環境特集(4)/わが社の環境戦略/旭化成/三菱ケミカルHDG/ユニチカ/クラレトレーディング

2022年06月27日 (月曜日)

〈グローバルな生産体制を駆使/「ロイカEF」で/旭化成〉

 旭化成のロイカ事業部はマテリアルリサイクルで生産する「ロイカEF」、生分解性が特徴の「V550」という2タイプの環境配慮型スパンデックスを展開する。

 ロイカEFは工場内で発生した不使用糸などを原料とする世界初の再生スパンデックス。既に、GRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)認証を取得している。

 グループ会社の旭化成アドバンスが環境配慮型素材「エコセンサー」シリーズを構えており、ロイカEFと再生ポリエステル、同ナイロン、「ベンベルグ」などを複合した素材をスポーツ、インナー向けを中心に打ち出している。

 旭化成はかねて「プルミエール・ヴィジョン」や「アンテルフィリエール」などの海外展にロイカEFを出展しサステイナブルな物性のPRを強化してきた。

 これまでは守山工場で生産してきたが、昨年の秋からタイで量産に着手。22年度は4~6月期のどこかで台湾でもロイカEFを生産する。

 昨年の秋からは守山工場でV550の量産をスタートさせており、両素材をグローバルに供給できる体制を駆使し新規サプライチェーンの構築を急ぐ。

〈世界で評価される「ソアロン」/顧客のサステ対応にも貢献/三菱ケミカルHDG〉

 「ソアロン」は、三菱ケミカルホールディングスグループ(HDG)が製造・販売する世界唯一のトリアセテート繊維だ。オンリーワンであることはもちろん、環境優位性を持つことから世界中で高い評価を得る。独自の環境負荷測定プログラムで価値を高めているほか、顧客のサステイナブル対応にも貢献している。

 ソアロンは、天然のパルプと化学系原料を組み合わせた半合成繊維。持続可能な形で管理された森林の木材を使用し、森林管理協議会によるFSC―CoC認証を取得している。「エコテックススタンダード100」や「ブルーサイン」などの認証も取得している。

 2020年9月には環境負荷度を可視化するプログラム「ソアグリーン プログラム」を立ち上げているが、昨年バージョンアップを図り、生地の温室効果ガス(GHG)排出量の想定を可能にした。これにより各工程負荷や改善効果も定量的に把握できる。

 ソアロンの中肉生地1反には約14キロのCO2が固定化されている計算という。このため長期間の着用も環境負荷低減につながるとし、「消費者に長く愛用してもらえる商品を作っていくこともわれわれの使命の一つである」と話す。

〈「キャストロン」が滑りだす/経営企画室が主導/ユニチカ〉

 ユニチカは「もっと包括的に取り組んでいく」ため、2020年7月に設立したサステナブル推進室を技術開発本部から経営企画室傘下に移管した。

 同社は生分解性素材「テラマック」、植物由来のナイロン「キャストロン」、ケミカルリサイクルで生産する再生ポリエステル「エコフレンドリー」など幅広く環境配慮型素材を展開する。

 21年度は前半商戦が好調だったものの、後半商戦が苦戦へと転じ、「原燃料の高騰によって利益がやられた」と言う。

 現在、注目を集めているのがバイオナイロン・キャストロンだ。各方面から引き合いを集めており22年度は海外アウトドアブランド向けの販売が先行する。

 テラマックを活用しふんわりとした滑らかな触感を強調した“洗うほどふんわり空気を織り込んだタオル”も商品化。テラマックは「最近になって急に引き合いが増えてきた」と言う。

 フィルム事業では、プレコンシューマーによるケミカルリサイクル品を特定の顧客に販売しており、いずれは「ポストコンシューマーにも乗り出していきたい」との意欲を示す。課題は、異素材を貼り合わせてあるフィルムをどう分離するか、汚れをどう除去するかにあるという。

〈22年度は20~30%増/“繊維to繊維”に意欲/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングはスポーツ素材を中心に環境配慮型素材「エコトーク」を販売しており、2021年度は「エコ素材トータルの販売を伸ばすことができた」という。

 22年度は「エコトーク」全体で20~30%の増販(数量ベース、前年比)を計画しており、PET再生ポリエステルでエコ化した十字断面の吸汗速乾ポリエステル「スペースマスター」などで販促を強化している。

 同社はウエアラブル向けの素材販売にも力を入れており、「先方からエコ素材に切り替えてくれとの要望があれば、いつでも対応できる」と既に開発を終えている。

 最近は自動車業界からEV向けに生分解性ポリエステルを求めるニーズが強まっているという。既に開発に着手している。

 ポリエステル短繊維の方が「先行しそうだ」とみており、どれだけ特徴を持たせられるかが鍵を握っていると言う。

 業界としてこれから取り組んでいかなければならない課題として、“繊維to繊維”リサイクルを挙げる。

 使用済みの衣料品を回収しケミカルリサイクルで再び繊維によみがえらせる仕組み作りに「単独ではできないから、どこかと組んで取り組みたい」との意欲を示す。