環境特集(8)/わが社の環境戦略/蝶理/MNインターファッション/豊島/モリリン

2022年06月27日 (月曜日)

〈「ブルーチェーン」発信強化/環境配慮商材の拡充進める/蝶理〉

 蝶理の「ブルーチェーン」は、サプライチェーン全体でサステイナビリティー最適化を目指すためのコンセプト。繊維産業の川上から川下に至る各段階でサステイナビリティーに関連する取り組みを推進し、それらを柔軟に掛け合わせていく。

 サステイナビリティー対応を重視する姿勢によって、繊維業界で賛同者を着実に増やしている。今後は消費者に近い位置にまでビジネスの領域を広げようと、ブルーチェーンの発信力強化を進める。そのために、著名なアートディレクターの平林奈緒美氏にデザインを依頼し、ロゴを刷新した。

 環境配慮商材についても新展開を図る。再生ポリエステル「エコブルー」の中の、廃ペットボトルを原料とする「ファースト」では、再生ペレット押出機が9月ごろまでに稼働するめどがついた。年間2万㌧の生産能力が上積みされ、原料の段階まで確認できるトレーサビリティーが実現する。

 画期的新素材として打ち出しを強めるのが、小松マテーレとの協業で展開する速染糸「WS」。糸作りの工程で物理的作用を変化させて生み出した糸で、生地加工での染色の時間を大幅に短縮し、染料や水の使用量を削減する。CO2排出量削減につながる点も訴求する。

〈熱回収装置の拡販に注力/燃料費削減に環境対策も/MNインターファッション〉

 MNインターファッションの機能資材事業部産業資材課は、流下液膜式熱回収装置「リカロ+」の提案に力を注ぐ。同装置は、生産活動で生じる高温の排水から効率的に熱エネルギーを回収して再利用する仕組み。ボイラーなどで使用する燃料費の削減だけでなく、CO2(二酸化炭素)の排出を抑える効果ももたらす。食品や自動車の業界などで導入が進む同装置を、繊維産業でも普及させる。

 リカロ+は水処理メンテナンス企業のスイシン(群馬県高崎市)が開発。MNインターファッションは販売代理店を担う。

 使用する時は、まず熱を回収するための水を熱交換ユニットに通しながら、洗浄機などから排出される高温の水をリカロ+の上部から流し込む。その排水が薄膜を作りながら熱交換ユニットの外部を流れ落ちると、ユニットの内部の水が排水の熱を奪う。こうして熱交換された水は、蒸気ボイラーを加熱するための補給水などに再利用する。

 同装置の販売を通じて、環境に配慮したモノ作りを支援することで、取引先と強固な関係性を構築する。繊維以外の業種にも営業範囲を広げるきっかけを作り、そこからユニフォームなどの受注獲得につなげていく狙いもある。

〈持続可能な生活様式提案/服の循環やバイオマス活用推進/豊島〉

 豊島は「ライフスタイル商社」を目指し、繊維事業で培ったノウハウやネットワークを活用して、持続可能なライフスタイルと未来を提案できるビジネスモデルを構築する。

 1月には、素材から服の国内循環の確立を目指すプロジェクト「WAMEGURI」(ワメグリ)を立ち上げた。ペットボトル、コットン、ウール、ダウンの4素材について、回収から紡績までの全工程を国内で完結させるリサイクルシステムを築き、そこから新たな製品を生み出す。

 4月には、ライトオンとの協業により、廃棄予定のコットン製品を再利用した新ライン「サステナブルー」からデニム製品を発売した。今後はデニムについて回収から製品化までの循環システムの確立を目指していく。

 「環境と産業にプラスなプラスチック」を掲げた「LandLoop」(ランドループ)を新しい取り組みとして打ち出す。ランドループは人体に有害な添加剤を使用せず、バイオマスと樹脂原料を結合させる新技術で、人と環境に負荷をかけないモノ作りを推進する。

 竹炭や食品残さといった素材を使い、ハンガーなど服飾資材や雑貨類を製造する。服作りで出る端材をアート作品に活用することも検討している。

〈廃棄衣料をボードに再生/循環システムの活用促進/モリリン〉

 モリリンは、廃棄衣料品を原料とするリサイクルボード「PANECO」(パネコ)の提案に力を注ぐ。企業から回収した廃棄衣料、端材や反物の繊維くず、古着などを原料にし、木材の代用品になるボードを製作する循環システムの活用を促進する。使用済みの繊維製品のアップサイクルとして普及を目指す。

 パネコは、店舗設備・器具のデザインや製作を行うワークスタジオ(東京都新宿区)が製法を確立し、原料の回収からボード完成までのスキームも構築した。モリリンは国内の販売代理店を担う。

 回収する繊維は素材の種類を選ばず、皮革も含める。衣類からボタンやファスナーを取り除く作業は福祉施設に依頼し、障害のある人たちの就業の機会を増やす。

 不要な部分を除いた原料は粉砕後、専用の接着剤とワックスを混ぜてプレス成形し、ボードに仕上げる。使用済みとなったボードを回収し、再びボードを製作することもできる。

 モリリンがアパレルを中心とした取引先に向け提案するのは、パネコを使ってその企業独自の製品を生み出すこと。廃棄衣料の問題を解消しながら、木材の使用量を減らす循環システムへの参画を呼び掛けている。