春季総合特集Ⅲ(6)/トップインタビュー/クラレトレーディング/人材教育が鍵握る/社長 山田 武司 氏/付加価値ビジネスに重点

2022年04月25日 (月曜日)

 クラレトレーディングの中期経営5カ年計画が1月に始動した。最終2026年度(12月期)の業績目標は連結売上高1500億円、同営業利益60億円とする。「付加価値化をさらに徹底したい」と、山田武司社長はかねて追求してきた差別化路線の強化・拡大に意欲を示す。

  ――ウイズコロナの時代を生き抜くには何が必要だとお考えですか。

 新型コロナウイルス禍に伴い、多くがリモートに変わりました。気になっているのは、コロナ対策で若手や中堅が対面による商談ができなくなってしまったことです。

 この辺りをうまく切り抜けないと5年後、10年後には大変なことになってしまうと私は危機感を強くしています。現場の部長からも同様の危機感が伝わってきています。

 商社の財産は何といっても人材です。最近は極力、研修を増やしてトレーニングの機会を持つようにしています。救いはわれわれの世代とは異なり若手はリモートに慣れていることでしょうか。

  ――新中期計画における重点戦略は何ですか。

 以前にも増して付加価値ビジネスを拡大しようと考えています。その典型がポリエステル長繊維「クラベラ」です。クラレの糸を使って付加価値のある生地にする、あるいは縫製品でアパレルに供給する。スポーツを中心に展開するこのビジネスをさらに拡大します。人工皮革「クラリーノ」、産業資材、不織布でも加工で付加価値を高めた商材を増やします。

  ――環境配慮型素材「エコトーク」シリーズの状況は。

 21年度に、「クラベラ」全体に占める比率を35%まで伸ばしました。22年度におそらく40%台に乗ってくるでしょう。26年度は100%近い水準に引き上げることが目標です。

 部分バイオポリエステル「バイオスペース」の拡販も強化してきました。ペットボトル再生繊維では、どうしても生産できる糸種に限界があります。その点、バイオならばほとんどの糸種をストレスなく作ることができる、よりクラレらしい取り組みだと感じています。

 スポーツや企業別注ユニフォームを中心に引き合いは旺盛です。現在は海外メーカーからチップを調達して生産していますが、いずれはバイオ原料を調達し重合を手掛けてみたいと思っています。

  ――海外生産もリンクさせたスポーツOEM事業が順調のようです。

 ベトナムの協力企業と連携し、現地でテキスタイルから縫製に至る一貫生産体制を構築しています。現地では、建屋を借りて当社が設備投資しミシンを入れています。現地の従業員を、日本から派遣する当社スタッフが管理・教育しています。

 この間、着実に業績を伸ばしてきました。今年もスポーツOEMでは2桁%の拡販を計画しています。昨年は昇華プリントを増やすために設備投資を行いました。今年はミシンを増やします。

  ――EMS(筋電気刺激)を先行させる形でウエアラブルに参入しました。

 20年からウエアラブル向けにスマートテキスタイルの販売をスタートさせました。先方の販売が好調で、当社の販売も21年は4倍増に拡大しました。今年も相当の幅で拡販ができるとみています。

 今年もかなりの量を受注していますが、半導体不足でスマートテキスタイルを加工する工程への設備投資が遅れています。さまざまな用途を開拓することを模索していて近々、高齢者向けなどへも販路が広がる見通しです。

 ウエアラブルではまだどこも大きくは成功していないのが実態でしょう。われわれもどういうビジネスモデルが最適なのか、何をすれば利益を上げることができるのか、探索の段階にあります。

  ――婦人服地やブラックフォーマル、中東輸出の状況はいかがですか。

 婦人服地には是々非々で対応していきます。ヌバック調「エルモザ」を非衣料・産業資材にも広げていくための開発に取り組んでいます。

 中東輸出からは22年度上半期で撤退します。ブラックフォーマルは今後も丁寧に対応していきますが以前のように量を追うことはしません。

〈略歴〉

 やまだ・たけし 1984年4月クラレ入社、04年6月クラレトレーディング衣料カンパニーテキスタイル部長、06年4月同カンパニースポーツ部長、12年4月衣料・クラベラ事業部副事業部長兼衣料・クラベラ事業部スポーツ部長、14年4月可樂麗貿易(上海)総経理、15年3月クラレトレーディング取締役、18年3月常務、18年7月常務繊維事業統括兼衣料・クラベラ事業部長委嘱、20年4月代表取締役社長

〈春を感じる時/2月末の梅の開花〉

 大阪城の近所に住んでいるせいか、2月末に開花する梅、その次の桃、最後に桜が咲くのを例年、見に行っているという。中でも、「梅の開花に春の訪れを強く感じる」のだという。3月のある日曜日、大阪城近辺に行ったときは、「昨年よりもちょっと遅いが、桃が奇麗に咲いていた」。造幣局の桜の通り抜け、大阪城公園、桜ノ宮の川沿いなど例年、春の開花を定点観測するポイントが何カ所かあるそうだ。