中国繊維産業/上海・都市封鎖から1カ月/「08年金融危機以来の衝撃」警戒

2022年05月02日 (月曜日)

 中国最大の経済都市、上海が新型コロナウイルスの感染拡大で都市封鎖されて1カ月。メーカーから商社、小売りまで繊維産業は大きな打撃を受ける。一部工場が再稼働を始めたが、封鎖の全面的解除は見通せず、業界関係者は焦りを募らせる。影響の長期化を見越し、「2008年の金融危機(リーマンショック)以来の衝撃」に身構えるメーカー関係者もいる。(岩下祐一)

 都市封鎖が続く中で、上海証券取引所の株式指数、上海総合指数が急落している。4月25日には20年6月以来の安値を付けた。高級レディースの上場企業、深セン歌力思服飾と日播時尚も株価が20%以上落ち込んだ。

 封鎖の経済への影響は甚大だ。香港中文大学などの専門家は、上海を半月封鎖した際の経済損失を約1900億元と試算する。都市封鎖が上海から周辺都市に広まれば、損失はさらに大きくなる。

 今のところ、周辺都市は江蘇省昆山など一部を除き持ちこたえている。一時的に封鎖された浙江省海寧や江蘇省南通は、現在は封鎖が解除されている。南通の日系大手繊維メーカーは都市封鎖を受け、4月6~14日に多くの社員が工場内に泊まり込んだが、15日に封鎖が解除され、正常な体制に戻した。

 上海の都市封鎖は、繊維産業の川上から川下に打撃を与える。商社やブランドは物流倉庫を上海に置いているところが多く、荷物が動かせない。「備蓄品が上海倉庫にあり、商売にならない」と日系生地商社幹部は述べる。上海に本拠地を置く日系ライフスタイルブランドは、江蘇省太倉にある倉庫の休業でネット通販の商品補充ができない。

 上海以外の都市のブランドの商況も芳しくない。寧波合創億元品牌管理の高級メンズ「アイヴィディック ステュディオ」は、上海以外の他都市の15店の4月売上高も落ち込んだ。「影響は大きい。成都や杭州が厳しい。新型コロナ禍で開いたり、閉めたりだ」と李建春ブランド総監は話す。

 周辺都市での繊維生産にも影響が出ている。輸出が中心の浙江省紹興のニッターは、稼働こそできているものの受注量の減少に悩む。上海の都市封鎖が長引けば、「08年の金融危機以来の衝撃を受ける」と警戒する。

 一方、上海市は4月16日、666社の「再稼働重点企業リスト」を発表。これに続き、一般企業の工場の再稼働申請の受け付けを始めた。

 再稼働企業の最大のボトルネックが物流だ。他都市と上海を結ぶトラックの不足で、運送費は平時の3~5倍に高騰している。ドライバーが上海から出ると14日間の隔離を求められることが、トラック不足の要因だ。

 4月25日に再稼働した生地メーカー、泉欣織造新材料は金山の工場から江蘇省呉江区にトラックで貨物を送ったが、上海からの貨物であることを理由に、呉江区の入口で受け入れを拒否された。混乱はしばらく続きそうだ。

 上海市の新型コロナ禍の感染者数は、現在も高水準を保つ。ゼロコロナ政策が転換されるかは不明な中、当初期待されていた労働節(4月30日~5月4日)明けの全面的解除は遠のいている。工場再稼働を優先しながら、その他の企業の活動も徐々に認め、市民生活を正常化に近づけていく――こうしたシナリオが現実的か。先が見通せない中、業界関係者は不安と焦りを募らせている。