タイ東レグループ/一貫生産の強み生かす/織物でポートフォリオ転換

2022年03月25日 (金曜日)

 タイ東レグループは、合繊長繊維製造のタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)と紡織加工のトーレ・テキスタイルズ〈タイランド〉(TTT)による一貫生産体制を生かし、新規用途、新市場開拓に取り組む。特にTTTは主力のシャツ地や裏地に加えてユニフォーム地やスポーツ素材の販売拡大で生産・販売品種の構成を変え、業績の改善に取り組む。

 2021年度(22年3月期)は新型コロナウイルス禍の影響が続いたものの、事業によっては業績が大きく改善している。特にTTSは世界的な自動車生産台数回復によってエアバッグ原糸の販売が拡大し、業績をリードする。

 衣料用ポリエステル長繊維も延伸糸(SDY)は主力用途である裏地の需要減退で苦戦したが、仮撚り加工糸(DTY)は再生ポリエステル「&+」(アンドプラス)使いが有名アパレルに採用されるなどで好調。このため同社の売上高は新型コロナ禍前の19年度実績を上回る水準で推移している。

 一方、TTTは苦戦が続く。エアバッグ基布は旺盛な販売が続いているものの原料価格が急騰。原料価格に連動する価格改定のタイミングが追い付かないため採算が悪化した。

 衣料用ポリエステル・綿混織物も主力用途であるシャツ地の需要回復が遅れていることに加え、原燃料高騰や物流費上昇で利益を圧迫する。ポリエステル短繊維織物は主力市場であるインド、バングラデシュ、アフリカでロックダウンが相次ぎ販売が停滞した。ポリエステル用繊維織物は裏地の需要減退が続いている。

 このため22年度も織物事業の再構築に引き続き取り組む。在タイ国東レ代表の松村正英執行役員トーレ・インダストリーズ〈タイランド〉社長は「新型コロナ禍で生活様式が変わる中、原糸から加工までの一貫生産を生かし、ニーズをとらえた高付加価値な商品開発が一段と必要になる」と話す。

 ポリエステル・綿混織物は安定した需要があるユニフォーム地、学販シャツ地、ブランド向けシャツ地などの販売を強化する。ポリエステル短繊維織物はインド市場の開拓に力を入れる。ポリエステル長繊維織物は裏地だけでなくスポーツ向けなど表地の比率を高める。

 原糸からの開発も重視する。TTSは好調のDTYの増設を検討するほか、SDYもスポーツ向けに複合紡糸の開発などに取り組む。

 スポーツ用途での提案にはサステイナビリティーへの対応も不可欠。TTTがサステイナビリティーを確保した「ベター・コットン・イニシアチブ」(BCI)認証、リサイクルが実施された製品であること証明する「グローバル・リサイクルド・スタンダード」(GRS)認証、労働環境なども含めたサステイナブル生産体制を証明する国際認証「エコテックス・ステップ」を取得していることも生かす。