新たなステージへ 素材メーカー系商社のいま(7)/帝人フロンティア/医療用ガウン一貫生産へ

2022年03月16日 (水曜日)

 帝人フロンティアは、医療用ガウンの国内一貫生産に乗り出す。有事における急激な需要拡大への対応と長期的に安定して供給できる体制を作るのが狙い。約20億円を投資し、帝人の松山事業所(松山市)に自動化設備を備えた工場を新設する。今年12月に生産を始める。

 医療用ガウンの国内需要に関する正確な数字はないが、同社は「元々数千万着はあった」と推定し、それが新型コロナウイルス禍で「一気に増えた」とみる。一方で国内ではほとんど生産されておらず、輸入に頼っているのが実情。安定供給の観点などから国産化の要望が高まっている。

 このような流れを受けて今回の新工場建設を決めた。帝人グループで国内最大の事業所である松山事業所(北地区)内の既存建屋に不織布製造設備とラミネート加工からなる生地生産設備、自動縫製設備を導入する。不織布から製品まで一貫で製造する。

 縫製工程の自動化がポイントの一つだ。医療用ガウンを縫製する一般的な工場と比較して人員一人当たりの生産性が7~10倍に高まるため、配置人員の少数化が可能になる。人と人との接触を避けた工場運営につながり、パンデミック下のような有事でも生産・供給が維持できる。

 不織布も特殊な製造設備を導入する。従来のガウンはスパンボンド不織布使いが多いが、気密性向上のために「新しい乾式不織布を作る」と話す。ポリプロピレンやナイロン、ポリエステルなどを応用し、ポリエステルは再生タイプを使用する。将来は販売したガウンの回収、製品に再生するシステムの構築も図る。

 不織布へのラミネート加工とシームレス縫製の採用で、米国医療機器振興協会が定めるガウンやドレープなどのバリア性能の世界的基準AAMIレベルに準じた製品が生産できる。パターン設計や付属品に工夫を施し、着脱のしやすさや動きやすさを加味。これらで着用快適性につなげる。

 2022年度(23年3月期)に200万着、25年度に600万着の生産を予定している。年間で最大1800万着の生産が可能で、感染症の拡大など、有事の需要増加にも対応できる。販売動向や市場ニーズによっては「1800万着以上の生産も検討」する。

 生産開始後は、国内を中心に帝人フロンティアが医療機関への販売を行うほか、医療用品販売会社などへの展開も実施する。

(おわり)