環境特集(8)/有力繊維企業/新内外綿/豊島/泉工業/ヤギ

2021年12月06日 (月曜日)

〈新内外綿/廃棄繊維を糸に“彩生”/環境関連の認証も強みに〉

 新内外綿が地球環境の保全につながる商材を増やしている。特に2020年から提案を始めた、廃棄繊維から糸を作る繊維リサイクルシステム「彩生」は繊維業界にとどまらず、エコや環境をテーマとした展示会でも注目を集めている。

 この仕組みは縫製工場などから出る裁断くず、余った生地、不要な製品を回収、反毛した上で、新たな原料を混ぜて再び糸にするというもの。繊維産業の環境意識の高まりも追い風に最近では生地製造業、商社、アパレルなど、顧客の幅を広げている。

 今年、川や海の汚染の抑止につながる合成繊維もパートナー企業と開発した。川に捨てられたペットボトルを海に出るまでに回収し、そのボトルを原料にする。川のボトルごみを減らすことで海への流出量を減らす。

 パートナーと組んで廃棄する漁網を原料に作る再生ナイロン糸も開発した。回収した漁網を再びペレットにし、新たな原料も混ぜた上で再生ナイロンわたを作り糸にする。

 環境関連の国際認証の取得にも力を入れている。同社の紡績子会社、ナイガイテキスタイルは17年にオーガニック綿の国際認証「OCS」を取得。新内外綿はOCSのオーガニック認証に加え今年1月に、親会社のシキボウと共にBCI(ベター・コットン・イニシアチブ)のプログラムにも参加した。認証という“信用力”も強みにサステイナブル素材の取引量を増やす。

〈豊島/環境美化で広がる連携の輪/活動内容多岐にわたる〉

 豊島は2021年、海、川、森の美化を図る活動「グリーン・アンド・ブルー・チャレンジ」を本格化させた。地域活動団体や地方自治体、企業などと連携してビーチクリーンを実施し、回収した漂着ペットボトルを糸に再生化して、繊維ブランド「UpDRIFT」(アップドリフト)として展開する。この循環システムの普及を目指す中で、イベントの開催や環境問題について学ぶ旅行の企画にまで活動が広がっている。

 沖縄・石垣島とは活動を通して関係が深まり、環境保全に協調して取り組む機運が高まっている。9月には同島で集められた漂着ペットボトル1・5㌧を豊島が引き取り、アップサイクルへの活用を始めている。23年をめどに、帽子やTシャツなどをアップドリフトの商品として発売する計画。

 石垣島では22年から、さらに新しい事業がスタートする。西表島と併せて八重山諸島の海洋ごみ問題について「じぶんゴト」として捉える旅行の場所となる。日本旅行と環境保護事業を行う縄文企画(沖縄県石垣市)との3社で取り組む。

 第1回目は22年1月下旬の予定。販売窓口は日本旅行が担うが、豊島も繊維業界に向けて参加を呼び掛ける。

 この他にも、ごみ拾いとジョギングを組み合わせたイベントやビーチヨガへの参加、環境問題に特化したドキュメンタリー映画の監督を招いたオンラインイベントの開催などがあり、活動範囲と共に連携の輪が広がっている。

〈泉工業/生分解性ラメ糸に注目/有名ブランドが採用へ〉

 ラメ糸製造卸の泉工業(京都府城陽市)は生分解性のあるセルロースや植物由来ナイロン、再生ポリエステルをフィルムに使用した環境負荷の小さいラメ糸を多彩に提案している。

 世界的にサステイナブル素材への要望が高まる中、特に生分解性ラメ糸「エコラメ」への引き合いも増加している。既に日本の有名デザイナーブランドが採用を決めたほか、ユニフォーム用途でも採用に向けた動きがある。欧米への輸出に取り組むテキスタイルメーカーもサステイナブル素材の採用は欧米アパレルとの商談参加の前提条件になっているだけにエコラメに対する関心は高い。

 同社はアルカリ減量加工など後加工にも対応したラメ糸「ジョーテックス」を主力とするが、使用するフィルムを再生ポリエステルにしたタイプも開発し、10月の「北陸ヤーンフェア」で披露した。こちらも注目度は高く、特にスポーツやカーテンなどの用途で引き合いが寄せられている。

 ラメ糸で環境配慮素材を豊富にそろえるメーカーは少ない。同社は蒸着を除いてフィルムスリットから撚糸まで一貫生産する体制を生かし、サステイナブルなラメ糸の開発と提案でラメ糸需要の開拓に取り組む。

〈ヤギ/有機栽培綿拡販が加速/PBPの訴求力も相まって〉

 ヤギが2020年に立ち上げたオーガニックコットンの総称ブランド「ユナ・イト オーガニック」は、上半期(2021年4~9月)の売り上げが前年同期比2倍になるなど好調に推移する。綿花価格高騰という逆風下でも、サステイナビリティーの需要を捉えた。

 同ブランドの強みはオーガニックコットン糸生産量世界一を誇るインドの紡績工場と提携した上で、幅広い番手を備蓄品番として取りそろえていること。番手は現在、20番単糸から100番双糸、甘撚りバージョンなど計23種。備蓄だけでなく別注対応にも力を入れている。

 インドから中国、インドからASEAN諸国向けなども拡大しており、この海外間取引に関する引き合いは前年と比べて5倍ほどに増えていると言う。

 同社はオーガニックコットンの普及を通じてインドの農家の自立や子供たちの就学を支援する「ピース・バイ・ピース・コットン・プロジェクト(PBP)」にも参画。ユナ・イト オーガニックの拡販に伴ってPBPの寄付金も自然に増えている。PBPの趣旨に反応した顧客がオーガニックコットンの購入を進めているとも言える。現に「PBPって何?」というアパレルからの問い合わせも多いと言う。

 再生原料使いの「ユナ・イト リサイクル」と併せ、「下期も上期を上回る販売量を想定」と自信を見せる。