スクールユニフォーム特集(13)/素材メーカー編/学生服の価値を支える/ニッケ/東亜紡織/御幸毛織/菅公学生服
2022年05月27日 (金曜日)
〈環境に優しい「エミナル」/改めて“学生服の価値”訴求/ニッケ〉
ニッケは、詰め襟・セーラー服からブレザーへのモデルチェンジ(MC)が増加する中学校標準服に向けて、特殊紡績糸を活用した学生服地「エミナル」を重点提案している。製造工程でのエネルギー消費量が少ないなど、環境配慮素材としても訴求する。
エミナルは特殊な革新紡績糸を使用したウール・ポリエステル混学生服地。混紡するポリエステルには再生ポリエステルを使用し、特殊革新紡績によって製造工程で発生する二酸化炭素を従来品と比べて25%、洗濯時に脱落するマイクロプラスチックも約75%それぞれ削減する。
中学制服向けに混率もウール30%・ポリエステル70%混を基本としながら、ウールの高い品位を維持する。ストレッチ性やイージーケア性など学生服で求められる機能に加え、抗菌・抗ウイルス加工や撥水(はっすい)加工も付与できる。感性、機能、環境配慮を合わせて訴求する。高校制服向けの「ミライズ」と提案の軸に置く。
2023年入学商戦では、引き続きMC校数が高水準となることが予想されることから、アパレルや地域販売店との連携を強化し、ストレッチやウオッシャブル、抗ウイルスなど機能性に加えて環境配慮を重視した開発・提案を進める。教育現場でも重視され始めたSDGs実現への貢献も含めた“制服の価値”も改めて打ち出す。そのため廃棄ウールのリサイクルなどの研究開発にも取り組む。
〈柄物提案に強み/2ウエーストレッチも実績/東亜紡織〉
東亜紡織は、中学校の標準服ブレザー化の流れを受けて、得意の柄物提案を強みとして打ち出す。染色整理加工のソトーと連携して立ち上げたSDGs実現への取り組み「グリーンウールバリューチェーン」を学生服分野でも活用する。
中学校の標準服が詰め襟・セーラー服からブレザーに変更されるケースが増えてきたことで柄物の需要が増加した。ただ、地域の標準服の場合、複数のアパレルが共同で納入するケースが多い。このためアパレルからすれば独自に意匠権を持つオリジナル柄は投入しにくい。
これに対して東亜紡織はアパレルに意匠権まで含めて提供することで複数のアパレルが採用できる、いわゆる“フリー柄”素材を積極的に提案する。2023年入学商戦に向けても約90柄を用意した。
機能性への要求も強まる。紳士服地の技術を応用した2ウエーストレッチ生地「デュアルフレックス」も柄物のボトム地として採用実績ができ始めた。ニット生地のブレザーも増えており、それに合わせた着心地に優れるパンツ地として評価が高まる。
学生服でもSDGsへの対応が求められ動きが強まった。SDGsの各項目に沿ったチェックリストを共有し、バリューチェーン全体でSDGs実現に貢献するモノ作りを実行するグリーンウールバリューチェーンの取り組みを学生服地の生産にも活用する。
〈ウール低混率指向加速/ユニフォーム事業堅調/御幸毛織〉
御幸毛織ユニフォーム事業部の売り上げは、2022年3月期決算で堅調に推移した。このうち学生服分野は微増、メディカル向けと官需も堅調だったが、サービス、オフィスウエア向けは新型コロナウイルス禍の影響もあり振るわなかった。
学生服市場は、ウール20~30%の低混率が主流となっており、低価格品指向が一層加速している。繊細なファインウールを使用した高品位な表面感、光沢感が特徴の主力商品「プロタック」においても、ウール低混率でストレッチ機能を付加した製品開発を進めており、今夏からの展開を目指す。
学生服標準化の波は今後、生地値の下押し圧力につながるとみており、製品開発に当たっては、これまで以上に原価を抑えながら高品質の製品を提供する取り組みが求められている。
コスト面のメリットを生み出すために、オフィスウエア向けの生産で実績のある中国協力工場での生産を検討していた。しかし、新型コロナ禍や為替急変動の影響を考慮して現在はいったん見合わせ中。羊毛価格はじりじりと上がってきているが、それ以上に為替変動による影響を懸念する。
東洋紡グループ間では、4月に発足した東洋紡せんいなどとともに、技術交流や製販一体となった協力体制を築いていく。
〈菅公学生服/学生がバスガイド制服企画〉
菅公学生服はこのほど、デニム・ジーンズ製造卸のジャパンブルー(岡山県倉敷市)と下電観光バス(岡山市)と連携し、岡山県立岡山南高校(同)の生徒が下電観光バスのバスガイド制服をデザインする企画をスタートさせた。同校服飾デザイン科が2014年から主催する「産学連携実学体験プロジェクト」(MPS)の一環となる。
5月12日には第1回講義が行われ、同科の2年生36人が参加。冒頭で菅公学生服の担当者がMPSの活動を振り返った後、各社が講義した。
下電観光バスは制服に求めることについて、バスガイドの仕事を例に挙げながら紹介した。生地に岡山県産のデニムを使って観光の振興につなげることも目的の一つ。ジャパンブルーはデニムの製造工程や周辺知識などを生徒に伝えた。
参加した白石深愛さんは「企画を通して皆の意見をまとめるコミュニケーション能力を身に付けたい」と話した。今後は9月にかけて、講義や企画書の作成などを5回程度実施。9月中旬に企画案を絞り込んだ後、12月初旬に制服の最終案を披露する予定だ。