環境特集(5)/わが社の環境戦略/クラボウ/シキボウ/大和紡績/新内外綿

2022年06月27日 (月曜日)

〈拡大する「ループラス」/糸の備蓄販売も開始へ/クラボウ〉

 クラボウのアップサイクルシステム「ループラス」が拡大している。アパレルや産地の参画が順調に増加。さらに8月からは糸の備蓄販売も開始する。備蓄販売で小ロットの供給も可能になる。一段の普及を進め、繊維業界でのサーキュラーエコノミー(循環経済)構築を目指す。

 ループラスは、綿製品の製造工程で発生する裁断くずなどを反毛し、紡績糸としてアップサイクルするシステム。サステイナブルな糸として注目が高まり、エドウインなどが採用している。このほど三起商行も「ミキハウス」ブランドで採用した。リサイクル素材の国際認証である「グローバル・リサイクルド・スタンダード」(GRS)認証も取得し、海外市場向けのアイテムへの採用も進む。

 さらに今治タオル、播州織、奈良靴下の各産地と提携し、産地間連携によるサーキュラーエコノミー構築にも取り組む。産地にループラスの糸を提案しており採用に向けた動きが産地で出始めた。

 ループラスの認知度が高まるにつれて、小ロットからでも使いたいという声が多く寄せられている。これに答えるために8月からは20番手と30番手の織り糸、ニット糸をそれぞれ備蓄販売する試みも始める。最小1㌜(24キロ)からの販売が可能になり、これまで以上に幅広い用途やアイテムでループラスの普及を目指す。

〈生分解繊維「ビオグランデ」/ポリエステル代替に期待/シキボウ〉

 シキボウは今春から生分解性のあるポリエステル紡績糸の販売を始めた。「ビオグランデ」の名称で売る。

 ビオグランデではまずは、ポリエステルと綿の混紡糸で提案を始め、今後はポリエステル100%も展開する予定。同社が得意とする二層構造糸でもこの生分解性ポリエステル混の商材を展開する。

 紡績糸の生産は、ユニフォーム用などまとまった量産品は海外(インドネシア・ベトナム)で、細番手や小量対応の特殊糸は国内で行う。

 シキボウが扱う今回の生分解性ポリエステルは、空気中では分解が進まず地中や海洋中で分解する。近年問題視されているプラスチックの海洋環境への影響の中には、洗濯時にポリエステルなどの化学繊維から出るマイクロプラスチックも含まれており、ビオグランデはその問題の解決策としても注目を集めそうだ。物性面では通常のポリエステルとほぼ変わらないため、従来のポリエステル繊維を代替することも可能だ。

 シキボウは、焼却処理される際の二酸化炭素を削減するポリエステル「オフコナノ」を発売しており、この素材にビオグランデを加え環境に配慮した素材の拡販に力を入れる。

〈全社横断で環境負荷低減/商品開発も播磨研究所に集約/大和紡績〉

 大和紡績は全社横断で環境負荷低減と商品開発に取り組んでいる。そのため研究開発も播磨研究所(兵庫県播磨町)に集約し、多彩な商品を生み出した。

 ダイワボウホールディングスは2020年4月、ESG推移委員会立ち上げ、17の重点課題を設定した。これに基づき、大和紡績は同社としての環境方針を掲げ、特に環境負荷低減と環境配慮型商品の開発、3R推進、環境マネジメントの強化に取り組む。

 その一つがエネルギー転換で、グループ各事業所の重油ボイラーを液化天然ガスに変更する検討を進めている。

 環境配慮型商品も拡充した。再生ポリエステルと「コットンUSA」綿花による複重層紡績糸「ツインレット」を開発した。不織布ではバイオマス認証とFSC認証取得のレーヨンスパンレース「アピタスB」、ダイワボウレーヨンの海水中生分解性確認済みレーヨンによる「アピタスE」、コットンUSA使い「アピタスC」をそろえる。生分解性バインダー繊維「ミラクルファイバーKK―PL」などもある。

 資源の内部循環・再利用にも取り組み、不織布の端材の再利用を推進する。各工場が連携し、環境負荷低減の高度化を進める。

〈「彩生」需要が急拡大/国内工場の10%再生糸に/新内外綿〉

 シキボウグループの新内外綿が2020年に始めた、廃棄繊維から再び糸を作るアップサイクルシステム「彩生」。ファッション・繊維業界での“環境”意識の高まりから、この仕組みを活用する企業が急速に増えている。

 アップサイクルの試みを行う紡績は他にもあるが、彩生は①色の付いた反毛わたも原料に使える②綿に限らずポリエステルやポリエステル綿混といった多様な素材にも対応する③糸の重さで500キロという小量対応に加え、タイの協力工場で3~4トンというまとまった発注にも対応する――といった強みがある。

 岐阜の紡績子会社、ナイガイテキスタイルの“彩生”糸の生産設備の稼働率は上限に近い状態にある。現在、この工場の生産量の5%程度をアップサイクル糸が占めているが、需要は高止まりが続く。新たな設備投資も検討した上で、アップサイクル糸の割合を生産量全体の10%にまで引き上げる計画だ。

 シキボウも今期、「彩生」の名前で廃棄繊維のアップサイクル事業をスタートする。新内外綿は色糸を、シキボウは生成り糸のアップサイクルをする。10月上旬開催の北陸ヤーンフェアで共同ブースを構えて双方の再生糸を披露する予定。