春季総合特集Ⅴ(3)/トップインタビュー/菅公学生服/リアル、オンラインに柔軟に対応/社長 尾﨑 茂 氏/一気通貫の体制で効率化を

2022年04月27日 (水曜日)

 菅公学生服は今春も学生服のモデルチェンジ(MC)校の獲得が堅調で、2022年7月期に目標としていた売上高400億円の達成を視野に入れる。コストアップなど外部環境は厳しさを増しているが、デジタル化に加え、営業から生産、物流までを一気通貫でつなぐ業務センターの構築など、業務改革を進めながら会社を進化させる。

  ――ウイズコロナ時代の成長の要件は何でしょうか。

 オンライン化を進めていくしかないでしょう。当社では新型コロナウイルス禍前からそのような体制は整えてきていました。昨年にはオンライン工場見学として、倉敷工場(岡山県倉敷市)の様子を撮影した動画を配信し、全国の小学校向けに教材として活用してもらうなど、さまざまな観点から取り組んでいます。

 営業活動においては、オンラインのほか、リアルでの対応を求められることもあります。要望に合わせて柔軟に対応していくしかありません。

  ――新型コロナ禍では密や接触を避けるAI(人工知能)を使った採寸が広がりました。

 当社もAIを活用した「スマート採寸」を推進しています。昨年の入学商戦では全国124校の学校で導入していただきました。AIによる採寸について様子見をしていた人たちも導入に動き始め、今春は約500校に増えました。

  ――今年の入学商戦の進捗(しんちょく)は。

 新型コロナの影響で、工場の操業がうまくいかなかったり、外国人技能実習生が予定通りに入国できなかったりと、苦労しています。その中でもMC校の獲得は、性的少数者(LGBTQ)への配慮の流れから、中学校を中心に増えました。

 以前から当社が中学校に強かったという要因もあるでしょう。ただ、開発分野における国際社会共通の目標であるミレニアム開発目標(MDGs)が2000年代にまとめられていたことが示すように、世界が多様性を求める流れは既にありましたし、遅かれ早かれこの流れが来ることは分かっていました。当社は取り組みも早く、バリエーションを示せたことがMC校数を伸ばせた大きな要因ではないかと感じています。

 まだLGBTQ対応に動いていない地域が大多数。来年もこの流れは続くでしょう。

  ――人材育成やキャリア教育などを行うカンコーマナボネクト(岡山市)を中心に、教育ソリューション事業にも力を入れています。

 さまざまな取り組みを案件化して行っており、当社のサービスが「外せない」と言われる学校も増えてきています。まだ収益化には至っていませんが、生徒の非認知能力の育成やキャリア教育などを推し進め、学校との関係作りにつなげていきます。

  ――設備投資について。

 ニットブレザーやニットシャツなど、一昔前にはなかった商品が常設のラインを設置しなければならないほどの量になるなど、年々生産品目が変化してきています。ブレザー化や、女子制服でもスラックスを選択できるようにする流れによってスラックスの生産も増えており、専用の生産ラインを立ち上げました。昨年にはフランス・レクトラ製のCAM(自動裁断機)も導入しましたが、こちらもあと2台ほど入れることも考えており、細かい部分での設備投資はたくさんあります。

 営業から生産、物流までを一気通貫で一元的につなぐ生産性の高い業務センターの構築も進めています。来年度中に生産までつなげる予定で、これによって内部管理コストは格段に下がってくるでしょう。手書きで申し送りをするといったようなアナログな部分はなくしていかないと。もっと顧客に価値を伝えていくような部分に特化していかなければなりません。

 物流面では、倉敷市児島に物流倉庫を建設中です。刺しゅうや裾上げ、セット組みに必要な機具はもちろん、省力化につながる設備も導入します。

  ――22年7月期の見通しは。

 昨年に学生衣料卸のママダ(茨城県筑西市)の事業を譲り受けました。これに加えて値上げなどの要因もあり、目標としていた400億円は達成できるとみています。

〈春を感じる時/花粉症に悩まされる〉

 「花粉症の症状が出始めたら春を感じる」と話す尾﨑さん。「社会人になった時にはかかっていた」といい、毎年春になると花粉症の症状に悩まされている。特に今年の花粉はかなりきついようだ。毎日薬を服用しており、「弱い薬だと効かず、強めの薬を使用している」。ただ、その薬を飲むと「眠くなるし、声ががらがらになって出せなくなる」など副作用が。「何も良いことがない」と苦笑する。

〈略歴〉

おざき・しげる 1998年尾崎商事(現・菅公学生服)入社。2001年取締役、03年専務。06年から社長。