ユニフォーム総合特集(9)/素材・副資材/ユニフォームのブランド力を支える/インビスタ/帝人フロンティア/東洋紡STC/東レ/モリリン/クラボウ/シキボウ

2021年11月12日 (金曜日)

 ユニフォームメーカーがエンドユーザーに対するブランドの発信を強める中、素材・副資材が果たす役割も重要になってきた。ユーザーが求めるユニフォームはデザイン性の高さだけではない。素材、副資材が持つ機能や風合い、質感などが“欲しい”と思わせるイチ押しにつながることがある。

〈インビスタ「コーデュラ」/納入や周辺商品も開拓〉

 インビスタジャパンは高耐久素材「コーデュラ」のユニフォーム向け販売で、これまでのショップ向けに加え、納入分野や周辺アイテム向けの開拓を進める。

 納入向けには、QR対応や静電糸使い、高い再現性などが必要となる。このため興和とともに、綿混の「コーデュラ NYCO」でメードインジャパンの生地開発を進めていく。

 周辺アイテムでは腰袋を開拓。こだわりの職人が使う腰袋「ニックス」ブランドで採用された。これによりワークウエアの方にも相乗効果が出ているという。

 コーデュラの日本市場でのワークウエア向け販売は、デニムトレンドを追い風に「コーデュラ デニム」が前年比倍増するなど拡大。ポリウレタン混のストレッチ織物やレインフォースメント(補強)用も広がっている。

 会員制交流サイト(SNS)での消費者向けの発信にも力を入れている。このほどインスタグラムの日本公式アカウントのフォロワーが10万人を突破。さらに昨年から、ユーチューブに公式チャンネルを設け、動画での情報発信も開始。この発信力を武器に採用先のブランド力向上にも協力していく。

〈帝人フロンティア/サステ素材を軸に成長〉

 帝人フロンティアのユニフォーム部は、ワークウエアや白衣用途などを軸に事業の成長を図る。提案商材は環境対応が中心となり、再生ポリエステルのほか、バイオ由来ポリエステルを訴求する。海外市場での販売にも力を入れ、2025年には売り上げ規模を現状の2倍に拡大する。

 ユニフォーム部の21年度上半期(4~9月)は、当初計画には届かない水準で推移したが、第2四半期以降は市況が急回復しており、年間では19年度比で10%の増収を目指す。人員・組織強化の成果発現に期待するほか、サステイナビリティーに応じた素材の打ち出しに注力する。

 環境負荷低減に貢献する「エコペット」やバイオ由来ポリエステル「プラントペット」が軸になるが、再生ポリエステルの標準化が進む中、プラントペットの訴求を強める。同素材はエチレングリコールが植物由来のため、化石資源の消費が抑えられる。

 国内での拡販に加え、海外市場にも目を向ける。日本からの輸出のほか、海外拠点を活用した地産地消で成長を狙う。

〈東洋紡STC/高機能ニットの販売伸ばす〉

 東洋紡STCは2021年度、引き合いの絶えない高機能ニットシャツ地「Zシャツ」「Eシャツ」の拡販を計画。清潔、安全に対するニーズには抗ウイルス素材「ナノバリアー」などで対応する。

 新型コロナウイルス禍の影響で20年度は苦戦を強いられた。21年度は回復基調を迎えているものの、「19年度並みの業績に戻るのは早くても22年度から」とみる。

 21年度は、「少なくとも販売量を20~30%伸ばせる」との手応えを示すZシャツ、Eシャツを打ち出す。

 ユニフォーム分野でも、ジャケットやパンツで素材のニット化が進んでいるとみており、中肉以上のアイテムには「スクラムテック」を投入し新規顧客の開拓を目指す。

 スクラムテックはポリエステルとPBT繊維のような高弾性糸とを交編し軽量・ストレッチ性を持たせた高密度な丸編み。ハリ・コシにも優れているため製品映えするのも売り。

 ナノバリアーでは病院白衣向けを中心とするアプローチに重点化。ペットボトル再生ポリエステル「エコールクラブ」による企画提案にも力を入れていく。

〈東レ/コンセプトは環境・安全・快適〉

 東レは環境、安全、快適をコンセプトに開発した素材群の販促に力を入れる。部分バイオポリエステル「エコディア」、ペットボトル再生ポリエステル「&+」(アンドプラス)や抗ウイルス加工「マックスペックV」、使い切りの保護服「リブモア」などを打ち出している。

 2020年度は新型コロナウイルス禍で苦戦を強いられたものの、21年度は全体的に業績が回復基調にあり、「上半期は予算を超過達成した」。業界での在庫調整が進んだ主力のワークウエアの商況も上向いているという。

 21年度はエコディアの販路をワークウエアや学生衣料にも拡大。アンドプラスはトレーサビリティーの確かさが評価され引き合いが急増しており、22春夏から本格販売に入る。

 適度なストレッチ性が特徴の「ライトフィックス」「プライムフレックス」の販売は依然、好調に推移。海外市場に対応した企画提案にも着手しており、22年度からのデリバリーを目指す。

 リブモアでは、下半期に新タイプを投入。20年度は3倍増の販売を達成しており、21年度は「今のところ倍増ペースを維持している」と言う。

〈モリリン/原着ポリ短で高堅ろう度とサステ〉

 モリリンは原着ポリエステル短繊維の「タフイーズ」と、原着レーヨン混の「タフイーズMIX」の提案を進めている。いずれも織物や編み地で展開しており、イージーケア性に加えて、原着ならではの高堅ろう度や染色工程を省くことによるサステイナブル性も併せ持つ。

 タフイーズは同短繊維100%。特殊な紡績と短繊維による綿ライクな風合いが特徴で実用新案も取得済み。タフイーズMIXは同短繊維と原着レーヨンの混紡糸を使用しており、レーヨンを複合することでソフトな風合いを実現。特許も取得している。いずれも10色展開。

 元々は「イロオチNICE」として販売していたが、昨年リブランディングの一環で同短繊維100%の生地を加えるなどして提案強化を図った。既にメディカルやサービス向けで実績があり今後は用途を広げる。年間の販売目標は50万㍍を掲げる。

 山田敏博・取締役繊維資材G統括部長は「短繊維のタッチや風合いを求めるニーズはあるので、そうした顧客に訴求していく」と述べる。長繊維では5千色という豊富なカラーバリエーションが特徴のポリエステルカラー原着糸「モコフィーロ」を展開しており、さまざまな顧客ニーズに対応する。

 ほかにも吸湿発熱や消臭性などに優れる中わた「コズミックス・ウォーム」といった機能素材もそろえる。

〈クラボウ/サステ・国際規格に対応〉

 クラボウは世界的に要望が高まるサステイナブル素材をユニフォーム地でも充実させた。機能素材も国内だけでなく海外の規格にも対応する形でラインアップを拡充・リニューアルした。

 このほどサステイナブル原料使いの冠ブランドとして「エコピース」を立ち上げた。ペットボトルのマテリアルリサイクルと使用済み衣料をケミカルリサイクルした再生ポリエステル繊維、植物由来原料ポリエステルをそれぞれ原料に使用する。裁断くずを反毛して紡績原料に再利用するコットン由来もラインアップ。原料を明記した専用ラベルも用意した。

 ニーズが高まるストレッチ素材も新商品としてポリエステル・綿混の高通気ストレッチ生地「ジェットエアー」、綿100%ストレッチ生地「バンジーコットン」を開発した。

 防炎素材「ブレバノ」も日本防炎協会の防炎基準に加えて、日本産業規格(JIS)に対応した「ブレバノプラス」と国際標準規格(ISO)や米国規格(NFPA)にも対応した「ブレバノネクスト」にラインアップを整理した。電気・電子技術分野の国際規格であるIEC規格に対応した高制電素材「エレアース」も引き続き重点提案する。

〈シキボウ/二酸化炭素排出量を抑える〉

 シキボウは、燃焼時の二酸化炭素発生量が少ない特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」をユニフォーム分野にも積極的に提案する。短繊維だけでなく長繊維もラインアップに加えたことで、汎用性も一段と高まった。

 オフコナノは、再生ポリエステルに特殊な添加剤を加えることで燃焼時の二酸化炭素発生量を抑える。ポリエステル繊維は再生を繰り返すと品質が低下するため、最終的には焼却処分する必要がある。オフコナノは再生だけでなく最終処理の焼却処分時の環境負荷まで配慮した原料となる。

 短繊維だけでなく長繊維もラインアップに加えた。紡績糸はベトナム、長繊維は台湾の協力工場でも委託生産できるため、海外生産・海外販売にも対応する。サステイナブルな科学的農法で栽培される米綿の認証「コットンUSA」を使った商品をユニフォーム分野でも提案しており、天然繊維と合成繊維でサステイナブルな原料がそろう。

 快適性を実現する機能素材にも力を入れる。根強い人気がある校倉(あぜくら)構造織組織による高通気生地「アゼック」や2層構造糸使い吸汗速乾生地「コンフォ」は新たに強撚糸で涼感機能を高めたタイプも打ち出している。抗ウイルス加工「フルテクト」も食品白衣で引き合いが増した。

〈重要になる生地での差別化〉

 ワークウエアメーカー各社は最近、独自性のある生地を採用する傾向が強まっている。21秋冬向けの新商品を見てもストレッチ素材で「アメイジング」(コーコス信岡)、「クレイジー」(バートル)、「異次元」(桑和)、「バウンディング」(シンメン)、「プライムストレッチ4×(クアッド)」(中塚被服)などさまざま。

 もっともストレッチ素材の採用が当たり前になりつつある中、より一層差別化していく必要が出てきた。さらにネット通販によるユニフォーム販売が広がるにつれ、他社製との違いを明確にし、消費者へ訴求していく上でも生地の差別化がますます重要になってくる。

 機能面でも特化した性能によって他社との違いを明確にしていこうとする動きが強まる。消臭ではコーコス信岡(広島県福山市)が糸段階で消臭加工した「ニオイクリアEX」を使ったコンプレッションなどアイテムの広がりを見せる。独自基準を設け「本質的な品質重視の姿勢が認められてきたことが販売増に結び付いてきた」と言う。他にもジーベック(福山市)やビッグボーン商事(同)、アイズフロンティア(岡山県倉敷市)などが高い消臭性能を持つウエアを打ち出している。

 以前はヘリンボーンやリップストップなど、生地でのトレンドが少なからずあった。しかし、今はいかに他社にない質感、機能を持った生地を採用していくかが、今後のブランド力の向上に一段と重要な鍵になってくる。