウエルフェア/日本唯一の監査機関として/QTEC〉

 アニマルウエルフェア(動物福祉)に注目が集まっている。動物衛生の向上などを主眼に置き、水鳥なども対象に含まれる。羽毛原料のトレーサビリティーを認証、水鳥のアニマルウエルフェアを保証する規格が「ダウンパス」だ。日本繊維製品品質技術センター(QTEC)が監査機関に認定されている。

 ダウンパスは、水鳥のアニマルウエルフェアの推進が目的で、対象物は羽毛製品や羽毛原料。農場、食肉処理場、羽毛加工場、羽毛充填(じゅうてん)工場などを対象者とし、ライブプラック(生きた鳥から羽毛を採取しない)や強制給餌の禁止、適切な環境での飼育などを求める。オプションになるが、親鳥までトレースできる。

 現地監査や品質試験に合格すると認証が受けられる。ダウンパスラベルにはシリアルナンバーが付記される。QTECはダウンパスに関する日本で唯一の監査機関であり、現在は寝装品を中心に監査・試験を実施している。監査できるスタッフが4人在籍する。

 海外では認証を取得する企業が目立っており、日本国内でもこれから浸透していくと予想されている。QTECも「2021年辺りから問い合わせが着実に増えている」と話す。

〈SDGs経営を推進/社会課題解決に取り組む/JUKI〉

 JUKIは2020年4月、「SDGs(持続可能な開発目標)推進室」を設け、中期経営計画の重要な取り組みの一つとして「SDGs経営」を推進する。この方針に基づき、マテリアリティーマップについてSDGsの視点でステークホルダーや自社の重要度を軸に分類を行い、その中から取り組むべき重点課題を抽出した。

 「雇用機会の創出」として、新興国の縫製工場の成長をサポートする。各国の政府機関と連携し、生産地の経済発展に貢献する。

 「さまざまな人材の社会参画推進」では、開発途上国を中心に、職業教育支援を通じて労働者人口増加と労働者の待遇改善などの実現を目指す。

 「生産面からの衣料廃棄ロス削減への貢献」として、適量生産・適正在庫を実現させる仕組み作りを、製品、システム、コンサルティングといった各側面から支援する。

 「労働安全の確保」では〝脱技能化〟や重労働を軽減する自動化装置の活用により、労働環境を守るための仕組みを築く。

 「環境負荷の低減」では、温室効果ガス排出削減や環境法令を順守したグリーン調達を推進し、安全で環境負荷の少ない製品を「エコ・プロダクツ」として認定する制度を取り入れている。

〈7月にZDHC研修開催/入門編も年内に実施へ/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)は、有害物質ゼロを目指すロードマッププログラムを管理するZDHC(オランダ)に加盟している。7月26、27の両日に「ZDHCオンライン研修」を開催し、化学物質管理で見られる10の問題点などを解説する。入門編も今年度中に実施する予定だ。

 ZDHCは、繊維産業や皮革産業において有害物質の排出をゼロにするための活動に取り組んでいる非営利団体。スポーツメーカーやファストファッションをはじめとする約40社が加盟し、最近ではハイブランドも興味を示しているという。

 持続可能な化学物質管理の基礎知識とベストプラクティスの理解・実装が目的の研修も実施している。カケンは2人が講師(トレーニングプロバイダー)を務め、7月の研修では「化学物質管理でよく見られる問題点と、その改善のための最良な実践例」を説明する。

 ZDHCは世界で注目度が高く、日本企業の間でも関心が強まると予想される。カケンは浸透を加速するため「できることをさらに増やしていく」とし、より基礎的な内容が学べる入門編を含めた研修の提供や総合分析会社との連携による排水検査の案内などに取り組む。