帝人/洋上にアラミドの市場/浮体式風力発電の係留ロープなど

2022年03月25日 (金曜日)

 帝人は、“洋上”にパラ系アラミド繊維の新市場を求める。船舶の係留ロープやクレーンのワイヤーロープ(クレーンペンダント)のほか、浮体式洋上風力発電係留ロープの需要拡大に期待をかける。これらはスチール製が主体だが、パラ系アラミドが持つ強さや軽量感などの特性を訴求し、販売拡大につなげる。

 パラ系アラミド繊維の「トワロン」「テクノーラ」は、高強力や耐熱性、低クリープ性などの特徴を持ち、自動車関連やゴム補強材をはじめとする幅広い用途で採用されている。今後の持続的成長を図るため、パラ系アラミド繊維が活躍できる新しい領域として洋上に目を向ける。

 中でも拡大が望めるとみるのが、再生可能エネルギーとして注目が集まっている浮体式洋上風力発電の係留ロープだ。現在の主流であるスチールチェーンと比べて軽量化が可能で、全体のコスト削減に貢献。海水中でも十分な耐久性を発揮する。送電のための海底ケーブルでも提案する。

 風力発電翼をヘリコプターなどで運ぶ際に使用するスリングベルト(産業用のつり下げベルト)用途にもテクノーラを織物会社に提案する。腐食しない、クリープが発生しない、寸法安定性に優れるスリングベルトが作れる。一般的な製品と比べて低重量であることもポイントだ。

 船舶の係留ロープにも焦点を当てる。アラミド繊維を芯に、超高分子量ポリエチレンフィルム「エンデュマックス」でブレーディングしたタイプなどを打ち出す。船舶係留ロープの世界需要は年間5千トン程度と推定されているが、スチール製も多く、繊維への置き換え需要に期待する。

 そのほか、港湾などに設置されているクレーンのワイヤーロープ用途の開拓も進める。スチール製と比べて重量が約80%と軽く、ハンドリングや運搬が容易。225㍍までの長尺にも対応(精度誤差1ミリ以下)できる。腐食せず、メンテナンスフリーも特徴の一つ。

 ケーブルメーカーのファイバーマックス社(オランダ)によると、スチール製は「1万5千サイクル(クレーンの上げ下げ1回で1サイクル)で交換が必要になるが、アラミド繊維を使った製品は70万サイクル使用できる」と言う。