新時代の要求に応える検査機関/カケン/QTEC/ニッセンケン/ボーケン

2022年01月04日 (火曜日)

 新型コロナウイルス禍は繊維・衣料品業界を大きく揺るがし、検査機関へも小さくない影響を与えた。抗ウイルス性や抗菌性に関する依頼は増加したものの、一般試験では厳しさも見られた。求められる機能も変化しつつあり、試験・検査の実施にとどまらない機関に変貌を遂げようとしている。

〈カケン/機能や非繊維がポイント〉

 カケンテストセンター(カケン)は、2020年度(21年3月期)を初年度とする3カ年の中期経営計画を進行中だ。22年度はその仕上げの年となるが、昨年に東京事業所バイオラボ(埼玉県川口市)を開設するなど、寺坂信昭理事長は「次に向けて体制を整えた」と強調する。機能性や非繊維をキーワードに一層の成長を目指す。

 これまでマスクや抗菌性、抗ウイルス試験は大阪事業所の生物ラボ(神戸市)で行ってきたが、バイオラボが立ち上がったことで対応力が高まった。

 バイオラボはマスクや抗菌性試験で稼働を始めたが、抗ウイルス試験についても開始準備を進め、1月中にも繊維関係で試験の受託がスタートできる見込みだ。

 4月からは中期経営計画の最終年度を迎える。バイオラボや生物ラボなどを基軸に試験・検査技術の高度化に取り組みながら、「情報を持つ集団としてさまざまなサービスを提供することで顧客の活動に貢献」する。非繊維に関しては抗菌などを中心に多様な領域に広げる。

 試験・検査以外のサービスでは認証業務が代表的なものになるが、CSR監査やプロセス管理などについても積極的に応じる。

〈QTEC/成長の原動力は職員〉

 「職員の成長を実感できる瞬間が一番うれしい」。日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の山中毅理事長はそのように語る。検査機関にとって技術の高度化や対応力の強化は不可欠だが、その源になるのが人材と捉えているからだ。「職員の成長と、成長できる環境づくり」には継続的に取り組む。

 QTECは昨年の9月、本部と海外事業所を移転し、本部と東日本事業所、東京試験センター、海外事業の一体運営体制を敷いた。移転を機にさまざまな職場改善も実施し、例えばビルの7階に誰でも自由に使えるフリースペースを設けた。これらの職場改善と健康経営、人材教育で職員の成長につなげる。

 実際に、山中理事長が指示をしなくても「自ら率先して物事に取り組む職員が目立ってきた」と話す。職員の成長は国内だけでなく、海外の駐在員にも見られると言う。

 2022年度には新中期経営計画を始動し、キャンプ用テントのSGマーク認証試験業務をはじめ、QTEC特有の機能や強みを原動力にして計画を推進する。海外では技術力やCSR監査の強化などに取り組む方針であるほか、知名度や顧客満足度の向上にも力を入れる。

〈ニッセンケン/ノウハウ生かしコンサルも〉

 新型コロナウイルス禍などで事業環境が変わる中、ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)の駒田展大理事長は、「検査機関には新試験の開発やコンサルティング業務の強化などが必要になる」と話す。ニッセンケンも衣料向けの単純な試験だけでは難しいとし、需要が拡大している分野や得意分野とする分野を深耕する。

 その一つが、衣料品などの繊維製品の安心・安全を証明する「エコテックス」認証で積み重ねてきたノウハウの活用だ。環境への対応が厳しく問われるようになり、製造会社には化学物質の管理などがこれまで以上に求められる。化学物質などに関するコンサルティング業務に取り組んでいきたいとしている。

 昨年4月には、エコテックス事業とバイオケミカル事業、香粧品分析事業の三つを集約し、「ライフ アンド ヘルス事業本部」を発足した。繊維に加えて、食品、住居、化学、医療などの分野の開拓を加速する。

 海外では中国と南アジアに重きを置き、現在の事業を大きく育てる方針だ。ただし、中国については必ずしも日本市場向けの生産拠点とは言えなくなっている面があり、事業転換を図る必要があると捉えている。

〈ボーケン/「未来に選ばれる」掲げて〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は2022年度(23年3月期)から新たな中期経営計画をスタートさせる。「未来に選ばれるボーケン」をテーマに掲げ、試験業務に続く新たな需要創造に取り組む。吉田泰教理事長は「改めて検査機関の役割を作っていく」と話す。

 機能性事業はラボ拡張を生かして抗菌・抗ウイルス性試験の拡大を進める。ユニチカガーメンテックやバイオメディカルサイエンス研究会との提携で人体生理測定など新たなサービス開発を推進する。

 認証分析事業はSAC(サステナブルアパレル連合)やZDHC(有害物質排出ゼログループ)の各種教育プロバイダーとしての地位を確立する。日本バイオプラスチック協会会員として生分解性に関する開発も進める。

 繊維事業は衣料だけでなく業界を越えた企業からの依頼にも対応し、フェムテック性能など新分野の開拓に取り組む。生活産業資材事業は生活雑貨の抗菌・抗ウイルス性試験の拡大を進める。海外事業は試験業務に加えて工場監査サポートなどコンサルティング機能の拡充に取り組む。

 今年4月から品質支援事業本部を6番目の事業本部として立ち上げ、品質支援業務と教育支援業務を事業化する。