クローズアップ/東レ 不織布事業部長 安東 克彦 氏/値上げと高度化が喫緊の課題

2022年05月20日 (金曜日)

 紙おむつ向けのポリプロピレン(PP)スパンボンドをグローバルに展開する東レ。ポリエステルスパンボンド「アクスター」では昨年、増設を行い、既に2021年10~12月期にフル稼働させた。長短総合不織布メーカーを目指しており、22年度(23年3月期)もさまざまな施策を実施する。今年から現職に就いている安東克彦不織布事業部長に当面の戦略を聞いた。

  ――21年度の状況はいかがでしたか。

 用途によって凸凹はありますが、全体としては増収増益を達成できました。想定外だったのは、中国で紙おむつ需要の伸び率が鈍化してきたことです。15~16年ごろ、中国では乳幼児の人口が21年で1400万人くらいに増えるとみられていましたが、実際は1千万人強にとどまりました。グローバルな需要は今後も拡大を続けるでしょうが、中国頼みの事業運営は難しくなってきました。日本での需要増も期待できません。今、中国よりも勢いがあるのは東南アジア、特にインドネシアです。インドもまだまだ伸ばせる余地があります。今後も両国向けを伸ばしていきます。

  ――22年度、重視しているのは。

 まずは値上げです。単純な値上げだけでなく、付加価値品への品種転換で新しい価格体系を作ることにも取り組まなければなりません。

 事業の高度化にも引き続き力を入れていきます。アクスターで低目付け品の開発に取り組んでおり、いろいろと種まきをしていますが、面白い事業になりそうです。

  ――PPをどう高度化しますか。

 顧客の要望に応じた開発で風合い、機能性を引き上げていきます。よりソフトでより軽い原反の開発も強化しています。最近はPPでもサステイナブルへのニーズが出てくるようになりました。リサイクル原反の開発が進行中です。

  ――アクスターの近況は。

 昨年、30%の増設を実施し、10~12月期でフル稼働させました。フィルター向けを主力に建材や土木向けに販売しています。各国で環境規制が強化されるに伴い、集塵(じん)機向けの販売が伸びています。フィルターにはさまざまな種類があり、顧客の要望に沿った開発を強化しラインアップを充実させてきました。低目付け品の開発にも取り組んでおり、これで新規用途を掘り起こします。

  ――長短総合不織布メーカーを目指しています。

 PPS繊維「トルコン」と耐炎化糸で開発した難燃・遮炎「ガルフェン」がここに来て伸びてきました。今後はトルコンやフッ素繊維「トヨフロン」のような高機能繊維による開発を急ぎ、原反の販売につなげていきます。