技術の眼/技術の眼/サンコー/はるやま商事/東洋紡せんい/豊島/ファーベスト/DMノバフォーム

2022年06月03日 (金曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こしうる重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈サンコー/ペルチェ式冷却ベスト開発〉

 家電製造卸のサンコー(東京都千代田区)は、小型冷蔵庫の冷却システムでもあるペルチェ素子を活用したベスト「冷蔵服」を開発した。主に建設現場などでの利用を想定。初年度生産量は5千着とし、自社EC、直営店などで販売する。

 同社が開発したペルチェ式ネッククーラーが2年ほど前からヒット商品となっており、今回の冷却ベストはその技術を応用して製作。ベストの背中部分にペルチェ冷却システムを配置し、電気を入れると外気温からマイナス15℃に冷やされる冷却プレートが背中部分と密着し、直接冷たさを感じることができる。大型のファンでベスト内部に風を循環させることで汗を蒸発させる気化熱を発生させ、約3秒で体を冷却できると言う。

 電源は一般的なモバイルバッテリーを使用するUSB給電方式。ペルチェ素子とファンの動作時間は強設定時約4時間半、弱設定時5時間半。

〈はるやま商事/体組成計でスーツ採寸〉

 はるやま商事は、体組成計に乗ると約30秒でスーツの最適なサイズを提案するサービスを始めた。健康機器大手のタニタ(東京都板橋区)と共同で開発した新技術を活用する。スタッフの負担が減るとともに、接触減により新型コロナウイルス感染対策にもつながる。

 採寸はタブレット端末に性別、年代、身長を入力し、体組成計に乗りグリップを握る。体重や体脂肪率、筋肉量などのデータがタブレットに送られ首回りや胸囲、ウエスト、ゆき丈を自動で推定する仕組み。30秒ほどでジャケットやパンツ、スカートの適切なサイズのほか、体形に合った具体的な商品も提案する。店員の接客を受けずにスーツを選びたい客の需要も見込める。

 スタッフが手作業で採寸したサイズとの一致率は男性で96.2%、女性で95.2%という。

 試験導入による運用状況を踏まえ、顧客の健康促進を図る目的で既に体組成計を設置している30店舗に順次拡大する計画。

〈東洋紡せんい/天然繊維をプラスチックに〉

 東洋紡せんいは、綿素材を繊維強化プラスチックの強化材として利用する“天然繊維プラスチック”の開発と提案を進めている。酢酸セルロース樹脂などと複合することで生分解性を実現できるほか、縫製工程で発生する裁断くずのアップサイクルの取り組みにも応用する。

 開発を進めているのが、綿糸を酢酸セルロース樹脂に混合したバージンコットンプラスチック。特殊な酢酸セルロース樹脂ペレットを製造販売するネクアス(福井県坂井市)との取り組み。射出・押出成形ができ、高柔性に優れるのが特徴。基材の酢酸セルロースと強化材の綿糸がともに生分解性を持つため、環境にも配慮したプラスチック製品を作ることができる。まずは生活雑貨や服飾資材の原料として提案する。

 同社は東洋紡グループの祖業である綿紡績を引き継いでいる。天然繊維プラスチックの開発を進めることで、非衣料分野でも世界的に高まる環境配慮への要請に応える素材提案を目指す。

〈豊島/廃棄予定の綿製品からデニム〉

 豊島は、服の国内循環の確立を目指すプロジェクト「WAMEGURI」(ワメグリ)の第1弾として、廃棄予定の綿製品を再利用して商品化する取り組みを始めた。ライトオン(東京都渋谷区)との協業。

 このほど、ワメグリのスキームを活用したデニムの新ライン「サステナブルー」を発売。これを皮切りに、さまざまなブランドと協力の輪を広げ、リサイクル工程を国内で完結させる仕組みをアパレル業界に定着させる。

 サステナブルーは、ライトオンが回収した綿製品を再利用する。新内外綿(大阪市中央区)の協力のもと、回収した衣料をわたに戻した後、糸に再生し商品の原料の一部にする。

 商品はメンズのGジャン(1万2900円)とデニムパンツ(8900円)、レディースのデニムパンツ(6900円)をそろえた。福岡市の「ライトオンららぽーと福岡店」限定で販売している。

〈ファーベスト/機能繊維の中わた開発〉

 長谷虎紡績グループのファーベスト(東京都中央区)は、高純度微粒子セラミックスを練り込んだ機能繊維「光電子」を使った中わたの新商品を開発した。従来の光電子中わたと比べて軽量感などに優れ、全体の90%以上に再生ポリエステルを使用していることも特徴。23秋冬物からアウトドア・スポーツウエア用途を中心に販売を始める。

 光電子は、遠赤外線効果による保温機能などを持ち、その特性を生かして開発したのが「光電子リンサレーション」。複数の太さの再生ポリエステル繊維を用いた多層構造体とすることでソフトな風合いと高い断熱性、圧縮・復元性などを実現した。湿潤時の保温性が高いこともポイントの一つとしている。

 再生ポリエステルが全体の90%以上を占めているなど環境負荷低減にも配慮した。ほとんどがペットボトル由来のマテリアルリサイクルポリエステルだが、一部にケミカルリサイクルポリエステルを応用している。

〈DMノバフォーム/寝具の中材に果物緩衝材〉

 高発泡ネット状緩衝材製造などのDMノバフォーム(長野県小布施町)は、果物の緩衝材を応用した寝具用中材を提案する。軽量化などを切り口に業務用敷ふとんなどに採用されている。

 寝具用中材は素材売り。ポリオレフィンを原料とするメッシュ構造の発泡体で、軽量で柔軟性や緩衝性、通気性に優れる。JIS試験方法に準じた圧縮試験では、8万回圧縮して24時間放置した後の復元率が95.5%で耐久性もある。抗菌・抗ウイルス機能なども付与できる。

 寝具メーカーの業務用敷ふとんに既に採用されており、敷ふとんを3分割した頭と足部分に同社のメッシュ発泡素材を使用。軽量で、旅館などでのふとんの上げ下げの負担を軽減する。

 枕やクッションの中材用に、ポリオレフィンを原料とする連続気泡発泡素材も提案する。さまざまな形状に加工でき、耐久性に優れる。焼却しても有害成分や有毒なガスが発生しない。